7 「カグヤの研究室③」
チャイムが鳴り、カグヤは瞼を開ける。
「んあ?結構寝た感じがする。生徒達は帰ったかな」
ゆっくりと体を起こして欠伸をする。ベッドから降りてドアを開ける。日が沈み始め暗くなっていた。
「カグヤ、終わったわ。早く買い物に行きましょ」
疲労しているメビウスが来た。
「う、うん。なにかあったの?大丈夫?疲れてるみたいだけど……」
「会議があったの。学園がある日は毎日あるから」
「それはめんどうだね。あっ、準備してくる」
「私もしてくるわ」
研究室に入りカバンの中をお金が入っている袋だけの状態にして外に出る。メビウスも同じタイミングで研究室から出てきた。彼女は手には何も持っていなく手ぶらだ。
「なにも持っていかないの?」
「ええ、必要ないわ」
「そうか。じゃあ、行こう」
道中、メビウスはカグヤに気になることを聞く。
「学園の探索しなかったの?」
「したよ。気配消しながら」
「気配を消す?……なんで?普通に探索すればいいじゃない」
「まあまあ。自分でもなんでそうしたのか分かんない。気配消すのがクセになったのかも」
難しい表情を浮かべているカグヤにメビウスは困惑する。気配を消すのは簡単ではない。それをできて当然かのように言っている。
「まあいいわ。そろそろ着くわよ」
会話をしながら歩いていると一つの店に着いた。二人が来たのは薬局だった。
「薬局?なんで?」
「魔力回復薬を買いに来たのよ。魔力の消費が激しくなるからね」
「まさか、魔法で?」
「そう。ほら、入るわよ」
二人は薬局に入る。中は薬品だらけだ。薬の独特な匂いがする。
「いらっしゃいませ」
女性店員が会計場にいた。
「あった。結構あるわね。うーん、五本でいいかしら。お金は足りる?」
「うん。足りる」
メビウスは『魔力回復薬』と書いてある瓶を五本持って女性店員がいる会計場へ行く。
「『魔力回復薬』が五本で銀貨二枚です」
「はいはい。銀貨二枚」
カグヤは袋から銀貨二枚を取り出し、女性店員に渡す。
「ありがとうございました」
会計を済ませて五本の瓶を持って薬局を出る。
「戻りましょう。早く終わらせて寝たいわ」
「分かった」
二人はカグヤの研究室の中にいる。
「どんな感じにする?」
「君に任せる。俺には内装のセンスは皆無だから」
ドヤ顔でメビウスを見るカグヤにため息をする。
「分かったわ。文句はなしよ」
「了解でーす」
メビウスは床に手を当て、瞼を閉じる。周囲が光り始めて徐々に光が増していき、カグヤは瞼を閉じる。
「……終わったわよ」
瞼をゆっくりと開ける。
「すっご。ありがとう。メビウス」
「……」
メビウスは魔力回復薬を勢いよく飲む。五本あった魔力回復薬は一気に無くなった。
「ぷはー、疲れたー」
「ほい、手、掴んで」
「ありがと。んしょ」
メビウスはカグヤの差し伸べた手を掴み、立ち上がる。
内装は、天井は白色、壁は灰色、床は茶色。中は区切りされていて、メビウスと同じように生活に必要な物がたくさんある。
「ベッドは……いいね。枕も柔らかい」
「喜んでくれてなにより。この後、夕食にするけど一緒に食べる?」
「うん。食べる」
「分かったわ。じゃあ、私の研究室に来て」
二人はカグヤの研究室から出て、メビウスの研究室へと入る。
「作るからソファでくつろいでて」
「分かった」
メビウスは台所へ行き、冷蔵庫から食材を出す。メビウスが料理するのはシチュー。台所からいい匂いがしてカグヤは腹をさする。
「できたよ」
テーブルにはシチューにパンなどが並んでいた。
「すげえ。食べていい?」
「いいわよ」
「んじゃ」
椅子に座り、スプーンを持ってシチューを食べる。
「美味しいよ。いいじゃん」
「よかった。私も食べよ」
二人は黙々と食べていった。
「ごちそうさんです。あんがと」
「それはどうも」
メビウスは皿洗いを終えてソファに座る。カグヤは自分の研究室に行こうとするが、聞きたいことがあった。
「明日って剣技の授業あるの?」
「あるわよ。二限目。時間割表は書類と一緒に渡したはずだけど」
「あれ?そうだったんだ。ありがと。んじゃ、明日ね」
「ええ、また明日」
メビウスに手を振り、彼女の研究室から出て、自分の研究室に入る。
「さーて、書類書類……あった。時間割表ね。ん?」
一枚の書類に視線がいく。その書類をよく読む。
「ちゃんと読んだはずなんだけどなー」
その書類にはこう書かれていた。『カグヤ・ユズリハ様の家は学園の研究室です。』
カグヤは書類をまとめてカバンに入れる。風呂に入り、パジャマに着替えてベッドに横になる。
「最高ー」
瞼を閉じて、柔らかいベッドに身を預ける。