6 「カグヤの研究室②」
魔法学の授業。メビウスは黒板に魔法の構図を書きながら、生徒達に説明していた。
「魔法の威力は魔力量によって変わります。多ければ多いほど威力は増しますが、その魔力量を使いこなすことができなければ魔力が暴発して身体に負荷がかかります」
生徒達は真面目に取り組んでいてメビウスが言ったことや黒板に書いてあることをノートに書いている。そんな中、一人だけうつ伏せになっている男子生徒がいる。
「フラエイ君、起きてください」
「……起きてますよ」
顔を上げ、不機嫌そうに言う男子生徒、ワイド・フラエイ。ワイドは貴族の中でも高い位置にいる。授業態度は悪く、気に入らない生徒には容赦ない。
しかし、テストは上位に入っていて成績は悪くない。
「ノートは書くようにしてください」
「はいはい、分かりました」
嫌そうに言って黒板に書かれている字をノートに書き始めるワイド。続けようとしたが、チャイムが鳴り授業は終わる。
「それでは、また」
教材を持って教室から出ていき、メビウスは自分専用の研究室へと向かう。研究室へと着き、ドアを開けようとするが隣の研究室を見る。
「カグヤ、いるかな?」
隣の研究室はメビウスが作った。内装は広くして後はカグヤ自身に任せるといった感じだ。カグヤがいるか、試しにドアをノックする。すると、ドアは開き、不機嫌そうな表情をしたカグヤがいた。
「メビウス、どういうことかな?研究室作ったの君でしょ?内装のセンス皆無なの?」
文句が多いカグヤに肩をすくめる。
「内装は自分でなんとかして」
「研究室作ってくれたのは嬉しいよ?でもね、枕が石ってどういうこと?おかしいでしょ」
「あなたなら喜んでくれるかなって思ってね」
からかうような口調のメビウスにカグヤはため息をする。
「はあ、君が俺をどう捉えてるか分からないけど、石はダメだよ?頭が痛い。あと、内装手伝って」
「自分で頑張りなさい」
メビウスは自分の研究室に入る。カグヤは彼女の研究室の内装が気になり、カグヤも入る。
「わーお、すごいね」
「ありがと。自分でもよくできてるほうだと思ってるから」
メビウスの研究室の内装は、天井は白、床は黒、壁は白い。空間は区切りされていて、リビングなのだろうか、テーブルに二つのソファがある。他にも、生活に必要な物がたくさんあった。
「これが研究室?家じゃないの?広いし、綺麗。俺の研究室と比較したら全然違うね」
カグヤの中の研究室という概念が崩壊する。
「一応、研究室よ」
「そっか。一応……ね」
内装を見渡してぼーっとしているカグヤをよそにメビウスは教材を本棚に入れている。
「もしかしてだけど、この家具とかって……魔法で?」
「そうよ。魔法で作るの大変なんだから。魔力消費が激しくて死にそうになったわ」
「そうなんだ……自分でなんとかするよ」
「大丈夫なの?」
「……まあ、うん。大丈夫。んじゃ」
とてつもない罪悪感に襲われて自分で内装をどうにかすることに決めた。カグヤはメビウスの研究室から出て、自分の研究室へと入る。
「さて、どうすればいいんだ?石は撤去する……ダメだ。無理だ。終わってる!」
項垂れて、自分の頭の悪さに呆れる。お金はあるが、メビウスのような内装にできるほど持っていない。
「カグヤ、手伝ってあげる」
メビウスが入ってきて呆れたように言う。
「やった!ありがと!」
「お金は持ってるでしょ?」
「うん、まあまあ。授業は?」
「あるわ。だから、仕事が終わってからね」
「分かった」
メビウスはカグヤの研究室から出る。メビウスが仕事が終わるまで学園の探索をすることにした。学園の構図を少しでも理解したほうがいい。
「探索するにしてもどこから……うーん」
ドアを開けて気配を消しながら学園を探索する。授業中なのか廊下には誰もいない。
「てか、気配消すの慣れてるな。彼のおかげなのか……今はそれどころじゃないか」
廊下から外に出て、訓練場へと向かう。
「授業してんのかな?」
訓練場には生徒達が教師に従い、魔法訓練をしていた。生徒達は的に火の弾や氷の矢などを当てている。訓練場には結界が張られていて外に被害が出ないようにしているらしい。魔法に興味がないカグヤにはどうでもいいことだ。
「魔法はいいや。見飽きた」
魔法は危険だ。魔法にトラウマがあるわけではなく、嫌いというわけでもない。単に危ないと思っているだけ。
「次は……寝よ」
突然、眠気が襲ってくる。欠伸をして自分の研究室へと向かう。何事もなく研究室に着き、ドアを開けて入る。
「おやすみ」
ベッドに横になり、石の枕で寝る。