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四度の告白《おもい》は砕かれるー今更好きだと言われても  作者: 隆頭


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二十五話 何も学ばない二人

 ヘラヘラと近付いてきた二人に麻緒まおちゃんは伏し目がちに言った。


「ごめん、ウチはもうキミ達とは……」


「そーゆーなって」


 拒否の意を示す麻緒ちゃんに、話しかけてきた人の片方が彼女の肩に手を回して纏わりつく。


「やめてよ、あの時逃げたくせに」


「しかたねぇだろ、栄渡えど相手はやべぇんだって……そんなことよりちょっと遊ぼうぜ」


 嫌そうにしているのに気にしない素振り、下卑た視線から彼らの用事はすぐに予想がついた。


「あの、麻緒ちゃん嫌がってますしやめてください」


 怖いけど、嫌がっている友達を放ってはおけないと思い私はそう言った。

 でも彼らは聞く耳を持たない。


「あ''?なんだよお前、一緒に遊んでやるから黙ってろよ」


「っ…」


 もう一人の方が私に ずいっ と近付いて圧を掛けてきたので怯んでしまう。

 そのまま彼は私の肩に手を置いて耳元に顔を寄せてくる。気持ち悪い……


「大丈夫だって、何もしなけりゃちゃんと楽しませてやるからさ…な?」


「やっ、やめ……」


「あ''?」


 なんとか拒否しようとするも、彼は被せるように威嚇して胸倉を掴んでくる。

 そのまま持ち上げるように手を引っ張ってきたことで首が締まり苦しくなる。


「うぐっ……やめっ……」


「黙れっての、ぶち犯すぞテメェ」


 私が抵抗する度に彼の手に力が入り、嫌でも体が触れる。苦しくて気持ちが悪い。

 麻緒ちゃんも同じようにされていて二人して抵抗出来ずにいた。


「だから、キミ達とはもう関わりたくないんだってばっ……」


 苦しみながらも必死に抵抗する彼女だが、彼らは聞く耳を持たないどころか苛立ちをよりはっきり表し始めた。

 彼女を掴んだ男が足払いを掛けて転ばせる。


「マジで腹立つわ、もう知らねぇから。とりあえず脱がすか」


「いいじゃん」


 向こうがそんなことを始めたと同時に私も同じようにされる。

 のしかかられ抵抗できないまま彼が私の服に手をかける。


「おい、何やってんだ」


「あ?」


 この場所に響いた声が彼らの気を引いた。

 そちらを見ている二人がみるみるうちに顔色を悪くさせる。


「げっ、槍坂やりさかじゃん」


「最悪だ、逃げろ!」


 槍坂先輩の姿を認めた二人は脱兎の如く逃げ出してしまった。

 あまり顔を合わせたくない人とはいえ、今回ばかりは助かった……


「大丈夫か二人とも、ってかなで?」


 いつかたつきくんに向けた態度は なりを潜め、今はとても優しげな雰囲気だ。

 私に告白してきた時の誠実な人という雰囲気。


「──あっ、助かりました。ありがとうございます」


 ボーッとしていたところでハッとし、咄嗟に彼に頭を下げた。

 それを見て麻緒ちゃんも頭を下げている。


「いやいや、気にしないでくれよ。俺にとって奏は大事な人だからさ、ほっとけないって」


 そう言って微笑みかけてくる彼に思わず見とれてしまう。

 やはり彼は素敵な人なのかもしれないと、そんなことを思った。


「え?奏ちゃん知り合い?」


「えっ、と……」


 槍坂先輩との間に何かを感じた麻緒ちゃんがそう問いかけてきて思わず言葉に詰まってしまう。


「あぁいや、友達みたいなものさ。ちょっと仲良くしてもらってるだけだよ」


「……元恋人だよ、私たちは」


 答えあぐねた私を気遣って彼が誤魔化そうとしてくれたけど、私は敢えて正直に言った。

 それを聞いた麻緒ちゃんは驚いたように目を見開いた。


「えっ、そうなんだ。でもお似合いだね、カッコイイ人と美人な女の子なんだもん」


 彼女は笑いながらそう言ったので思わず照れしまう。


 怖い思いをしたところを彼が助けてくれたのもありどっと安心してしまったのもあったのだろう。体が震え涙が出てきてしまう。

 そんな私を見て先輩が涙を拭きながら抱きしめてくれた。

 その温かさが心を癒してくれる。


「ウチも、怖かったんですけど」


「ごめんごめん、ほらおいで」


 麻緒ちゃんがそう言うと先輩は そっと頭に手を添える。

 彼女は気持ちよさそうに目を伏せている。


 なんで私はこんな素敵な人を振ってしまったのだろう……そう後悔する。


「俺たち、やり直さないか?」


 頭の上から、そんな声が聞こえた。



 ───────────



「いやぁ、今日は一段と混んだね」


「やばかったな」


 バイトが終わり、恋人の花澄はすみさんと二人でくっつきながら家に向かう。

 結構疲れたので沢山飯が食えそうだ。


 そんなことを考えながら足を運んでいると、途中にある公園に人の気配。

 別に珍しいことでもなければ気にすることもないのだが、そこにいるヤツらは俺の知っている顔ぶれだった。

 それも、俺の友人である樹との因縁があるヤツら。

 そこでの光景に思わずギリリと歯に力が入る。


「どうしたの?」


「いや……なんでもない」


 いつぞやか二人で樹に絡んでいたバカどもと、中学の頃に樹を虐めるように仕向けたクソバカ女。

 その上クソバカ女の方は最近転校してきて樹に付き纏っているヤツだ、それが今じゃ槍坂という男に惚れきってるのか撫でられてデレデレしている。


 中学の時から色んな男に媚び売って気持ち悪い女だったが、何故か樹を好いているフリをしてアイツに迷惑を掛けていた。

 これで槍坂と付き合うのなら別にいいか、樹の心の安寧の為ならむしろいい事なのかもな。



 ……まぁ槍坂は女癖が相当悪い男だが、そんな男とどうなろうと知ったことではないし、ましてやそれで多数の男共に犯されたところで……ただ面白いだけだ、どうでもいい。


 むしろそれで絶望すればいいんだよクソッタレが。

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