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第7話

 小倉駅の事件から三日。

 事件は大々的に報道され、予定よりも早く五行神家の存在が公となってしまった。

 また、玲香の話し合い(脅迫)の手腕により、五行神家は政府お抱えの組織となった。

 なお、政府が当主陣の手綱を握れるワケもないので、実質五行神家が政府組織という都合のいい免罪符を手に入れたかたちとなっていた。

 さて、大々的に秋雨の顔も全国に割れたことにより、現在進行系で別の問題が浮上している。


「――と、言うわけで母さんが過保護になっているんですよ」


 今日も今日とて閑古鳥が鳴く骨董品屋にて、秋雨は心底困った様子で玲香に相談をしていた。

 小倉駅の件がニュースとなって報道されてしまえば、当然身内にも知られてしまうワケである。

 まさか自身の息子が何処かの家の当主になって、魔法染みた力を使い、倫理観の欠片もない所業をしているとなれば、親としては心配どころの話ではない。

 そんな秋雨に玲香はゲラゲラ笑いながら口を開く。


「あっはは! だから早めに話しておきなさいって言ったじゃないの。どうせ面倒なことになるからって」

「それはそうですけど、いきなり『俺、当主になったんだ』なんて言って信じると思います?」

「信じないわね」


 所詮は他人事。

 玲香は秋雨が右往左往する姿を楽しんでいる。

 それこそ小倉駅での奏多との一悶着の話もゲラゲラ笑いながら聞いていたほどだ。


「そう言えば、ほとんどの事後処理を遥さんがやってくれましたけど、警察とか行政とかそのあたりは大丈夫だったんですかね?」


 馬鹿笑いされ続けるのも癪なこともあり、秋雨はわざとらしく話題をすり替える。

 勿論、玲香もわざとであることは理解しているが、引き際を弁えているので秋雨に乗っかることにする。


「あー、それ? それこそ、お偉いさんとは私が話をつけたから問題ないわ。秋雨のせいで無理くり乗り込んでから、首根っこ掴んで話し合った(脅迫した)んだから問題ないはず。一応、遥からは『滞りなく処理できた』って連絡もあったしね」


 聞くところによると、秋雨が交戦していることを知るや否や、パッと姿を消して、速やかに事を済ませていたらしい。

 これから政府のお偉いさんは胃の痛い日々が続くことになるだろう。

 そんなことを思うと、秋雨は胸中で思わず黙祷を捧げてしまう。


「それと例の男は見事に肉片になってたらしいわ。一応、採取できた血液は昨日渡した通りよ」

「まあ、スカでしたけどね」


 リーダー格が三人いる以上の情報を読み取ることはできなかった。

 それ以外は男がとにかくルクシャ・ハーナに対して狂信的であったことくらいだろうか。


「異世界では地下組織として存続していたみたいで、異世界組の働きでこちら側との境界が拓けたことで動き出したみたいです」

「それにしては随分と手際のいい動きで侵入して来てるわね。元々、こうなることを予想していたのかしら?」

「どうですかね? まあ、爆散した男は下っ端でしたから、そのあたりは全然ですね」


 あのタイミングで動いた男の行動理由はわからないが、あの場の何処かにリーダー格の誰かがいた可能性がある。

 男の動きを監視し、こちら側の――異世界組の動きを観察し、あわよくば戦力を削ごうとしていたのかも知れない。

 だが、予想外の伏兵がいたことで計画にズレが生じ、やむを得ず男を爆散させたのだろう。


「人の心は無かったんだろうか?」

「それを秋雨(アンタ)が言っちゃダメでしょうに」


 失礼な――と秋雨は抗議の視線を玲香へと向ける。


「何食わぬ顔して水泡記視を使う奴に人の心があるのかしら?」

「……そうは言ってもですね――」

「わかってるわよ。あくまで当主として、術者として、当たり前のことをしたのでしょう。理解してるわよ。だけど、件の勇者君たちは納得してるのかしら?」


 事件の後、そのまま現場処理に雪崩れ込んだことで有耶無耶となっていた。

 恐らく奏多は納得していないだろうし、志乃とリファも同様だろう。

 元から大した関係値も無いので、秋雨としてはどうでもいいことではある。

 が、異世界組がどう思うかは別の話。

 恐らく奏多から異世界帰還者たちへ情報共有はされているだろう。


「首、突っ込んでこなければいいんですけどね」

「まあ、聞く感じ、自ら首を突っ込んでくるタイプじゃない?」


 否定する材料が微塵もない。

 秋雨はこれから予想される面倒事に顔を顰める。


「絶対に突っ込んできますよね」

「ええ、突っ込んでくるでしょうね。まったく正義感の塊も厄介ね」


 玲香はそんなことを言っているが、気にしていないだろう。


「……話は戻りますけど、どうしたら母さんの過保護を解決できるか教えてくれません?」

「秋雨がわざと止めた話を、自ら掘り返してどうするのよ」


 呆れた口調で怜花はそう言った。


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