第13話 決着
炎は精霊力によるものである。
術が発動されれば、その属性の紋様が精霊石に浮かび上がってくる。紋様は幾何学的なもので、各精霊によって形状は異なっていた。
精霊力は精霊術士ではなくとも、鍛練を積めば誰でも使えるものだった。といっても、それら全てを精霊術士と呼ぶわけではない。
『精霊術士』との区別は、道具(武器)を介するか否かだという。
更に精霊術士は六体の精霊全ての術を使用できるが、道具を使う場合には一つの武器に一つの精霊――つまり、属性が一つしか使えないのだ。
理由までは私も詳しく知らないのだが、どうやら道具と属性には相性というものがあるらしく、道具が精製される過程において使える石(属性)が決まってくるようである。
剣士が術を発動している間に、父も動いていた。
「風刃鋭鎌」
ここにいるヴォーウルフ全てに、風属性の術をかける。
広範囲にまで攻撃力を広げるため、通常よりも威力は落ちるが、敵を足止めするだけならその程度でも十分である。
剣士は炎の剣を振りかざしながら、その集団の中に突っ込んでいった。
風の刃と炎の刃。属性同士、相性も悪くはない。
炎剣は父の放った風をも取り込みながら、剣士を中心として渦を巻くように激しく舞い踊っている。
瞬間、勝負は決まった。
炎と風が掻き消えた後に現れたものは、焼け焦げて身体を八つ裂きにされたヴォーウルフの遺体だった。ここにいた十数体の敵が全て倒されていたのだ。
後続でやってきたヴォーウルフも四~五匹ほど離れた場所に見えるが、この二人なら楽に倒せるだろう。
私は彼らの戦いを、間近で一部始終見ていた。
その間、何もできなかったのだ。
私はただ、指をくわえて見ているだけだった。圧倒的な力の差を見せつけられただけだった。
内心では自分も一緒に戦えるかもしれないと、いつでも飛び出していけるよう身構えていたのだが、その考えが甘かったことを改めて思い知らされる。
ヴォーウルフ一匹でさえ倒せなかった私があの場所へ行ったところで、何もできるはずはなかったのだ。最悪、二人の足まで引っ張るかもしれない。
―――私はその時に決意した。