序.漆黒の闇に舞う……
リュイドラ・ルド・アーイストングがまだ上流貴族だった頃、彼は先王マルストング・ルース・ロドアが体調を崩したのを聞きつけ、暗殺を企てた。
その後マルストングの暗殺は見事成功、先王の一族全てを抹殺して不穏分子を取り除き、リュイドラは王位を簒奪し玉座に就いた。
先王マルストングは各国にランドレンの賢王として、民に慕われる王として模範とされるほどの人物だった。しかし、貴族至上主義のリュイドラが玉座に就いてから、それまでは分け隔てなかったランドレンの貴族と平民の階級差は瞬く間に広がり、国は荒れた。
リュイドラが政を司るようになってから数ケ月も経たずに、貴族ばかりが権力を握り栄え、平民と呼ばれる一般の国民たちは普通に暮らしていくのもやっとな状態にまでなってしまった。
そんな状態に一般の国民たちは黙ってはいなかった。
すぐに、王城へ抗議の国民たちは押し寄せ、王都では国民が抗議活動を行った。
しかし、国王であるリュイドラは王位を力ずくで得た簒奪者。
国民たちの声など素直に聞くはずもなかった。
そればかりか、彼は武力を行使し自国の民を大量に虐殺した。
リュイドラは国民がそういった行動に出るのを見越していたのだ。
彼は独自に戦闘員を選出し、『赤棘隊』と呼ばれる軍を構成して彼らに国民の暴動の『収拾』を命じたのだった。
虐殺された国民の数はおよそ数千。
平民が集まっていたミルマーレ通りは、殺された人々の血で数週間も赤々と染まっていたという。
後にその日は血の惨劇と呼ばれた。
この事態に恐れをなした平民たちは、これ以後ひっそりと息を潜めて暮らすようになった。彼らは王に、貴族に従い何に対しても反抗の意思を示さず従順な存在になったのだ。
その、血の惨劇と呼ばれた日から数年。
平民に過酷な労働を強い、貴族たちが甘い汁だけを吸い赤棘隊の活躍により何事も無く過ごしていた今日。
彼らに戦慄が走った。
五大貴族のオルリエス一族の長であるフロゾフ・ノル・オルリエスの一家が何者かよって殺害されたのだ。
連絡を受けた赤棘隊がその場に到着すると、血溜まりの中に横たわるオルリエス一家の死体があったという。
調べに当たった隊員の報告によると、何者かに銃弾で頭部を貫かれ、全員即死だったということだった。
そして、もう一つ。
鮮血のような色をした赤い文字で、襲撃者によって書かれたものと見られる言葉が部屋の壁に残されていたという。
『私の名は、ヘル・ザ・ブラック―――― 地獄からの使者だ』、と。
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