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ダメダメ眠り剣士  作者: 相川悠介
第一章 ニート剣士
16/39

16 「伝説の存在、そして、疑い」

 カグヤとルーク、エレメン以外は声を出さずに、ただ、ルークとエレメンを見て驚いていた。


「カグヤ、この人は本当にルークなの?あの……」


「ああ、いいよ。はいはい。ルークは世界最強の存在で「五大賢人」達でさえ倒せなかった最強の邪竜エレメンを倒した伝説の人。で、その人がここにいるってこと」


「世界最強だなんて過大評価だよ。ね?エレメンちゃん」


「そう……ですね……んー」


 メビウスの言いたいことは分かっている。世界最強と呼ばれている存在、ルーク•アルカンス。クレイナル学園出身のルークは剣と魔法の両方を極めて、誰にも負けない力を持ち、フレイス王国の国王や国民から期待されていた。

 そして、一人で旅をしている途中、世界から恐れられた最強の邪竜エレメンを倒したと歴史に残る偉業を成し遂げた。カグヤはそれを簡潔に説明するとルークは苦笑し、エレメンはてきとうに答え、背伸びをする。


「ま、待てよ。では、そこにいるエレメンという少女は?単に同じ名前というだけか?エレメンは邪竜であり人間ではない。それにルークに倒されたはずだ」


 ノスはエレメンを見て難しい表情をする。エレメンは欠伸をして眠そうに答える。


「倒されたということになってるだけで……実際はこの通り生きてますよ。誰かが間違えた情報を流してしまったのではないですかね」


 ノスは納得していない表情をしていてカグヤは肩をすくめる。


「まあ、信じなくてもいいですよ。同姓同名なだけかもしれないし、エレメンが人間っていうのも変ですから」


「私はこれでも竜ですし、それに邪竜なんて酷いじゃないですか。あんな野蛮な竜達と同じにしないでください」


 眠そうながらも不満な表情をするエレメンにノスは「す、すまない」と戸惑いながら謝罪する。


「ルーク、クレイナル学園で君が学生だった頃の学園長ってここにいる学園長?」


 カグヤに聞かれてルークは学園長であるノスを見る。しかし、首を横に振る。


「違うよ。学生だった頃は……忘れた。いや、覚えてない」


「そうなのかー、まあいいや。学園長、屋敷の調査をしましょう。早くしないと授業、始まっちゃうんで」


「ああ、そうだな」


 カグヤ達はフラエイ家の屋敷の調査を始める。



 調査は班を作ってそれぞれ調査をすることになった。カグヤ、ルーク、エレメン、メビウスの四人。ノス、ウェル、ロノの三人。そして、冒険者四人と三つの班となった。

 カグヤ達の班は屋敷の二階、ノス達の班は一階、冒険者達は庭を調査することになった。


「なにもないね。調査は終了ってことで」


「始まったばかりよ。面倒だからってすぐに終わらせないの。ルークさんとエレメンさんを見習って」


「へーい」


 気怠げに返事をしてルークとエレメンを見る。二人は部屋を真剣に調べている。


「うーん、この部屋には手がかりらしき物はない。別の部屋にはあるかも」


「そうですね」


 二人は別の部屋へ移動する。


「……メビウス、ちょっとここで待ってて」


「なんで?」


「とにかくここで待ってて。すぐに終わるから」


「ちょっ……なんなの?」


 カグヤはルークとエレメンがいる部屋に入り、ドアを閉める。メビウスはため息をして、三人が来るのを待つ。



 ルークは机の引き出しを見て、なにか手がかりがあるかを調べている。エレメンはベットの下を調べている。カグヤは手を一回叩く。


「演技上手。そんな才能があったなんて羨ましいよ」


「はあ、それはどうもです」


 カグヤが二人の演技に称賛すると、エレメンはベットに座ってカグヤをジト目で見る。


「ありがとう!いやー、演技って難しいね」


 ルークは笑顔でカグヤの称賛の言葉を受け取る。ルークは椅子に座り、足を組む。


「あの冒険者達はどうする?殺す?」


「いきなり物騒なこと言うね。こっわ」


 ルークの発言にカグヤは引く。エレメンは欠伸をしながら枕を軽く突いている。


「殺す必要はないと思います。カグヤさんはどう思いますか?」


「俺もエレメンと同じ。殺さなくていい」


「はーい、分かった。でさ、調査する必要ないよね。僕とエレメンちゃんがやったんだもん。時間の無駄だよ」


 ルークの言う通り、時間の無駄だとカグヤも思っている。エレメンも同じらしく枕を持ってルークに投げる。突然の枕の投擲にルークは驚くことなく片手で取る。


「にしても、殺し方には引いたよ。あんな死体は初めて見たわけじゃないけど、俺達三人以外は青ざめてた」


 ルークが投げた枕を取り、二人を見るカグヤ。ルークは立ち上がり、右肩を軽く回す。エレメンも立ち上がり、ため息をする。カグヤはエレメンに枕を投げ、エレメンは枕を取ってルークに投げ、ルークは枕を取り、カグヤに投げてカグヤは枕を取る。それを繰り返しながら会話をする。


「殺し方は自由。文句は受け付けない」


「私は一人だけです。他はルークさんです」


「そうなんだ。ルークは頑張ったねー」


「そうだよ。頑張ったんだ。半分遊びで」


「だと思った」


 飽きたのかエレメンは枕を取り、投げるのをやめてベットに置く。


「学園長達と合流しよう。調査は終わり」


「賛成ー」


「私もです」


 部屋から出ると、メビウスが腕を組んで不満な表情をして、カグヤを見ている。


「遅い。なにしてたの?」


「部屋で枕投げ。ちゃんと手がかりも探そうとした」


 カグヤの後ろでは、ルークは笑顔で頷いていて、エレメンは目を逸らしていた。


「それで、なにか見つかったの?」


「なにもなかった。んで、二人と話し合った結果、学園長達と合流して調査を終了ってことになった。メビウス、君はどうする?」


 メビウスは瞼を閉じて考える。フラエイ家は全滅したことは分かった。調査をしても手がかりは見つからない。カグヤは昨日、研究室にいた。メビウスは瞼を開けてルークとエレメンを見る。


「もしかしてだけど……ルークさんとエレメンさんが全滅させたと思う。違う?」


(え、やばいな。二人は……)


 カグヤは内心焦って二人を見るが、ルークは目をぱちぱちしていて、エレメンは欠伸をしていた。二人はメビウスの言葉に動じていない様子。


「んー?僕達を疑うか」


「なにを根拠に?」


「カグヤが持っていた物。カグヤがあれを使ってルークさんとエレメンさんにフラエイ家を滅亡させるように頼んだと思う。カグヤ、そうじゃないの?」


 メビウスはカグヤを見るが、カグヤは肩をすくめて困ったような表情をする。


「俺はフラエイ家を滅亡させようと思ったことないし、そんなことでルークとエレメンに頼むわけがない」


「そうそう。頼まれてない」


「頼まれたとしても断りますね。面倒なので」


 もちろん嘘でメビウスを騙す。メビウスは三人の反応に動揺を感じない。


「……疑って悪かったわ。ごめんなさい」


「いいってことよ。ね?二人とも」


「うん」


「はい」


「んじゃ、学園長達と合流しよう」


 カグヤがそう言うと、メビウスは「そうね」と言い、ルークとエレメンも異論はなく頷く。

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