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第24話 更に奥へ

 一体この洞窟は何処まで続いているのか。私とアレックスはその一本道を、ただひたすら走り続けていた。


「お疲れ様ですぅ~♪」


 途中、光を携えたエドが軽く唄いながら暗がりから出てくる。

 その光は私もよく使う、光属性の灯りである。私の場合は球体の形をしており、空中に浮かすこともできるが、エドの武器は楽器なので、手に持っているそれがそのまま光っていた。エドは光属性の使い手なのだ。


 私は息を切らしながら立ち止まると後ろを振り向いた。敵が追ってくる気配はない。

「あいつらが追ってこないなんて変ね」

 ロック・マンはともかく、入口付近にいた十数体のケンタウロスが全く追いかけてこないのはおかしい。


「多分、外の見張りでも任されているのかもしれませんねぇ~」

「外の見張り?」

「くそっ」


 声に反応して反射的にその方向を向くと、アレックスが四肢を地面につけ、項垂れている姿が目に入った。


「なんてザマだ。この俺が敵に背を向けるなど、断じて有り得ん! 醜態だ。屈辱だ。惨めだ!」

 何故かしきりに悔しがっている。しかも拳を地面へ叩き付けながら。


(ナニ……このヒト)

 私は冷めた視線を投げ掛けた。と同時に、何かが私の中で一気に引いていくのを感じていた。


 確かにアレックスは美形だった。それもひと目で心を奪われるほどに。

 だがそれだけだった。性格のほうは、何処か残念な印象なのである。

(結局人間は『顔』じゃないってことよね)

 最終的にそんな結論に達してみたが、今はしみじみと実感している場合ではない。


「外の見張りを任されてるって、どういうこと?」

 私はまだ悔しがっているアレックスを横目で見ながら、再度エドに訊き直した。

「魔物の世界において~、主従関係というのは~絶対なのですぅ~」


 弱肉強食。


 弱者が強者に付き従うのはヒト族もまた然りであるが、魔族の世界ではその関係性が一層強いらしいのだ。このことは世界中の誰もが知っていることである。

「だから、何?」

 私にはこの吟遊詩人が一体何を言いたいのか、さっぱり分からなかった。

「つまりぃ~、外の魔物たちは少なくとも、中位クラス以上の魔物の命令に~忠実に従っているだけだということなのです~」

「なんのために?」

「決まってるじゃないですかぁ~。魔王がこの洞窟の先に~いるからですよぉ~」


 エドは事も無げに、あっさりと言い切った。

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