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第13話

 調査をするとは言ったものの、実際どうすればよいのか――太陽が頂点に昇ったお昼時、奏多と志乃、孝也の三人は歩きながら知恵を絞っていた。

 幾ら異世界帰還者とは言え、政府筋から得ることの情報にも限りがある。

 それこそ、実際に五行神家についてお世話になっている政府関係者に聞いてみたが、何一つ回答を得られなかった。


「ガッチリ情報統制されているみたいだし、本当に何かヤバい案件かもしれないわね」

「なら、俺たちの力は必ず必要になる。五行神家以外を除けば、いざという時に戦えるのは俺たちくらいのはずだ」


 志乃の言葉に、奏多は力強く言う。

 弱い――圧倒的な力を持って、その言葉を告げた秋雨に恥ずかしくも奏多は恐れを抱いた。

 だが、それでも神アルデネイラを討ち、異世界を救ったという自負はある。

 今は及ばなくても、仲間たちの力があれば戦える。

 奏多と他の異世界帰還者はそう思っていた。


「そう言えば、謎の失踪事件の話は知ってるかい?」

「あー、血痕だけ残って、遺体が見つからないってヤツだっけ?」


 最近巷を騒がせている話題を孝也が口にすると、志乃は「当然でしょ?」と言わんばかりの様子で答える。

 寧ろ、知らない人がいない方が問題だ。


「あれ、正直一般人が起こした事件ではないと、僕は予想しているね」

「そうなのか? 現場で殺害して遺体を何処かに遺棄したって考えるのが普通じゃないか?」

「甘いよ、奏多。問題は数日――正確には二日間で札幌、仙台、東京、大阪、広島で起こっている。報道され始めたのも同時期だから、模倣犯の線は薄いかな。状況から考えると恐らく同一犯。だけど、普通に考えれば移動があまりにも無理があり過ぎる」

「ふーん。じゃあ、孝也は私たちと同じ魔法が使える奴が犯人だって考えてるわけね?」

「或いは玉水と同じような力を持っている奴ってところか?」


 三人はまだ知らないが、SNS上では『魔法使いが犯人では?』と噂されている。

 これは異世界人の存在は勿論、小倉駅の事件が全国で報道されたことにより、空想が現実となったことが多く反映された結果。

 なお、これにより多大なる迷惑を被っているのは警察であり、これまでの方法では太刀打ちできなくなってしまい、まともな調査ができなくなる恐れがあった。

 その為、あまりにも不可解な事件に関しては、急遽五行神家が駆り出される協定が結ばれたのであるが、それは世間に出回っていない事実である。


「だけど、これだと本格的に手詰まりよ? リファとノヴァクが異世界(むこう)で何らかの情報を掴んでくれればいいのだけど……」

「確かにな。頂点捕食者(エルダーワン)については五行神家が全ての情報を握っているだろうし、信奉者については情報が少な過ぎる」

「でも、玉水が男から情報を読み取った時に、リーダー格が三人いて、男が二人で女が一人って言ってなかった?」


 志乃の言葉に、奏多はあの時の男の悲鳴を思い出して顔を顰める。

 が、現在有している情報の中では最も確実であり、重要な手掛かりではあった。


「その情報の信ぴょう性は高いだろうけど、それだけじゃ調べようはないかな?」


 孝也は「うーん」と考えながら言う。

 幾ら人数と性別がわかったところで、どうしようもない。


「異世界人――少なくとも俺たちと同じこの世界の人間じゃないことは確定だとは思う」

「そっか。信奉者を引き連れて異世界からやって来ているのなら、そう考えるのが確かに妥当ね」


 奏多と志乃はそんな会話を進める。

 そんな中、孝也は「いや――」と何やら意味深の声を漏らした。


「孝也?」


 奏多が不思議に思い、声を掛ける。


「おかしい」


 孝也は断言するように口を開く。


「世界間の移動の魔法が確立したのは、アルデネイラを討伐した後だった。そして、その移動魔法を行使できるのは俺たち異世界帰還者とアルデネイラ討伐に寄与したリファやノヴァクたち騎士団、あとは各国の上層部だけのはずだよ」


 思考を巡らせ、孝也は情報を整理していく。

 それに世界移動には相応の魔力が必要となる。

 異世界帰還者は全員が異世界では上位に位置する魔力量を有しており、リファやノヴァクについても同様だ。

 その為、単身で世界移動は容易だ。

 だが、魔力量が多くない者たちをまとめて世界移動させるとなれば話は変わってくる。


「そもそも、集団をまとめて移動させる魔法の確立はできていない。仮にそのルクシャ・ハーナの信奉者全員が僕たちと同等の魔力量を持っているのなら単身移動が可能だから話は別だけど、そのあたりを二人はどう見てる?」


 孝也の言葉に奏多と志乃は顔を見合わせる。


「言われてみれば、召喚された下僕自体はアルデネイラと同等だったけど、あの男自体の魔力量は異世界の一般人程度だったわね」

「あの時は下僕の方に意識を割かれていたけど、男自体の魔力量は志乃の言う通りだ」


 二人の言葉を聞いた孝也は眉間に皺を寄せる。


「――もしかすると、敵はルクシャ・ハーナの信奉者じゃない可能性がある」


 その言葉に二人は目を見開く。

 孝也は指を三つ立て、言う。


「理由は三つ。一つ、異世界移動の魔法はまだ公開されていない。二つ、仮に移動魔法を構築したとしても魔力量に難がある。三つ、信奉者たちは何処でルクシャ・ハーナが僕たちの世界に封印されていると知った?」

「それは……信奉者間で伝わっていたんじゃないのか?」

「いや、だとしても変だよ。仮に知っていたのなら、何故今になって動き出した? 公開されていないはずの移動魔法を使えるのなら、もっと早くに動いていてもおかしくない」


 奏多の言葉を、孝也は即座に切り捨てる。

 しかし、これもあくまで推察であり、確定ではない。


「あれ? パトカーが集まっているけど何かあったのかしら?」


 志乃が指さしながら言う。

 とある一軒家の前にパトカーなどが数台の車両が止まっており、何やら物々しい雰囲気が漂っている。

 規制線が引かれ、近隣住民の野次馬も集まっていた。


「すみません、何かあったんですか?」


 奏多が中年の女性に声を掛ける。


「あら、噂の勇者君じゃないの。それがね、この玉水さん宅で話題になっている怪奇事件起こったらしいのよ」


 玉水――その名前を聞いた三人は互いに顔を見合わせた。


 

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