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3 「ニート生活の危機」

 空が薄暗くなっていき街にある街灯に光がつく。アマネとナギサは紙袋を持ちながら家へと向かっている。


「今日はなに食べたい?」


 ナギサは隣にいるアマネに聞く。


「ハンバーグがいいかな」


 こういうとき、ほとんどの男性は「なんでもいい」と返すがアマネは違う。ナギサと結婚したときから一度も喧嘩したことがない。


「分かったわ。ソースはデミグラスソース?」


「うん」


「じゃあ、パンと野菜とハンバーグね」


 「任せて」と伝わるドヤ顔を見て笑う。


「早く行こう。カグヤが待ってる」


「そうね。行きましょ」



 カグヤはゆっくりと瞼を開ける。外からアマネとナギサの足音が聞こえてきて安心する。


「ただいまー!」


「ただいま」


「おかえり」


 元気のいい声と穏やかな声に緩い声で返す。アマネとナギサがリビングに来た。カグヤは寝起きで目をぱちぱちして背伸びをする。


「今日はハンバーグよ」


「いいね」


 紙袋をテーブルに置き、台所へ行くナギサ。アマネは紙袋からクッキーを取り出してカグヤに渡す。


「お昼、食べてないでしょ?」


「あんがと」


 アマネもソファに座り、クッキーを食べる。台所から野菜を切る音、肉の焼く音がしてくる。


「カグヤ、狩りはどうだった?」


「結構狩れたよ。あとで持ってくる」


「ありがとう」


 会話をしていると、いい匂いがしてきた。


「もうすぐできるよー」


「分かった」


「はーい」 



 ダイニングテーブルには、パンに野菜、ハンバーグが並べられていた。ハンバーグにはソースがかかっている。 

 椅子に座り、ナイフとフォークを使いハンバーグを切り、口に運ぶ。


「おいしいよ」


「それはよかったわ。どんどん食べて」


 テーブルに並んでいた料理はなくなっていく。


「ごちそうさん。ふいー」


 皿はナギサが洗ってくれている。手伝おうとしたが「大丈夫」と言われた。カグヤは自分の部屋に入り、袋をリビングに持ってくる。


「持ってきたよ」


「ありがと。テーブルに置いといて」


「はいはい」


 テーブルに置くとアマネが中身を見て頷く。 


「状態よし。綺麗に皮を剥いてある」


「大丈夫そうかな?」


「うん、明日もお願いできるかな?」


「いいよ。任せて」


 そう言うと、カグヤは風呂場に移動し、浴衣を脱いで風呂へと入り、パジャマに着替えて歯を磨き、自分の部屋へと入り、ベッドに横になり、瞼を閉じる。


「今日も一日、お疲れ」



 現在、朝の十時。森の中で気配を消し、一匹の巨大な狼を観察する。カグヤには気づいていない様子。


(よし)


 左手で鞘を抑え、鍔に親指をつける。そして、狼に近づき親指で鍔を押して柄を右手で握り抜刀する。狼はカグヤに気づき距離をとろうとするが、カグヤは狼の足首を斬り狼は倒れ、体勢を立て直そうとするがアキレス腱を斬られてしまい立ち上がれない。


「とっ」


 高く飛び、狼の頭に刀を突き刺すと狼は倒れる。頭から刀を抜き、軽く一振りして血を払う。


「どこから解体を……うん?」


 頭から飛んで地面に着地して周りを見渡す。動物の足音や鳴き声は聞こえてこない。()()()()()()()


(熊が二匹?珍しい……いや、そんなことないか)


 カグヤは遠くから来る熊を待つ。そこまで遠くにはいなく、カグヤを警戒しながら近づいてきている。熊が来たのは狼が目当てだろう。


「おっ?」 


 二匹の熊が姿を現す。カグヤは走り、右足を地面に強く踏み、飛んで体を一回ひねりして熊の背後に着地し、勢いよく振り向き左腕を斬る。


「――ッ!」


 熊は倒れて痛みに悶えている。もう一匹の熊は喰い殺そうと口を開けてカグヤに飛びかかる。カグヤは姿勢を低くして滑り込むように走り、刀の柄を両手で掴み上に向けて熊を斬り、通り抜ける。傷口は喉から股まであり、そこから血が溢れ出て倒れる。


「逃がさない」


 腕を斬られた熊は逃げようとしたが、通り抜けた勢いで高く飛び、熊の頭に刀を突き刺し、後ろに飛んで地面に着地する。熊は頭に刀を突き刺されたまま倒れる。


「ふふん。俺の勝ち」


 熊の頭から刀を抜き、軽く一振りして血を払う。狼が一匹に熊が二匹。カグヤは狼から解体を始めた。



 袋を持って家へと帰る。本当は公園で休もうとしたが、子ども達が遊んでいたので仕方なく帰ることにした。


「ただいまー」


「おかえり」


「え?……なんでー君が?」


 カグヤの目の前にいたのは一人の女性。


「来ちゃダメだった?カグヤ」


 からかうような表情をしてメビウス・キャルンクはいた。



 カグヤはソファに座り、ナギサが用意してくれた牛乳を飲みながら向かい合ってソファに座っているメビウスを見る。姿は学生の頃とはあまり変わっていない。メビウスはカグヤの視線を感じて微笑む。


「なに?カグヤ」


「いや、久しぶりだなーって」


「ふふっ。そうね。久しぶり」


 カグヤはテーブルに置いてある手紙に視線を向ける。


「メビウス、これは?」


「それはあなた宛ての手紙。クレイナル学園から」


「なんで学園から?メビウスが?」


「そう。私、学園の教師やってるから。学園長がカグヤにそれを渡すようにお願いされてね」


「へえー、あの学園の教師か。それに学園長からってなんだろ」


 カグヤは手紙の内容を見る。だんだんと青ざめていくカグヤ。


「これマジ?」


 手紙の内容は「剣技の担当教師になれ」だった。

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