家族怪議(5)
「ああ、ダメですよ。ちゃんと残さず食べてください」
井浦さんは、残った片足を拾い上げ、宙に放り投げる。
すると、片足も消えてしまった。
何かを飲み込んだような、ごくりと喉を鳴らした音が聞こえた気がした。
「きょ、教主様……? 今のは?」
何が起きたのかわからず、皆が唖然としていた中、信者の一人が井浦さんに説明を求めた。
私は死体やこういう不思議な現象にはすっかり慣れていたから、気にならなかったけれど、他の人たちは自分たちが協力してきた実験という名の儀式で、多くの人の命が奪われていることを知らない。
とにかく綺麗な部分しか見せなかった。
私が死体の処理をしている間に、どういう説明を村の人たちにしていたのかはわからない。
けれど、井浦さんはそこに誰かの死があることを、隠していたのだろう。
だから、私にだけ死体の処理をさせたんだ。
そのために、井浦さんは祖母から報酬として私をもらった。
「この地を清めるための儀式ですよ。みなさんが大好きな、この山の神様に渡しました。霊感がある人間は、ああいいう化け物からすると特別な味がするそうです」
いつもと変わらない、爽やかな笑みを浮かべながら、井浦さんは私たちには見えない何かに手を振りながら言った。
「さて、これでこの地は綺麗になりました。では、家族会議を始めましょうか」
「え……?」
「我々は家族です。この土地は今日から僕のものになりました。僕は山坂家の人間のような、独り占めなんてしようとは考えていません。皆さんは家族ですから、等しく分配するべきだ。よく話し合って、決めましょう」
そこから、井浦さんを議長として始まった家族会議。
等しく分け合うため。
つまり、家族の人数が多ければ多いほど、取り分が減る。
「うちは子供が多いから……その分、多く」
「いやいや、それじゃぁ、独り身の俺の取り分が減るじゃないか!」
「年齢に応じて変えるべきじゃないか? 子供にはまだ必要ないだろう」
揉めに揉めて、家族だったはずの村人のたちが、次第に取っ組み合いの喧嘩を始め、とにかく数を減らそうと殺し合いにまで発展した。
井浦さんは、その様子をとても面白そうにニコニコと笑いながら見ている。
「本当に、人間は馬鹿ですね」
そう言っていたのを、私は聞き逃さなかった。
【家族怪議 完】




