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四度の告白《おもい》は砕かれるー今更好きだと言われても  作者: 隆頭


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五十七話 イキリ後輩

 そんなこんなで放課後、たつきの恋人である七瀬(ななせ)にも事情を話し、敢えて樹を放っておくことにした。変な言い方だが泳がせるって感じだ。

 ちなみにだが、樹には先に帰ると七瀬は言っているらしい。そりゃなにも言わなかったら心配するだろうし当たり前か。


 というわけで場所は校舎裏。どうやらここに呼び出されたみたいで、ソコには五人ほどの男子生徒……それも後輩がいた。

 一人を呼び出して複数で囲むなんて随分と(おもむき)があるじゃねぇか……


「呼び出したのはキミたち?なんの用かな?」


 先に始めたのは樹だ。言葉自体は柔らかいが俺たちなら分かる……怒ってるな。

 そりゃこんな形で呼び出されたなら不愉快だろう、見ているだけの俺だって同じだ。


「なんてことないんスよ、ただアンタが七瀬先輩にベタベタしてなきゃいい」


「は?」


 ヘラヘラと右側にいるヤツが言った。

 ちなみにそれに反応したのは樹ではなく一緒に見に似ている七瀬だ。

 小さい声だがかなり怒っていることがよく分かる。


「当たり前っすよね?だって後輩が困ってんスから譲るのが先輩ってもんでしょ?七瀬先輩の隣……譲ってクダサイよォ……」


 ニチャアと口角を上げながらナメたこと抜かしてやがるバカに樹は返事をしない。

 徐々に距離を詰め、言い終わる頃にアイツの肩に汚い手を乗っけていやがる。


 それを見ている俺たちは当然ながらイライラしている。やられている本人なんてもっとヤバイだろうことは想像に難くない。


「おいおいw、センパイビビっちゃってんじゃんやめたれってw」


「あはは、なっさけねーw。こんなの彼氏なんて七瀬センパイって割と誰でも行けんだなぁw」


 樹が言い返してこないことに気を良くしたバカ共がヘラヘラと色々言っている。

 すると遂に樹が口を開いた。


「何バカなこと言ってんだ?お前らなんかが相手にされるわけないだろ、彼女出来たことないのか?」


 抑揚のない声で淡々と告げた内容は普通に正論だったと思う。俺も同じような気持ちだったからほんの少しスッキリした。


「なんだとテメェ……」


「先輩がそんなこと言っちゃあダメじゃないっすかァ?パワハラっすよパワハラぁ''、ぶっ殺しちゃうッスよぉ?」


 威嚇のつもりか、樹に距離を詰めながら低い声でなにやら言っているが随分と滑稽なことだ。

 それがカッコイイと思ってんなら是非 " そういう連中 " とやり合って欲しいもんだ。

 まぁそれなら今ここに晴政がいるわけだしちょうどいい。


 五人で持って詰め寄って、勝ち誇った気になっている後輩(バカ)共は樹を取り囲んでいる。

 内三人は……ありゃ竹刀か?なんであんなもん持ってんだよ。


「俺らって剣道やってんすわ、だからあんまり調子乗ってっと思っきし……面しちゃうッスよ?」


 ソイツはそう言って竹刀を振って威嚇している。

 というか剣道ってそういうのじゃないだろ、本気でやってる連中に失礼な三人だ。

 対する樹は引く様子を見せない、普通ならここで引くものだがアイツらは五人。

 つまり人数有利で既に勝った気になってる、俺らだってここにいますよー。


 樹含めて男四人か……若干有利すぎる気はするがまぁいいだろ、向こうが悪いんだし。

 ヤツらが引けばヨシ、そうじゃなければ……


「道具使ってイキってんのダサすぎだな。殴られる覚悟もねぇなら引っ込んでろ……臆病者」


 樹の正論にブチった(面とか言ってた奴)がニヤニヤとしていた顔を無くし、ギラギラとした目で樹を見据えた。

 別の二人が彼を羽交い締めにしたことでソイツは思い切り竹刀を振りおろした。


 これはまずいと思い助けに行こうとしたが、気付けば天美がソイツの竹刀を後ろから掴んでいた……早くね?


「それはやり過ぎだろ、いい加減にしとけよお前ら」


「なっ……」


 突然の闖入(ちんにゅう)(しゃ)に後輩連中がどよめく。それに続いて俺たちもその場に向かった。


「えっ……壱斗、晴政?」


「おうおう、俺のダチに随分なことやってくれてんじゃんよ」


「そんなに血の気が余ってんなら俺らも相手になってやるよ、かかってこい」


 正直こんな連中に強気に出るのは情けない話だが、さすがに親友が危険だってのにプライドも何も無い。

 通すべき筋ってもんがあるだろう。


「……ックソ!離せよ!」


 天美に竹刀を掴まれていた男がソレを振り払って殴り掛かる。しかし彼は動じていなかった。

 敢えてソレを頭で受け、余裕の表情で相手に圧を与えている。いや防げよ。

 しかし竹刀だって決して軽いものじゃない、突きではないとはいえ痛いハズだ。それを食らっても涼しい顔をしているのは正直俺だって怖く感じてしまう。

 俺でさえそうなのだから、クソガキ連中はビビり散らしていた。そりゃそうだろな。

 五人は蜘蛛の子を散らすように逃げ始めたのだが、その中の一人を樹が掴む。胸ぐらを掴みあげ壁に叩きつけた。痛そうだ。


「自分がフられたからってソレはダサすぎだろ。そんなこと続けてたら一生誰にも好かれやしないしダセェままだ、二度とやるなよ……おい」


「ひっ……」


 樹はソイツの額に自分の額をぶつけドスの聞いた声で言った。血が出そうな程に鋭い目をして睨みつけている。

 一方後輩の方はガタガタと震えだし血の気が引いている。同情はしない……ってかできない。


 手を離されたソイツはひょこひょこと逃げていった。


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