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第47話 復活

 私は嫌な予感を覚え、即座に後ろを振り向いた。

 倒したはずのリチャードが、案の定その場に立っていた。


「ようやく回復が完了致しました」

(! しまった)


 やはり私の術力だけでは、中位クラスの魔物に致命傷を負わせるまでには至らなかったようだ。

 しかも敵を倒した後に必ずしなければならない、生死の有無の確認を怠っていた。今更ながら自分の詰めの甘さが悔やまれる。


「やれやれ、いくさ慣れしていない身体というものは、思うようには動かないものですな。軽い肩慣らし程度のつもりでしたが、わたくしとしたことが油断しておりましたぞ」

 リチャードは誰に言うでもなく笑みを浮かべながら肩を竦めてみせたが、その態度からはあまり残念そうには見えなかった。彼にとって私たちとの戦いなど、朝飯前のお茶漬けにさえならないのかもしれない。


 今は非常にまずい状況だった。

 アレックスがこんな状態である。戦えるのは私とエドだけ。

 この二人でリチャードを相手にするのは、正直無理だ。


「さて」

 彼は足元に落ちていたシルクハットを拾い上げると、手で軽く叩いて埃を落とした。

「歓迎会の続きを始めましょうか」


 再びシルクハットを上へ向ける。また怪鳥やスケルトン・キラーの「核」を出すつもりなのだろうか。或いは別の攻撃が来るのか。

 私が緊張の面持ちで身構えていると、突然アレックスが私たちに回していた腕を解いた。そして傍らに置いてあった抜き身の剣を地面へ突き立てると、それを支えにゆっくりと立ち上がったのである。


「その歓迎会には当然、魔王も来賓として参加するのだろうな!?」

 まだフラフラした身体を抱えつつも力強い声で、びしっと指をリチャードに突きつけた。

 それにしてもわざわざ立ち上がり、決めポーズまで作って一体何を言っているのだろう。

 一方リチャードはそんなアレックスの態度など気にする様子もなく、不敵な笑みを浮かべたままである。


「主様は不在ゆえ、わたくしが代わりでは不服ですかな?」

「無論だ。俺は魔王本人を倒すために、遠方からわざわざ足を運んでやって来たのだからな!」

(きゃ~っ!! アレックスってば、なんで上から目線なの!? しかもその身体でこれ以上煽って、どーすんのよっ!!!)

 私は泣きたくなってきた。ああ、眩暈が……。


「おや?」


 何かに気付いたようなリチャードの声で、半泣き状態の私は抱え込んでいた頭を上げる。

 見るとリチャードの目の前には、白くて丸い物体が浮かんでいた。その中心にある黒い円形状のものが、キョロキョロと忙しなく蠢いている。

 端から見れば大きな眼球が一つ、浮かんでいるようにも見えた。更にその両脇には、コウモリのような黒い羽も生えていた。

 見たこともない魔物である。


「これはこれは、サラ様が丁度ご到着されたようですな。

ではお望み通り、面会を許可致しましょう。主様もお忙しい御方ですが、あなた方が精霊に選ばれたヒトであるのなら、恐らくはお会いになると思われます。

こちらでしばらくお待ち下さいませ。わたくしはお迎えに上がらねばならぬ故、これで失礼させていただきます」

 リチャードは私たちに丁寧に頭を下げるとシルクハットを頭上へ掲げ、目玉と一緒にその中へ吸い込まれていった。残ったシルクハットも二体を吸い込むと同時に、空中から掻き消えるように姿を消した。

 しかし本当にこの術は、一体どんな仕掛けになっているのだろうか。


 そんな疑問はさておき。

「二人とも、この隙にここから脱出するわよ!」

 敵から待つように言われて、大人しく待っている馬鹿はいない。

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