表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四度の告白《おもい》は砕かれるー今更好きだと言われても  作者: 隆頭
それはもしもの物語

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/97

case3 四度の告白《おもい》は果たされる(2)

 ここは校舎裏、観月さんを連れてここに来た。

 彼女に想いを伝えて、この気持ちに終止符を打つために。


「ごめんね、いきなり呼んじゃって」


「ふふっ、全然良いですよ」


 何を言おうとしているのか、気付いているのではないのかと思う。それなのに、どうしてだ?

 なんでそんなに、穏やかな笑顔で佇んでいるんだ……?


「それでね、今回来てもらったわけなんだけど……」


「はい♪」


 緊張の瞬間かと言われれば、意外とそうでもない。

 存外心は落ち着いているのか、続きの言葉はするなりと出てきた。諦めの心が肩の力を抜いてくれているのだろう。


「好きだよ、観月さん」


「……はい♪」


 それは最後の告白(おもい)。気持ちに一区切り付けるために放った言葉であった。

 しかし彼女は、あまりにも魅力的なほどの笑みで頷いた。まるで待ち焦がれていたのかというほどの笑み。


「だから俺と、付き合って欲し──」


「はい、喜んで♪」


 ……?

 一瞬理解ができなかった。今までの告白を断ってきたハズの彼女が、食い気味に頷いたくれたのだ。

 嬉しいというより、困惑が強かった。


「今まで断ってしまってごめんなさい。樹くんの告白は嬉しかったんですけどその……私、怯えてたんです。臆病だったから、心の準備が出来てなくて、断っていたんです」


 まるで弁明するように、今までの事を話している。突然のことに置いてかれてしまっているが、観月さんの言葉はなんとか聞けている。


「でも、諦めずにいてくれたことがすごく嬉しくて、それで勇気を貰えました……ありがとうございます♪」


 そう言ってニッコリと笑った彼女に見惚れ、それでもすぐにはっとした。

 諦めていたもんだから、困惑はしたままだが。


「いやその……俺も、嬉しいよ……こちらこそありがとう」


「ふふ……♪」


 観月さんの自然な笑みがとても綺麗で、それを見て心が踊るが、思わず後頭部を掻いてしまう。

 晴れて彼女とは恋人関係になった訳だが、どうにも現実味がないというか、感じられない。


「樹くんが告白する前から、ずっと好きだったんです。私のことをちゃんと見てくれる樹くんがずっと好きで、一緒に本を読んでいる時間が幸せでした♪」


 とても嬉しそうな彼女から語られるソレは本当の事なのかと、嬉しいものの困惑してしまうものだった。

 それくらいに諦めモードだったのだ。


「……えい!」


 呆然としている俺の腕に、観月さんが抱きついてした。柔らかなモノが ふよんと押し付けられる。


「困らせてばかりでごめんなさい樹くん。でも、日が暮れてしまうので今日は帰りましょう」


「あっ、あぁうん」


 彼女は放心状態を抜け出せていない俺の腕を引いて、校門に向けて歩き出す。

 その間もずっと腕を抱いたままで、おかげで随分と周囲の視線を集めていた。



 それからしばらく歩くこと十分ほど経っただろうか?

 観月さんはずっと俺の手を抱いたままだが、突如として足を止めた。


「樹くん。改めて、私はあなたのことが好きです。大好きです……お付き合いしてくれますか?」


 それは突然の告白……というより、本当に改めての告白なのだろう。先程のやりとりで互いの気持ちは知っているわけだしな。

 彼女の頬はほんのりと赤く、真っ直ぐにこちらを見つめる瞳は潤んでいるように見える。


 彼女からそう言われたのなら、俺の答えは決まりきっている。


「喜んで!」


「嬉しい!」


 俺の答えに観月さんはすぐに抱きついて唇を重ねてきた。

 目いっぱいに身体を押し付け、しばらくの間動くことはなかった。


 彼女はゆっくりと唇を離してこちらの目をじっと見つめているが、離したのは唇だけで身体はそのままだ。

 改めてこの状況を理解してみると、今まで小さかった心臓の音が途端にうるさくなった。

 なんとなく顔も熱い。


「うふふ……顔が赤いですよ♪」


「まぁ、ね。すっごいドキドキしてるし」


「え?わっ、ホントだ」


 観月さんは俺の胸に手を当て、その鼓動を感じそう言った。


「ドキドキしてるなんて、私と同じですね♪ずっとこうしたかったですから♪」


「そっか……俺も、ずってこうしたかったから、幸せだよ」


 そう言うと彼女は、声にならない嬉しそうな悲鳴を小さく上げて、俺の首元に顔を埋めてきた。

 ぎゅううと抱き締める腕の力がまたつよくなり、当てられたソレの柔らかさがより強く感じられた。


「もう少しだけ、こうしてたいな……」


 それは本当に小さな呟き。抱き合っていても尚、辛うじて耳に届いたその声は明確な彼女の意思を宿らせていた。

 敢えて聞こえないフリをした俺は、何も言わずにその背中を撫でた。


 互いに何を言うわけでもなく、じっとその時間を大切に噛み締めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ