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第30話 行き止まり

 少し歩くと、エドの姿が見えてきた。

 どうやらその場で立ち往生しているようだった。その先に道はなかったのである。


「これといった仕掛けは、なさそうね」

 私は突き当たりの岩壁を、軽く数回叩きながら呟いた。

 この洞窟は他に脇道もなく、今までずっと一本道だった。つまりここはごく普通の、なんの変哲もないただの洞窟だということである。


「というわけで、戻りましょうよ」

 私はくるりと踵を返す。


「何が……というわけで、なのだ?」

「だから道はここで終わりなんでしょ。要するに魔王なんか、最初からいなかったってことよ」

「そんな馬鹿な!? そんなはずはない!」

「いや、私に詰め寄られても困るんだけど。事実は事実だし」

 魔王がここにいると信じ込んでいたアレックスには残酷なようだが、これが現実というものである。


「でも~ここで行き止まりなんて~ちょっと変ですねぇ~。だってさっき~スケルトン・キラーは~この方向……」

「わーっ!!! ここには本当に、何もないんだってばっ!!」

 私は思わず叫んでいた。洞窟内に声が響いている。


「な、何をそんなにムキになっているのだ?」

 アレックスは私の剣幕に、少したじろいだようだった。

「う…別に……そんなんじゃないけど。だってエドが今変なことを言おうとしていたし」

「僕、何か変なことを言ってましたっけ~?」

 エドは惚けているのか、キョトンとした顔をしている。もしかしたらこの吟遊詩人、なかなかに侮れないヤツなのかもしれない。


「あ、また音が聞こえてきましたよぉ~」

「え、音?」

 言われて耳を澄ませてみると、確かに洞窟の奥から再び複数の足音が聞こえてきた。

 多分また奴らだ。術の効力がとうとう、完全に切れたのだろう。


「迎え撃つぞ」

 アレックスもそれに気付いたのか、剣を抜き構えだした。

「どうせこうなるんだったら、さっきのうちにヤツらを片付けておけばよかったんじゃないのよ」

 私も渋々構えながら、しかし、背を向けているアレックスに文句を言ってやった。


「戦場において正々堂々と対等に剣を交えるのが、剣士たるものの誇りでもあり努めなのだ。だから先程は、やむを得ぬ事態だった」


 魔物相手に対等に剣を交えるなど、何を言っているのだろうかこの男は。私はうんざりし、深々と溜息を吐くしかなかった。


(こんな狭いところでの戦闘って、正直苦手なのよね)

 あまり気が進まなかった。なんとかしてこの場をやり過ごしたかったのである。

 だがアレックスのことだから「無論戦う!」とかなんとか、我が儘を言うに違いない。


 と、突然良い方法を思いついた私は、

「アレックス」

 その背中に声を掛けた。

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