都の釣り人と釣り師の娘
釣りのある人生は 幸せか⁉️
私のテーマです
貴族と言っても物語に出てくるような、優雅な者ばかりでは無い。ボロ屋に住み、日々食事にもこまる下級貴族が都にはあふれていた。
菅原道海もその1人である。道海が3男に生まれたこともあり、役職にも就けずにいた。
そんな道海の得意なものが釣りである。日々川や海に出かけては釣りをして、家族のおかずを得ている。おかげで、貧乏貴族のくせに新鮮な魚にはこまらず、時に道海の釣った魚は貴重な収入源になった。
道海「俺は貴族より漁師の方が良いのではないか?」
と、周囲に語ることもあるが、親兄弟に賛成するものはいない。
その日、道海は1人山奥の渓流を目指した。日ごろから至る所に釣りに出かける道海にとっては、野宿もなれたものである。夜明け前に出発し目的地の川についたのは、夕暮れがちかづいている時間であった。
道海は手早く釣りの準備をすると、もっていたミミズをつけて釣りを始めた。またたくまにハヤを3匹つりあげると、寝床をととのえてたき火を始めた。ハヤの焼ける良い匂いがあたりにひろがる。道海は塩をふり、ハヤをあじわっていると、ガサガサ音がして、やぶの中を何かが近づいてきた。
道海は食うのをやめて身構えた。すると、やぶの中から現れたのはカゴをせおった娘だった。
娘「なにやってるの もう日がくれるよ」
おこったように言う娘に
道海「見ての通り、夕げにハヤを食っておる。お前も食うか?」
と おだやかにハヤを1ぴきさしだした。
娘「あんたここで寝るつもり?」
相変わらず言葉がきつい。
道海「そのつもりだが・・ダメかな」
娘「クマが出るよ。でかいやつ。ここいらの猟師も、夜は山に入らない」
クマときいて道海は驚いた。キツネやタヌキ、シカぐらいは出るとおもっていたが、クマは想定外だった。
道海「クマが出るのか。ここらは?」
娘「・・都じゃないよ! ここは」
道海「どうすれば良い?」
娘「食われるのが嫌なら、ついておいで。もっとも、貴族様扱いは出来ないよ。ワシら、そだちが卑しいから礼儀をしらないからね」
道海「食うのは良いが食われるのは嫌だ。よろしく頼む」
道海は娘について、娘の住む炭焼き小屋に向かった。
小屋である。貧しい貴族の道海 のいえの、物置よりもみすぼらしい小屋が、娘の家族の家であった。ゆかはない。地べたにむしろを敷いて、そこでくらしている 屋根と囲いはあるが、板でかこわれているだけで、柱は太い竹で 屋根は低い。近くにある炭焼き窯の方が立派にみえる。
そんな小屋に、娘は父と母と3人でくらしている。
娘「川沿いで、野宿しようとしてたから、拾って来た」
父「そりゃ〜無茶をしなさる」
道海「クマが出るそうですね。助かりました」
母「何も無いけど、炭だけはあるから、温かいよ」
確かに、部屋の中央に炭が焚かれている。貴族でも出来ない贅沢である。
部屋を見ると、部屋の隅に1本竹で作られた釣竿が数本ある。
道海「釣りをされるんですか?」
娘「おとうは釣りの名人じゃ」
道海「さようか。私も釣りに来たのだ。これが私の竿だ」
道海は当時としては珍しい並継ぎの釣竿をとりだした。6本継ぎで約10尺(3メートル)の竿は親子を驚かせた。
父「都の道具はやはりちがうの〜」
娘「これなら、持ち運びに便利だね」
道海「はい。手先が器用な者がおりまして、作ってもらいました。おかげでここのような、遠くにも釣りに来れます」
娘「そうか、この竿のおかげでクマに食われかけたんだ」
道海「そうだ。おかげで、そなたたちにも会えた」
みんなの笑顔が炭火にてらしだされている。道海は都では味わえないぬくもりを感じながら、眠りについた。
翌朝、娘の両親は炭焼きの準備をし、娘が父の竿を片手に道海の案内をしてくれた。娘の持つ竿は長さが8尺(2.4メートル)あり、道海の糸よりも太い糸がついている。
道海「糸が太いのだな」
娘「馬の尻尾の毛を編み込んでつくってあるんだよ。毛鉤にはこれがイイ」
道海「け・ば・り・・?なんだ?それは?」
娘「毛鉤、しらないの?これよ」
そう言って娘が見せたのは、釣り鉤に鳥の羽や草の穂を糸で巻いて、虫のように見せた釣り鉤だった」
道海「これで 釣れるのか?」
娘「見てな」
娘は竿と糸を巧みに操り、軽いけばりを川の上流に投げ入れた。毛鉤はまるで川に落ちた虫のように流れて来るとパシャリと水しぶきが上がり魚が釣れた。イワナだ。
道海「スゴイな!私にもやらしてくれないか?」
道海は娘から魚と仕掛けをかりて毛鉤釣りにいどむ。なかなか上手く毛鉤を振り込めない。娘はていねいにおしえてくれる。道海は直になれて、思った所に毛鉤を振り込めるようになる。
娘「さすが、スジが良いね」
道海「そなたの教え方が良いからだ」
そう言った瞬間!魚が毛鉤を食った。
素早く合わせを入れる道海。竿がきれいに弧を描き、つれてきたのは尺イワナであった。
娘「すごいぞ!お見事 !」
道海はうなづくはかりで言葉にならない。その後2人は釣りを続け、つぬけ(10匹以上)のイワナを仕留めた。
その日の午後、娘は父に言われて道海を湯に入れてやることにした。河原で石をつかって小型のプールを作り、その中に焼いた石を入れる。ジュッと音を立てて石の周りの水が沸き立つ。数個入れると水はぜんたいにお湯に変わる。露天風呂の出来上がりである。
とうじのフロは行水や蒸し風呂が主流で、湯につかるのは珍しい事だった。道海もはじめてだった。恥ずかしがっていると
娘「はやくお脱ぎよ。背中流してやるよ」
と サッサと着物を脱いでしまった。
道海もハダカになる。2人で湯につかる。
娘「ぬるくないかい。もっと石入れようか?」
道海「いや、これくらいがイイ。いつも入っているのか?」
娘「時々ね。きもちイイでしょ」
湯に洗われた娘は、思いのほか美しかった。背中を流してもらっていると、ときおり肌が触れ合う。なめらかで張りがある。道海はムラムラするものを感じ、思わず娘を抱きしめた。娘は抵抗することなく抱かれた。娘の身体は都の女より引き締まり、弾力があった。娘はためらう事無くあえぎ声を上げる。道海は娘の中に欲望を放出する。出したあとで
道海「すまぬ・・がまん出来なかった」
娘はニッコリ笑って
娘「男はそうゆうもんだろ。イイよスキなだけ」
道海は存分に娘をあじわい、その魅力にとりつかれた。娘は終わった後、道海が思いを出しまくったところをたんねんに洗った。
娘「私なんかに子を産まれたらこまるだろ」
道海「そんな事は無い。もっとも私なんかの子を産んでも、御利益は無いがな。貧乏貴族の子は・・惨めなだけだ」
娘「私が産めば炭焼きや釣り師の血を引く子どもだ。貧乏でも惨めじゃ無いよ。それが普通だからね」
道海は再び娘を抱きしめた。
翌朝、ひと晩塩干ししたイワナをもって道海は都に帰った。
娘は炭焼きの手伝いをしている。
父「無事に帰ったか」
娘「帰ったよ。また来るかどうかは解らないけど」
母「子種は貰ったのかい?」
娘「タップリとね。でも、洗ったよ」
父「大切なのは、まぐわった事実だ。時期が合っていれば、誰の子どもでも同じだ。問題はお前の産む子を誰の子どもとして産むかだ」
母「もうじきふもとの町にどこぞの貴族様が視察に来るそうだよ」
父「献上品にうちの炭を納める。お前も一緒に納めに行くぞ」
娘「若いのがいるかな?」
父「年は関係ない。出来るだけ多くの貴族と結ばれておけ。下地を作っておくのだ」
娘「任しといて」
娘はポンと胸を叩いた。
道海は都に帰ったが、炭焼きの娘のことを思わぬ日がない。
(むくな娘をもて遊んでしまった。なんとか都によんでやりたい)
と、一念発起して勉学に励み、役職に就けるよう頑張り始めた。
もちろん道海は炭焼き親子の本心など、しるよしもない。
死んで三途の川に着いた時、舟に乗らずに岸から釣りをしたら・・・どんな魚が釣れるだろう?




