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家族怪議  作者: 星来香文子
おうちかくれんぼ
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おうちかくれんぼ(4)


 少なくとも二人以上の身元不明の子供の骨と、一度火葬された遺骨の一部が見つかった。

 井浦の話によれば、ユウイチくんが亡くなったのは、四十年くらい前の事。

 警察の見立てでは、火葬された遺骨はユウイチくんのもので、他の子供の骨は、行方不明となっている別の赤の他人の子供のものではないかという事だった。


 骨と一緒に子供が着ていたと思われる衣服なども見つかっているらしく、詳しい分析にはもう少し時間がかかるのだとか。

 とにかく、現場はもうしばらくそのまま保存しておいて欲しいと警察に言われ、取り壊しはまたまだ先のことになった。

 この事件は、テレビでは放送されなかったが、ネットニュースや一部週刊誌などで報道され、噂が噂を呼び、色々な憶測記事が出回ることになる。

 俺は何気なく読んでいたその記事の中に、死亡推定時期に現場近くで行方不明となっていた子供の情報も紐付けされていた。


 その内の一人が、山坂やまさかたかしくんという、男の子だった。

 当時は田舎の村に住んでいたのだが、大きなデパートに買い物に行くのに家族で出かけ、家族とはぐれ、誘拐されたのではないかといわれている。

 現在そのデパートの跡地は、全国どこにでもあるような系列のスーパーになっているらしい。

 アパートまでは、車で十分くらいの場所にある為、家下さんが犯人であってもおかしくはない。


 この他にも何人か、この子じゃないかと噂されている子供の情報が出回っていたが、俺はあの子供の幽霊がタカちゃんと呼んでいたこともあり、この孝くんなのではないかと思った。


 そして、どうしても真相が気になった俺は、ネットで調べた情報を頼りに孝くんの住んでいた村を訪れた。

 村の人たちに不審がられないように、偽物の名刺まで作って、フリーの記者を装った。

 何故そこまでして、子供の身元を明かそうと自ら動いたのか、自分でもわからない。

 とにかく、タカちゃんを家族のもとに返してあげたいという思いに突き動かされていたのか、祖父がこの事件とは無関係であったことを証明したかったのか……村へ向かう車の中で、ふと我に帰って考えてみたが、おそらく、後者だったのだろう。


 村へ入ると、本当になんというか、ザ・田舎という風景が広がっていた。

 ほとんど人は歩いていないし、田んぼや畑だらけ。

 一軒家の立派な昔ながらな雰囲気の和風な家が建っていて、どれも昭和感満載という感じの古そうな家だった。

 アパートやマンションのような大きな建物は少ないように見える。


 とにかくネットで見つけた住所の場所を目指したが、「目的地周辺です」と周りに何もないような、だだっ広い場所でナビの案内は終了してしまった。

 周囲に家のようなものは見当たらず、仕方なく途中で通った黒い壁の家の住人に聞いてみようと、引き返す。

 その家は、他の家とは違って、新しく建てられたような四角い家だ。

 そこだけ田舎にそぐわない洗練されたデザインの家だなと思ったので、自然と印象に残っていた。


 車を降りて、玄関の前に立つと表札には、『井浦』と書かれていて、あの管理会社の井浦の顔が浮かんだ。

 親戚かとも思ったが、ただの偶然だろう。

 インターフォンを鳴らしてみたが、留守のようで誰も出ては来なかった為、確認することはできなかった。


 仕方がなく、交番があったところまで引き返すと、親切にも若い警官はパトロールのついでだからと言って、パトカーで先導して教えてくれることになった。

 さっきの黒い四角い家を通りすぎ、さらに坂を登ったその先に『山坂』と書かれた古い大きな家が見つかる。

 さっきこの道を通った時には、まったくその家の存在に気づけなかったのに、不思議なこともあるものだと思った。


「では、僕はこれで」

「ありがとうございました」


 警官に礼を行って、俺は山坂家のインターフォンを鳴らしてみる。

 家の前に車が二台も停まっているし、留守ということはないだろうと思った。

 しかし、この家も誰も出て来ない。

 インターフォンの電池が切れている可能性も考えて、玄関の引き戸を叩いて声をかけてみたが、それでもなんの返事もなかった。


「……ん?」


 諦めて帰ろうかとも思った。

 けれど、玄関の引き戸がほんの数センチだが開いていることに気がついた。


「あのー……すみません、どなたかいませんか?」


 そっと開けて、玄関の中に足を踏み入れてみる。

 それでも、やはり返事はない。

 ただ、その代わり、妙なものを見た。


 開けっ放しになっていた、玄関の正面にあるドア。

 そこから、人の脚のようなものが見えたのだ。


 何か病気か、怪我をして、人が倒れているのではないかと、俺は焦って駆け寄った。

 だが————


「大丈夫ですか…………うあああああっ」


 その時ばかりは、声が出た。

 確かに倒れていたのは人だったが、もう手遅れで、その家の居間には、体の一部が白骨化した死体が、五体もあったのだから。


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