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第21話 いきなり戦闘

 ケンタウロスはこちらに向かって、炎の力を纏った矢を投げつけてきた。

 ヤツらの攻撃は主に属性付きの矢だ。私たち精霊術士同様、遠距離攻撃を得意とする。


 剣士は矢を弾き落としながら向かっていくが、接近しようとしているものの一向にその差は縮まらなかった。

 スピードは馬の足を持つケンタウロスのほうが、断然速いのである。しかも逃げながら攻撃を仕掛けてくる。

 矢継ぎ早に矢は、剣士に向かって飛んでいった。


 しかし。


「……?」


 私は目の錯覚かと思った。

 その中の一本――たたき落とし損ねた炎の矢が、剣士の身体に当たる直前で軌道を変え、そのまま地面へ突き刺さったように見えたのである。


 だが私は今の出来事を確認している暇はなかった。

「だーっ、なんなのよもうっ!」


 予想外の事態に思わず叫びながらも私は光のシールドを張り、流されてくる敵の矢を防いでいた。敵は前に出ている剣士のほうを集中攻撃していたのだが、こちらにも向かってきている。

 今この場にいる敵は二匹だけだが、このまま何もしなかったら殺られてしまうのは確実だった。

 私は一瞬だけ一匹が、剣士に向かって矢を放つ構えをしながら足を止めたのを見逃さなかった。


影蔦縛止シャッテン・リエ・コルド


 シールドを解除し、即座に地面へ向かって闇属性の術をかける。すると昇っている日の影響でできた私の影が、敵へ向かって一直線に伸びていった。

 影は敵に触れるとその身体を一気に這い上り、その名の通り蔦のように巻き付いて身動きを取れなくした。

 それを見た剣士は素早く移動し、動けなくなった敵をそのまま斬る。


 私は剣士が敵を斬る直前で術を解除すると、残るもう一匹に向かって光の矢を放っていた。

 しかし外れる。


 攻撃を受けた敵はそのまま私を次の攻撃目標に切り替えると、矢をこちらへ投げつけてきた。

 だがその直後、剣士がその身体を斬りつけたのである。敵の気が剣士から逸れた、僅かな間だった。


(この人、なかなかやるのね)

 腕のほうは確かなようだ。単に顔が綺麗なだけではないらしい。


「よし、では中へ入るぞ」

 剣士は気合いを入れるかのようにそう言うと、洞窟の中へ何の躊躇いもせずにそのまま入っていった。

「!? だから何で??」


 私は呆然とその場で一人、立ち尽くす。自ら進んでこの中へ入ろうとは思わなかった。見るからに魔物の巣窟、といった雰囲気の場所だからだ。


「皆さ~ん、逃げてくださ~い!」


 ドドド……と大きな足音を響かせながら、森の中から良く通る声が聞こえてきた。剣士に同行していた吟遊詩人である。


 こちらへ走ってくる彼の後ろには、何かが蠢いているのが見えた。木々の影ではっきりとは確認できないが、目を凝らしてよく見てみると、何やら大きな物体も同時に移動してきているようである。

 それはまるで、吟遊詩人の後を追ってでも来るような――。



 ……え?


「ちょッ!? あなた、何を引き連れてきているのよ!!!」

 ソレは周囲の木々をなぎ倒し、地響きを鳴らしながらこちらへ向かってきた。

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