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ダメダメ眠り剣士  作者: 相川悠介
第一章 ニート剣士
15/39

15 「呼び出し」

 夜中、カグヤの研究室でムメイから音が鳴り、カグヤは瞼を開けて起き上がり、ベットから降りて机に置いてあるムメイを取り、耳にムメイを当てる。


『終わったよ』


「ご苦労様。あんがとね」


 男性の声が聞こえてくる。報告してきたということはフラエイ家は滅亡したということになる。カグヤは安心して通話を終了しようとするが、それは許されなかった。


『旅はするんだよね?約束したでしょ?』


「うんとね……あーっと、そうだな。今から言うことは全て事実だからね。俺は教師になった。だから、旅は無理」


『……あっはっはっ!面白い冗談だね!』


 全然信じていないらしく笑っている。


「冗談じゃないから。クレイナル学園で教師になったんだ。だから……いや?長期休暇中に旅はできるか?」


 カグヤは嫌な予感がして、旅ができるかどうかで会話をする。彼の機嫌を損ねるとめんどうだからだ。


『ふーん、本当に教師なんだ……君には似合わないね!』


「旅の件はなしでいいかな?」


『ごめんごめん!冗談だよ!』


 男性は慌ててカグヤに謝る。しかし、男性の言うとおりでカグヤには教師は似合わない。今すぐに早く教師を辞めたいと思っている。


「はいはい。んで、旅だけど、できるかどうかは分からないよ。ごめんね」


『そうかー、残念。あっ……カグヤさん!』


 少女の声が聞こえる。


「分かってるよ。でも、学園内にあるんだ。無理かも」


『えー!そうなんですか……それは仕方ないですね』


「でも、可能性はあるよ」


『ほ、本当ですか!』


 少女の声は明るくなる。


「本当だよ。明日、連絡する。んじゃばい」


 カグヤは通話を終了してムメイを机に置いてベットに横になる。


「はー、だる」


 カグヤはため息をして瞼を閉じる。



 ドアからノックする音が聞こえて、カグヤは瞼を開ける。起き上がって背伸びをし、ドアを開けるとメビウスが呆れた表情をしていた。


「おっはー、どしたの?そんな顔して」


「今、何時だと思う?」


「今?あーっと……」


 時計を見ると午前五時になっている。カグヤは欠伸をしてメビウスを見て、首を傾げる。


「朝の五時だね。それで俺になにかな?」


「教師は朝の六時から会議があるのよ。今のあなたの職業はなんだっけ?」


「教師だよ?教師……早く準備しないと!」


 カグヤは慌ててカバンにペンやノートなどを入れる。着替えようとしたが、浴衣のまま寝ていたおかげで着替える必要はなく、冷蔵庫に入っていたオレンジジュースを一気飲みして研究室から出て、鍵を閉める。


「ごめんごめん。起こしてくれてありがとう」


「どういたしまして。次からは自分でちゃんと起きるようにしてね。私はあなたのお母さんじゃないから」


「気をつけるよ。だけど、六時からでしょ?そんなに早くなくてもいいと思うけど」


 メビウスと廊下を歩くカグヤは呑気に欠伸をする。まだ眠いのか、ふらふらしながら歩いている。そんなカグヤを見て不満そうな表情をするメビウス。


「それはそうだけど、遅刻するよりいいじゃない。時間はしっかり守らないとダメだから」


「あひゃー、真面目だね。俺と違って。んで、話変わるけど、会議ってどういう感じかな?堅苦しいのは嫌なんだけど……どうなのかな」


 階段を上がりながら、それを聞いたメビウスは難しい表情をする。


「うーん、分からない」


「そうかー、そうなのかー」


 そう会話していると、二階にある会議室に着いた。カグヤはうんざりした表情をして会議室のドアを見る。メビウスはカグヤと違い、深呼吸をして心を落ち着かせている。メビウスがドアをノックすると「どうぞ」と男の声が返ってくる。

 メビウスはカグヤを見るとカグヤは頷く。ドアを開けて会議室へと入る。


「おはようございます」


「おはようでーす」


 カグヤが緩い挨拶をするとメビウスがカグヤの足を軽く蹴る。カグヤはメビウスを無視して会議室を見渡す。

 会議室の中心には円形の大きなテーブルがあり、十個の椅子が並べられているだけで他にはなにもない。

 椅子には一人の男性教師が座っていた。


「カグヤ、しっかりしなさい」


「えー?分かった。けど、あの人だけだね。他の教師はどうしたんだろ」


 カグヤとメビウスは椅子に座って、他の教師が来るのを待つ。しかし、残り五分前になっても来る気配がない。


「あのー、失礼ですが、あなたは?俺はカグヤ•ユズリハです」


「あ、僕はロノ•アンテラです」


 男性教師の名前はロノ•アンテラ。カグヤが学生の頃は見たことのない男性教師だ。


(新しい教師かな?まあ、これが最初で最後の会話だけど)


 そんなことを思っていると六時になった。カグヤとメビウス、ロノの三人だけ会議室にいる。


「どうしたんでしょう?僕達三人以外、来ないですね」


「うーん、なにが……」


 その時、会議室のドアが開き、ウェルが姿を現す。走ってきたのか息が上がっている。


「ウェル先生、どしたんですか?」


 カグヤは頬杖をつき、ウェルに呑気に質問する。ウェルは息を整えて、三人に言う。


「会議はなしだ。フラエイ家に行くぞ。話は後でする」


「は、はい」


「分かりました。行くわよ、カグヤ」


「うっす。了解でーす」



 四人は馬車でフラエイ家の屋敷に移動している。馬車の中では、ウェルが話をしていた。メビウスとロノは真剣に聞いているのに対して、カグヤは外の景色を見ながら聞いていた。


「昨夜、誰かがフラエイ家の人間全員を殺害したらしい。フラエイ家に雇われていた四人の見回りの冒険者が今朝、見つけたようだ。そして、学園に報告してきた」


「そんなことが……」


「そう……ですか」


 メビウスは視線をカグヤに移すが、カグヤは視線を感じたのか、メビウスに視線を移して笑う。そして、再び外の景色に視線を移す。


(冒険者か……)


 カグヤはその冒険者をどうしようかと考えていると、馬車が止まる。どうやら、フラエイ家の屋敷に着いたようだ。四人は馬車から降りると、ノスと四人の冒険者がいてカグヤ達に振り返る。


「学園長、連れてきました」


「感謝する。うん?会議室には三人しかいなかったのか?他の者は?」


「この三人しかいませんでした」


「そうか……朝の会議はできるだけ参加するようにしているからな。全員が揃ったことはあまりなかった」


 フラエイ家の屋敷を見ながら、ノスは呟く。


「あのー、なんで俺達を呼んだんですか?学園長とウェル先生は先にここに来てたんですよね?」 


「ああ、俺は起きていて学園長が馬車に乗ろうとしていたから事情を聞いて俺も乗せてもらい、ここに来た。お前達を呼びに来たのは調査に協力してもらうためだ」


「ウェル先生……大変でしたね。ここに来て、もう一回学園に戻って俺達を呼んでここに来るなんて」


「大したことではない」


 それを聞いたカグヤは苦笑し、ムメイを取り出し、耳に当てる。カグヤ以外はムメイを珍しそうに見ている。


「カグヤ、それはなんだ?」


 ノスに手のひらを翳して、カグヤは通話をする。


「あっ、突然で悪いんだけどフラエイ家に来て。頼んだ」


「カグヤ?なにを……」


 メビウスはカグヤに聞こうとした瞬間、地面に青い魔法陣が出てきて、そこから一人の男性と一人の少女が姿を現した。


「やっほ、カグヤ君。なんの用かな?」


「おはようございます。カグヤさん……私、まだ眠いんですけど」


 男性は元気そうに、少女は眠そうにカグヤに挨拶をする。カグヤも「おはよう」と挨拶をする。


「カグヤ、その人達は?」


 メビウスがカグヤに聞く。ノスやウェル、ロノに冒険者四人は驚いたように男性と少女を見ている。


「えーっと、この人達は……」


「僕はルーク•アルカンス。ルークって呼んでいいよ」


「私は……エレメンです……よろしくです」


 二人が自己紹介すると、カグヤと二人以外が驚いた。

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