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四度の告白《おもい》は砕かれるー今更好きだと言われても  作者: 隆頭


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18/82

十七話 寄り添わなかった人と寄り添う人

 ようやく紗奈さなさんと付き合うようになった日の翌日。

 俺は彼女と朝から待ち合わせをしている。


「おはようたつきくん!」


「おはよう紗奈さん」


彼女は俺を見つけると思い切り抱きついてきた。

 結局お互いの呼び方はいつも通りだ。

 さすがにもう昔の呼び方は恥ずかしい…というか長いこと離れていたので未だに困惑している自分がいる。

 まさか紗奈さんが '' さっちゃん '' だったなんて……


「どうしたの?」


「いや…ちょっと考え事をね…」


 発覚したのは昨日だというのに今更思い出して困惑している俺の顔を彼女は覗き込んできた。


 俺の知っているさっちゃんは、とても落ち着きのある子だった。

 でも誰かと遊ぶのは好きな子で、あの頃の俺はよく彼女の手を引いて遊んでいた気がする。


 昨日、紗奈さんはあの時の自分のことを一人ぼっちと言っていたが…そう言われると、確かにあの子は皆の輪から外れてポツンといた事が多かった。

 そんな姿に気付いた俺が、何故か分からないけど遊びに誘ったんだよな。


「…もしかして、色々思い出してる?」


「よくお分かりで」


 俺の様子を見て見透かしたように彼女はそう言った、俺が肯定すると彼女は ''まーね!'' と嬉しそうに笑った。可愛い。


「あの時さ、私 どうしても皆と馴染めなくてずっと一人だったんだけど…そんな私の手を握ってくれたの、すっごく嬉しかったんだよ」


 昔を思い出しながらそう物語る彼女は俺の頬にキスをしてくる。俺もお返しに紗奈さんの頬にキスをすると彼女は顔を真っ赤にしてはにかんだ。

 ……やべっ、最高かこれ。


「ふふっ樹くん顔がニヤけてるよ、かわいい♪」


 そんなことを言われ恥ずかしくなり顔を背ける。まったく、朝から最高だな。



 教室に入ると、俺たちの様子を見た壱斗いちとが 目を真ん丸にして驚いていた。


「もしかして…っとなんでもねぇや」


 彼は何かを言おうとしたが、結局なにを言うでもなく顔を逸らした。

 多分気付いてるな、俺と紗奈さんが付き合い始めたこと。


「いよっすおはよう樹ぃ!」


「おはよう燈璃あかり


 快活な挨拶をした燈璃が肩に腕を回してくる。

 相変わらず元気だなコイツは、まぁこっちもつられて元気になるからいいけど。


「おはよう燈璃ちゃん」


「ようおはよう!」


 紗奈さんは自分の席から手を振りながら燈璃を呼んだ。

 いつの間にか紗奈さんと燈璃もすっかり仲良くなっていた。いい事だな!

 荷物を置いた燈璃が紗奈さんの元に行った。



 時間が飛んで、今日の分の授業が終わり帰り支度が終わった頃に麻緒まおが紗奈さんを連れていった。

 仕方ないので紗奈さんが来るまで俺は教室で待機することにした。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 今 私は馬門まかど 麻緒まおさんと向かい合っている。

 どうやら彼女は樹くんともう一度仲良くなりたいそうなのだが、 それを嫌がっているのは他ならぬ樹くんだ。

 彼女とできるだけ関わりたくない樹くんの代わりに今は私が相手をしている。

 中学の時、樹くんがいじめられるようになった話を聞いるのだけれど、話を聞く限り結局 その時悪かったのは間違いなく馬門さんである。

 本人もそれは分かっているようだけど、それだけではあまりにもフォローしきれない。


「要するに馬門さんは我が身可愛さで樹くんを見捨てたってことだよね、恋人である樹くんを……ううん、恋人 " だった " 樹くんか」


「…うん」


 懺悔の如く色々と語っているけれど、ストレートに私がそう言うと彼女はバツの悪そうに俯いて肯定した。

 悪いとは思っているのだろう、実際 樹くんから聞いた話と馬門さんから聞いた話に大差はなかった。大筋は一緒…つまりどちらにも嘘はないということ。

 ただ、悪いと思っていてもやった事があまりにも酷すぎる。完全にいじめのきっかけを作ったのは彼女だ。許されることじゃない。


「それは嫌われても仕方なくない?話を聞いてる感じだと事態を引っ掻き回したのは紛れもなく馬門さんだよね」


 確かにいじめをしていた人たちも悪いけど、それでも寄り添ってあげなければいけない人だったはずだ、恋人であった馬門さんは。


 何より許せないのは、信じ続けてくれた樹くんではなくただ馬門さんに下心で近寄ってくる人たちを優先し、あまつさえ目の前でリンチされる彼を庇うでもなくただ眺め続けて、加害者たちと一緒に離れていったことだ。

 結果的に樹くん自身が怒ったことでいじめは収まったけど、もしそれもなくずっといじめられ続けていたら……最悪の事態が頭をぎる。


「樹くんからの誘いは断って他の男の子たちの誘いには応じるんだよね、その時点で酷いよね。その噂が出た時点で彼との関係をもっとアピールするべきだったのに。しかも暴力を振るわれる樹くんを守ったりもしなかったんでしょ?おかしいよ」


 私の言い分に彼女は何も言えない。

 当然だ、何一つ間違っていないのだから。


「まぁ、樹くんにはあなたの言い分は伝えとくけど…彼からの反応はあまり期待しないでね」


 私はそう言って踵を返した、今は早く彼に会いたかった。

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