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プロローグ

【プロローグ】


 私は真田(さなだ)くんの運転する車で、ペンションへと向かっていた。そこは何度か利用したことのあるペンションで、山奥にあった。近くのスキー場へ行くには車で四十分以上はかかるくらいだった。でも、私はそこが好きだった。夏は涼しく、緑を感じるには最適の場所で、冬は空から降る雪を見ながら、静かに心を落ち着かせることができた。もちろん、スキー場へと行ってスキーを楽しむこともできた。それに、有名レストランでシェフをしていたオーナーが作るフレンチは美味しかった。そしてなにより一泊の料金が安かった。スキー場の近くにあるホテルに泊まるよりも、断然安かった。

 今回私が真田くんを誘ったのには、わけがある。私にはそろそろ彼に言わなければならないことがある。今、私たちは恋人という関係ではないけれども、そろそろ一歩踏み出さなければならないんじゃないだろうか。いや、そんな曖昧なことではダメだ。私は彼に告白をする。そうじゃなきゃ、誘った意味がない。

 私はハンドルを握っている真田くんを見た。彼の顔は昔から少しも変わらなかった。真っ直ぐな眉毛と、笑うと出来る笑窪を私は気にいっていた。

 彼を旅行に誘うのは勇気が必要だったが、彼は笑って「いいね」と言ってくれた。彼は有給までとってくれた。私は彼と三日間一緒にいられる。なんて幸せなんだろう。

「それにしても、すごい山奥だな。道路は一本道だし。雪も結構積もっているし。車が滑らなきゃいいけど」と真田くんは言った。

「うん。そうだね。でも素敵なペンションなの」

「そうだね。香代(かよ)が写真に撮ったフレンチも美味しそうだったし、値段も凄く安いし」と真田くんは笑窪を作って言った。素敵だ。

「あと十分ぐらい走れば着くよ」

「そうか」と彼は言った。「そういえば明日は晴れるのかな? スキー日和だといいけど」

「どうだろう。明日は晴れるって天気予報はいってたけど……」。今夜は吹雪だといっていたことを私は言わなかった。

「まぁ、三日もあるんだしな。その時はその時でゆっくり過ごそうか」

「うん」と私は言った。

 私たちの乗った車はどんどん山奥に入り、ペンションに近づいて行った。


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