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4 「ニート卒業?」

 「剣技の担当教師になれ」という内容にカグヤは項垂れている。クレイナル学園の生徒ではなく教師になる。


「へこむことないと思うけど?」


「いやいや!おかしいでしょ!俺、退学したよ?それに教師に必要な資格とか持ってない。はい!無理!」


 必死になるカグヤ。


「学園長が資格なしでもいいって。手紙に書くの忘れてたのね」


「資格なしはダメでしょ。それに、もう一つおかしいことあるよ?」


「なにかしら?」


「俺とメビウスは同い年だ。十九歳のはず。そんな早く教師になれるわけがない。ほんとに教師なの?」


 メビウスは優秀でクレイナル学園では稀な存在だ。将来は教師になるというのは聞いたが早すぎる。贔屓されている範囲を超えている。


「ほんとよ。証拠にこれ見て」 


 服のポケットから一枚のカードを出した。書かれていたのは学園名、メビウスの名前など。


「証明書か……分かった。メビウスは教師なんだね」


「信じてもらえてよかった」


「うんうん。それじゃ、学園長にカグヤは教師になりたくないって言っておいて」


 勢いでどうにかなると思ったがそんなことはなく、メビウスは逃がしてくれない。


「ダメ。学園長があなたを必要としてるの。学園長はカグヤを高く評価してる。いいじゃない」


「よくないよ?学園長、なに考えてんのさ。剣技はウェル先生がいるじゃん」 


 ウェル・クラット。この国、フレイス王国の騎士団の団長だった男。今はクレイナル学園で剣技の担当教師だ。ウェルもカグヤを高く評価している。理由はカグヤの剣技だ。


「剣技の授業は生徒一人一人を見ないといけないの。ウェル先生は今まで、一人で頑張ってたの」


「だから、もう一人……だあー、もう!分かったよ!教師になるよ!なればいいんでしょ!」


「ありがと、カグヤ」


 これ以上話しても最終的には教師になる流れだ。


「それでいつから?教師になるのは」


「明日よ」


「明日?はっや!学園長、逃す気ないじゃん!」


「そういうことで、これ読んでおいてね」


 メビウスから複数枚の書類を渡された。


「ナギサママ、ありがとうございました」


「あら、もう帰っちゃうの?まだいてもいいのよ?」


「仕事があるので」


「そうなのね。お仕事頑張ってね」


「はい、お邪魔しました」


 メビウスは家から出ていった。ナギサは見送った後、カグヤを見る。不満そうな顔をしながらも学園の書類を読んでいる。


「カグヤ、本当に教師になるの?」


 ナギサは正直、反対だ。今みたいに明るい表情がまた暗い表情になるのを恐れている。


「うん」


「そうなのね。応援するわ」


「ありがと」


 ナギサには応援するぐらいしかできない。


「ただいま」


 アマネの声。どうやら仕事は終わったらしい。リビングへ入るとたくさんの書類に驚く。


「これは?学園から?」


「おかえり。ちょっと耳貸して」


 これまでのことをアマネに話すと複雑な表情をするアマネ。彼も反対なのだろう。だが、カグヤが決めたことには口出ししないようにする。


「よかった。服装は自由。それに……」


 アマネもカグヤを応援することしかできない。カグヤは書類を読み終えるとアマネが帰ってきたことに気づく。


「お、パパ。おかえり。今、持ってくる」


 カグヤは書類をテーブルに置いて自分の部屋へと向かう。ナギサとアマネは書類を読む。


「うーん」


「カグヤが決めたことなんだ。口出しはやめとこう」


「分かってるわ」 


×××


 翌日。カバンに渡された書類やお金が入った袋などを入れる。机の上にある刀を帯刀して背伸びをする。朝の五時に起きるというカグヤにしては珍しい時間帯に起きた。


「教師か。まあ、剣技だけだからね」


 リビングへ行くと二人はいない。まだ寝ているのだろう。書いておいた手紙をテーブルに置いて、起こさないように足音を立てずに家を出る。


(しばらくはお別れか)


 家を見て肩をすくめる。書類によるとカグヤには家が用意されているらしい。学園には午前六時に来いとのこと。

 深呼吸をして学園へと向かう。生徒としてではなく教師として。



 クレイナル学園へ着き、気配を消しながら学園長室へと向かう。最初に学園長室に来るようにと書かれていた。学園長室に着きドアの前に立つ。


「いるのかな?」


 軽く二回ノックをする。返事はこない。


「あっれれー?なんで?」


 もう一度、ドアをノックをする。


「入れ」


 ノスの声が聞こえてきた。取り込み中だったのか分からないがそんなことは気にせず学園長室へと入る。


「失礼しまーす。カグヤ・ユズリハです」


「おお、カグヤ。久しぶりだな。来てくれたか」


 ノスは椅子から立ち上がりカグヤの右手を握る。


「はい。嫌々ですけどね」


「すまないな。だが、どうしてもお前が必要なんだ」


 頭を下げるノスに驚くカグヤ。


「はいはい。んで、これからどうすれば?」


 ノスは頭を上げる。


「そうだな……学園内にお前専用の研究室を作っておいた。そこで今日は休め」


「うぇ!?いいんですか!」


「初日からはつらいだろうからな」


「ありがとうございます!」


 ノスから鍵を渡される。


「失礼しました」


 カグヤは学園長室から出てカグヤ専用の研究室へと向かおうとするが重要なことを聞いていなかった。


「研究室ってどこ?」 

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