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ゼロクエスト 〜第1部 旅立ち  作者: 鈴代まお
第1章 始まり
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第9話 その目的

 父が出て行ってからしばらくしても、爆発音は鳴り止まなかった。

 私たちは他の村人たちと一緒に、外れの高台にある避難場所にいた。


 ここから見下ろしてみると状況は一目で分かるが、どうやら村の中に攻め込まれたらしい。今、村の至る所で爆音とともに火の手も上がっているのが見える。

 私はそれを見詰めながら右手で左腕のブレスレットを、ギュッと強く握り締めていた。


「お姉ちゃん……」

 ソーマは震えながら、私の腰にしがみついてくる。

「大丈夫よ。だって父さんが戦ってるんだもん。きっと全部やっつけてくれるわよ」

 まだ十一歳になったばかりの弟の、私と同じ色をした髪を撫でながら慰めるように言った。


 しかし私は――。


(本当は私も戦うべき、なのよね)


 これでも精霊術士の端くれなのだ。

 まだ実戦経験があまりないとはいえ、少しでも戦力にはなれるはずだ。


 なのに私は「一緒に戦いたい」と、何故言えなかったのだろう。


 母が亡くなってから、男手一つで育ててくれた父を心配させたくないという気持ちと、姉として弟を守らなくてはいけないという気持ちもあった。

 だがそれ以上に、私も生まれ育ったこの村を守りたかった。


 それに今の自分の実力を知る、良い機会でもある。

 父には「魔物と戦うのはまだ早い」と言われ、今までギルドの仕事を受けさせてはもらえなかったのだが。


 私は強くなりたかった。強くなってみんなを守りたかった。


 父のように―――。


「エリスちゃん、ソーマちゃん。無事に避難できたのね」

 疎らにいる村人たちの間を縫って、恰幅の良い女性が体を揺らしながらこちらへ向かってきた。グランドおじさんの奥さんである、ハンナおばさんだ。


「良かったわ。心配していたのよ」

 おばさんは一瞬ほっとした表情を浮かべたが、すぐに丸い顎に手を置くと、眉をひそめた。

「まさかウチの村がこんなことになるなんてねぇ。本当、今までギルドは何をやっていたのかしら」

「でも、父さんとおじさんも参戦してくれてるし。だから多分、大丈夫だと思います」

「だと良いのだけれど……」


 町や村を襲ってくる魔物は、大抵下位クラスだ。その目的は『食料強奪』が殆どである。

 恐らく今回もそれが目的であろう。現に戦闘区域は村の中心でもある、貯蔵庫付近に集まってきている。


「あら? いやだわ」

 おばさんが突然声を上げた。

「ねぇ、エリスちゃん見て。あれ、ウチの方角じゃないかしら?」


 私はおばさんの指差す方向を見た。

 私とおばさんの家は、西門と貯蔵庫間の通り道付近には建っていない。しかも反対側に位置するはずだ。

 しかし離れたその場所からも火の手が見える。


「おばさん、ソーマをお願い!」

 私はそれを見た途端、居ても立ってもいられなくなり、おばさんの返事も待たずに丘を駆け下りていた。

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