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超短編

メガロの夜

作者: 星狼
掲載日:2025/09/24

2525年のネオ歌舞伎町、ネオンの光が赤と青に瞬く路地裏。メガロはタバコを吸いながら、縄張りを歩いていた。黒い革ジャンに身を包み、サイバネティックな義眼が冷たく光る。彼女の鋭い視線が、薄暗い通りで異様なものを見つける。

全裸の男が、堂々と歩いている。

メガロは眉をひそめ、冷ややかに見下ろす。タバコの煙が、ホログラム広告の光に溶ける。


「おい、そこの変態。服着ろよ。ここは私の縄張りだ。殺されたくなければさっさと消えな。」


全裸の男は、気にせずに答える。ネオンの光が、彼の肌を怪しく照らす。


「いや〜、申し訳ございません。先ほど絡まれてボコボコにされてしまい、服まで盗まれてしまったんですよ。ガハハ」


メガロはタバコを地面に投げ捨て、新しい一本に火をつける。義眼が、不敵な笑みを映す。


「ふん...面白い奴だな。お前、うちの部下にボコられたいなら、そう言ってくれりゃ良かったのに。」


全裸の男は頭を掻き、気まずそうに笑う。


「すいません。よければタバコを一本頂いてもいいでしょうか?服と一緒にタバコまで奪われてしまいました。」


メガロは無言でタバコを一本渡し、ライターで火をつけてやる。煙が、ネオ歌舞伎町の湿った空気に混じる。


「ほら。だがな、これ以上の施しは期待すんなよ。用があるなら、さっさと言え。」


全裸の男はタバコを吸い始め、満足げに目を細める。


「いえいえ、タバコが頂けただけで十分です。いや〜、美味いですな。」


メガロは眉をひそめ、鋭い視線を向ける。路地裏のドローンが、ブーンと音を立てて通り過ぎる。


「変態は嫌いだが...お前、なかなか面白いな。私の部下になれ。ただし、条件がある。」


全裸の男は興味深そうに身を乗り出す。下半身は依然として丸出しだ。


「ほう、条件とはなんでしょうか?」


メガロは上着を脱ぎ、男に投げ渡す。革ジャンが、ネオンの光に鈍く光る。


「まずは服を着ろ。それと...お前の"変態性"を活かした仕事をやってもらう。嫌なら即殺すがな。」


男は上着を着ながら、苦笑する。下半身は露出したまま。


「あの〜、何か勘違いされていられるようですが、私も好きでこのような格好をしているわけではありません。私は絡まれて身包みを剥がされたからこうなってるんですよ。決して変態などではありません。」


メガロは不敵な笑みを浮かべ、タバコの煙を吐く。


「へぇ...じゃあ、お前を襲った連中の情報、吐いてもらおうか。今すぐに。」


男は上着を羽織ったまま、記憶を辿る。遠くで、サイバーバイクのエンジン音が響く。


「いやぁ、いきなり背後から殴られて倒れた所をしこたまやられましたからねぇ……ただ背の高い金髪の男性がリーダー格だったように思います。」


メガロはタバコを指で弾き飛ばし、冷笑する。


「ふん...金髪の背高か。そいつらは私の縄張りで商売してるチンピラどもだな。お前、運がいいぜ。」


下半身裸の男は首を傾げる。


「運がいいとはどういう事でしょうか?」


メガロはタバコの煙を吐き、義眼を光らせる。


「お前を襲った連中はな、明日の朝までに私の部下が全員"処理"する。だが、お前にも働いてもらうぞ。」


下半身裸の男は真剣な顔で聞き返す。


「処理が具体的に何を表すのかと、私が働く内容をお聞かせして貰ってもいいですか? 私もこういった街だからある程度の事は覚悟していましたが、出来れば運転免許証などは手元に戻したいんです。」


メガロは冷笑いし、タバコをくわえる。


「運転免許証? ああ、あいつらのアジトから全部回収してやる。お前には...そうだな、奴らの金庫を開けるのを手伝ってもらう。」


男は目を輝かせ、タバコを見つめる。


「金庫を開けるのを手伝うとは具体的にどうすればいいのですか? 後、申し訳ありません。煙草もう一本恵んで頂いてもいいでしょうか?」


メガロはタバコを投げ渡し、呆れたように言う。


「金庫は奴らのアジトにある。お前は全裸で正面から突っ込んで、奴らの気を引け。その間に私が金庫を開ける。」


男はタバコに火をつけながら、苦笑する。下半身は依然として丸出しだ。


「だから、勘違いされているようですが、私は変態などではありません。そんな全裸で突っ込むなんて出来ませんよ。」


メガロは呆れた表情で、タバコを消す。


「今まさに下半身丸出しなのに何言ってやがる。まぁいい、じゃあ普通に裏口から侵入するか。」


男は安堵の表情を浮かべ、頷く。


「そうですね。そちらの方が安全だと思います。私も免許証を取り戻したいので、お供させて頂きます。」


メガロはタバコを地面に捨て、歩き出す。ネオ歌舞伎町の雑踏が、二人を飲み込む。


「よし、決まりだ。まずは服を買ってやる。ついて来い。」


下半身裸の男は慌てて後を追う。


「パンツもよろしいでしょうか?」


メガロは呆れた溜め息をつき、振り返る。


「当たり前だろ。早く来いよ。」



メガロと下半身裸の男は、ネオ歌舞伎町の闇に消えていく。路地裏のネオンが、彼らの背中を照らす。

銃声と喧騒が響くこの街では、暴力も裏切りも日常茶飯事だ。


だが、全裸でタバコをねだり、ギャングのボスに絡む男の登場は、ネオ歌舞伎町の歴史でも前代未聞の珍事だった。

この夜、ネオ歌舞伎町は、いつもより少しだけ異様な輝きを放っていた。

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