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第36話 その能力

神風護壁ヴィン・マオ・デュウ


 私は咄嗟に風のシールドを張った。

 降ってきたのは針だけではなかった。クチバシからも光球を吐き出してきたのだ。

 私がよく使う灯りよりも遥かに白く、強い輝きを放っていた。それは私の足元へ飛弾し、地面へ触れると同時に爆発した。

 私と近くにいたエドは爆風を防ぎきれず、吹き飛ばされて背後の壁に叩き付けられてしまった。


(これのどこが『おもてなし』なのよっ!)

 膝をつき、全身を打った痛みに耐えながら声にならない悲鳴を上げた。それとも魔物にとっての『おもてなし』とは、これが一般常識なのだろうか。

 体勢を立て直す間もなく、針と光球が降ってくる。

「神撃水剣!」


 アレックスは私たちの前へ駆け付けると、属性を付けた剣で立ち向かっていった。

 針が一斉に叩き落とされていく。切った光球のほうは爆発もせずにそのまま空中で水蒸気となり、霧散する。

 剣がクリスタルのように透明な淡い光を放っていた。柄に埋め込まれている精霊石を見ると、水属性の紋様が浮かび上がっている。


「二人とも、無事か!?」

 針の攻撃が一旦止んだ時、アレックスは私たちのほうを振り向いた。


 しかし。


「ちょ…ッ!? アンタ、前、前ーーっ!!!」


 私は指を差しながら、慌てて叫んだ。

 余所見をしている間、光球が二~三発ほど続けざまに、アレックス目がけて落ちてきたのである。恐らくはアレに接触した後、先程と同じように爆発するのだ。


「む?」

 アレックスがようやくそれに気付き振り返ったが、光球はすぐ目の前にまで迫っていた。

 このまま直撃するのかとも思われたのだが――。


 意外なことに、そこで爆発しなかった。

 光球は何れも目の前で、何かに弾かれるように軌道を変えたのだ。そして少し離れた場所に落ち、爆発したのである。

 私には軌道を変える直前で、水属性の紋様が浮かび上がったような気がした。まるでアレックスの周囲には、目には見えないシールドが張られているかのようだった。


「ほう?」

 私たちを高みから見物しているリチャードが、薄笑いを浮かべながらこちらをじっと見詰めている。

「術文も発せずに術を使うとは……あなたは本当に人間ですか?」


 その質問は当然のことといえよう。私でさえ、今目の前で起こった出来事が信じられないくらいだ。


 人間で防御術シールドを使えるのは、精霊術士だけだった。しかし術を発動するには、精霊石と術文が必須条件である。

 だがアレックスは術文どころか、精霊石さえ使っていた形跡がない。その上、精霊術士ではなく剣士である。例え術文や精霊石を使ったとしても、シールドが使えるわけはないのだ。


「無論、人間だ」

 アレックスは胸を反らすと、リチャードに勢いよく人差し指を突きつけた。


「俺は貴様たち魔物には、決して屈することがない。何故なら俺には熱き人間の血(ビート)が流れているのだからな。この血で貴様らの汚れた術を、浄化してくれよう!」

 またワケの分からないことを、堂々と宣言した。


「ほう…! そういえばサラ様から以前、聞いたことがありますぞ」

 何かを思い出したらしいリチャードの細い目が、一瞬キラリと光ったような気がする。


「魔王様降臨の世、対峙していたヒト族の中で、精霊の加護を受けた者がいたという話を。あなたはもしや」

「如何にも」


 アレックスは更に胸を張ると、リチャードの言葉へ覆い被さるように言い放った。


「俺は英雄の血を引く、その末裔だ!」

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