表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/58

第32話 魔物たちの動向

 二人は指示通り、岩壁の隅の方へ身を寄せ合うようにして立っていた。私も背を向け、ピッタリと身体を付ける。

 私は持っていた荷物をその場へ下ろすと、両掌を前に突き出した。


「これから私が透過系の術を使って、向こうからこちら側を見えなくするから。でもそれには、あなたたちの協力も必要なの。二人とも、自分の気配を消すことはできる?」

「無論」

「当然ですぅ~。僕は巡礼者ですけど~最低限、それくらいの修行は積んでいますから~」

「オーケー、安心したわ。それができないと隠れたことにならないのよね。人間ならともかく、相手は気配には敏感な魔物だから」

 気配を消すには多少の集中力が必要だったが、それはある程度の修行経験で養えるものである。


屈壁射光シオン・マオ・リュミエ

 術を発動させた。私たちは透明な膜のようなものに包まれた。


 これは光属性のもので、光の屈折を利用した術である。中へ入れば、外部からは発見されにくくなるのだ。

 この術は平原のような広域的な場所では使うことができない。狭い空間や、四方を壁に囲まれているような場所でしか使用できないのである。


 最大持続時間は私の場合、約半日程度だった。

 この術を会得した当初は三十秒程しか持たなかったのだが、ここまで延ばせるようになったのは、修行の成果でもある。

 術の持続時間というのは、術士の力量にも比例するのだ。鍛練を積んだ術士はその中で、自由に持続時間を調節することも可能なのである。


 音がすぐ近くにまで迫ってきていた。

 ケンタウロスの蹄の音。スケルトン・キラーの骨がぶつかり合う音。はっきりと聞こえてきていた。


 程なくして魔物の姿も現れ出でる。

 私はここで無意識のうちに、自分の息を止めていたことに気が付いた。

 相手からはこちら側が見えないと分かっていた。が、こちらからは相手の姿がはっきりと見えているのだ。そのことが緊張感を更に高めさせていた。


「いないぞ、人間」

「声が聞こえた」

「何処へ行った?」

「向こうか?」

「カタカタカタ……」

「そうだ。戻るか」

「カタカタカタカタカタカタカタ……」

「では戻ろう」


 ケンタウロスたちは口々にそう言うと、間もなく引き返していった。残ったのはスケルトン・キラー五~六体だけである。


 にしても、ケンタウロスとスケルトン・キラー。

 両者間で会話が成立していたような気もするが、気のせいだろうか。スケルトン・キラーなど私から見れば、ただ身体の骨を鳴らしていただけにしかすぎなかったのだが。

 それとも魔物の間では、それで会話していることになるのか。全くの謎である。


 私がその疑問に悩んでいる間にも、スケルトン・キラーは岩壁の一角へ、徐々に集まりつつあった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ