第5話 依頼書
掲示板の前に立ち、そこに書かれている内容を一つずつチェックしていく。
『シルバリア村までの護衛求む。但し、現役剣士・精霊術士殿限定』
(支払賃金が高いわね。てことは護衛といえども、難しい仕事ってことよね。私にはまだ早いわ)
『WANTED!! 賞金10,000,000』
(指名手配書が二枚ね。一方は人間で、もう一方は魔物。人間のほうはともかく、魔物は下位クラスじゃなくて中位クラスだから、かなり高額な賞金が掛けられている。勿論これは論外。当然私には中位クラスなんて倒せるわけないし、しかも賞金稼ぎじゃないから関係ないものね)
『ギルド・カタトス町支部依頼 ~魔物討伐隊参加者募集中~ 場所:東の森奥 魔の洞窟』
(ギルドから直々の要請か。それも魔物討伐。
……残念だけど私には、討伐隊に参加できるほどの能力がまだないのよね。中位クラス以上の魔物を倒せるようにならないと無理だし。だから今のところはパスね)
『フロント係・調理師募集中!』
(バイトするわけじゃないから、パス)
『骨董市場開催中。掘り出し物なんかも、あるヨ☆』
(骨董に興味ないからパス。ていうか、今そんな余裕ないし)
『恋人募集中』
(……………)
読み進めていくうちに段々と虚しい気分になってくるのは、私の気のせいなのだろうか。
掲示板は何処のギルドでもそうだが、訪問者へのメッセージや依頼が多い。私もここで自分にも出来そうな依頼がないか物色していたのだが、現在のところ目当てのものは見つからなかった。
「私ももう少し力をつけなくちゃ」
経験を積み、せめて『討伐隊』に参加できるくらいの力を身に付けなくては。
旅立ってから一週間。
金銭的にもまだ困るようなことは特になかったが、今からそういったことを考慮しておいても損はないだろう。
ここでふと何気なく、ある一文が目に入った。
『まおう退治に協力してくれる仲間、求ム!!』
(まおう退治?)
汚い字で書かれていたために、一瞬この言葉の意味が分からなかったのだが。
(! ああ、『魔王』ね)
乱暴に書き殴ったような文字を眺めながら、ようやく理解する。
しかし『魔王退治』とは。