14 「フラエイ家の最期」
フラエイ家の屋敷の外。一人の男性と一人の少女は隠れながら移動する。見回りはいなく屋敷の扉の前には誰もいない。
「ねえねえ、どうする?扉をノックして開いた瞬間に屋敷内に入るのかな?隠密魔法を使ってさ」
小声で男性が少女に聞く。少女は男性の提案に頷く。
「いい案ですね。それにしましょう。分かれて行動して一人ずつ殺していく感じで」
「ふふん。僕ってば賢いな。君もそう思うよね?」
「はいはい、賢いですね」
少女はてきとうに返答して隠密魔法を使いながら扉の前へ移動する。男性も後を追うように隠密魔法を使い、移動する。
「こそこそしなくてもよかったんじゃないかな?見回りとかいないし」
「そうかもしれませんが一応です……準備はいいですか?」
扉の前に着き男性に聞く。男性は笑顔で頷く。少女は扉を二回叩く。
「どちら様でしょう……っ!?」
扉が開いた瞬間に二人は中に入り、男性は扉を開けたメイドの腹に剣を突き刺しメイドは倒れる。幸いなことに迎えに来たのは一人のメイドだけだった。
「僕は左からにするよ」
「分かりました。では」
それぞれ分かれて行動する。
男性は廊下を走りながら執事やメイドを探す。
「いるにはいるけど、あんまり雇ってないとかなのかな?」
男性は人や動物などの気配を察知できる。男性自身はなぜ、そんなことが簡単にできるのかを疑問に思い、過去に友人達に聞いた。友人達からの返答は「生まれつき」となっていた。他にも男性は自分のできることを聞いたが、全部「生まれつき」と返答された。
「よーし」
そんなことを考えて屋敷内にある部屋のドアを開けると、一人のメイドが掃除をしていた。
「ん?誰もいない……あれ?」
メイドは後ろを振り向いた瞬間、違和感を感じた。前には頭がない体が首から血を流して置かれている。そして、頭を誰かに掴まれている。
「じゃねー」
誰かの言葉を聞いてメイドは絶命した。男性は剣を軽く一振りして、メイドの頭を持ちながら廊下に出る。廊下を歩いていた執事がメイドの頭を見て青ざめながら後ずさる。執事から見れば、メイドの頭が意思を持って空中で動いているように見える。実際は男性が持っているだけで男性の姿は見えていない。
「ひっ!?なっ……なにがが……」
(おー?ちょいと遊ぶか)
執事は地面に尻もちをつき、全身が震えている。男性は執事の反応を楽しむことにした。
「わ……たし……の……からだ……は?」
「あああぁぁ……」
男性は声を低い女性の声に変えて、執事を怖がらせる。執事は限界に達したのか気絶した。
「じゃあね」
元の声に戻して執事の胸に剣を突き刺す。男性はメイドの頭を投げ捨てる。
「おい!なに……があ!?」
「来た来た」
前から来たワイドは執事の死体とメイドの頭を見て声を上げる。男性は一気に距離を詰め、ワイドの腹に剣を突き刺す。
「いいっ!?あああぁぁっ!いだいっ!いだいいぃぃ!」
ワイドは腹から血を出して膝をつく。腹を抑えて前を見るが、誰もいない。遠くから複数の足音が聞こえる。執事やメイド達が来た。
「ワイド様!がっ!?」
男性は執事の胴体に剣で一閃。執事は血を出しながら倒れる。男性は剣を振ることをやめずに集まってきた執事やメイド達を斬っていく。男性の後ろには複数の死体が広がっていてた。
「なんなんだよっ!うっ、俺が……なにしたっ!?あああっ!」
男性はワイドへ向かって歩き、もう一度腹に剣を突き刺す。さらに一回、もう一回と刺し続ける。
「ああああぁっ!ああっ!あっ!いっ!だっいぃ!」
ワイドの断末魔が屋敷内に響く。
「もういいや」
「だあっ!?」
男性はワイドの側頭部を蹴り、ワイドは倒れる。ワイドから声が聞こえず、死んだと判断した男性はワイドに興味をなくして廊下を歩く。
「残りは屋敷の主だけか」
男性は屋敷の主であるルアを探そうと歩いていると一人の女性が不安そうな表情をして歩いていた。
「なんでこんなに静かなの?」
「なんでだろうね」
男性は走り、迷うことなく女性の両目に指を差し込む。
「あああぁぁぁぁ!?いいだああいぃ!」
男性は指を抜き、女性が潰された両目部分を抑えて絶叫する姿を静かに見ている。男性は血がついた指を軽く振っていると後ろから気配を感じとり、振り向く。
「うわー」
少女が男性を見て、引いていた。
少女は廊下を歩いてメイドや執事を探している。
「こっちにはいないですね……うん?」
少女は誰かの断末魔を聞き取る。突然、周囲の扉が開きメイドや執事達が出てきた。その断末魔が聞こえた方にメイドや執事達が慌てて走っていった。
「なにごとでしょうか?」
「とにかく行くぞ」
少女の担当したところからは気配はない。あれで全員だったらしく殺そうとしたが、走っていく方向を見てやめることにした。
「こっちの人達も、あの人に任せましょう。私は屋敷の主ですね」
少女はルアを探す。歩いていると人の断末魔が聞こえてくる。男性が頑張って殺してくれている証拠だ。
「私も頑張らないとですね……えーっと」
少女は屋敷内を歩いていると、死体が見えてきて、血の匂いが嗅覚を刺激する。そして、奥には男性が指を軽く振っていて、一人の女性が両目部分を抑えて、そこから血を流しながら絶叫していた。
「うわー」
少女は男性の行為に引いた。男性はそんな少女を見て、不思議そうな表情をして首を傾げる。少女は死体を踏まないように男性に近づく。
「おつかれさまです」
「なんで君がここに?僕とは違う方向だったじゃないか」
「進んでいたらここに来た感じです……うるさいですね。静かにしてくださいよ」
「ああぁ?!いだあああぁい!いだいぃ!」
少女は女性の横腹に蹴りを入れると女性は横に吹っ飛び、壁に激突して痛みに悶える。少女は黙らせようと手を強く握り締め、女性の腹に拳を当てようとするが、男性が少女の腕を掴み首を横に振る。
「どうしました?」
「いやー、ね?彼女はこの状態でどのくらい生きれるかを見たくてさ。いいでしょ?」
「はいはい」
少女は呆れながら返事をする。男性は女性の両腕を持って立ちあがらせ、女性の背中を押しながら廊下を歩く。
「えあ?はあ……いだい……はあ……」
ルアは自室で本を読んでいると、断末魔が聞こえてきた。本を閉じて自室から出る。廊下を歩くが屋敷内は不気味なくらい静かで、誰もいない。
「……血の匂い?」
ルアは匂いがする方へ歩く。警戒しながら進んでいくと、一人の女性が歩いている。その女性は、ルアの妻であるミノ•フラエイ。
「ミノ、なにがあったか知らないか?」
「……」
「っ!?」
ルアはミノの姿を見ると絶句する。ミノは両目が潰されていてルアの声がする方へ顔を向けた。
「あなた……そこにいるの?」
両目が潰されたところから血を流しながら、よろよろとルアへ近づく。ルアはミノへ近づこうと震えながら歩くとミノの腹に穴ができて倒れた。
「ミノ!死ぬな……くそっ!誰なんだ!姿を現せ!人殺しが!」
「「……」」
ミノの死体を抱いて周りを見ながら叫ぶ。しかし、男性と少女は黙ったまま、ルアの目の前で見ている。
(目を潰す必要ってありましたか?)
(僕の趣味だよ。楽に死なせるよりも痛みに悶えながら死なせるのが好きなんだ。言ってなかったっけ?)
(初耳です。いい趣味ですね)
(ありがとう!)
ルアにバレないように念話をしている。少女はうんざりしたように言うが、男性は純粋に喜ぶ。
「どこにいる!出てこい!どうした?びびっているのか?」
(私、あなたについてきただけなんですかね。待ってたり、歩いているだけだったので)
(この人は君に任せる。それで機嫌良くなる?)
男性は少女を見ると、頷いていた。そして、少女は手を強く握り締めて拳をルアに近づき、ルアの顔面に拳を思いっきり当てる。
「……」
ルアの顔面は破裂して血などが飛び散り、顎から上がなくなって倒れる。少女は手を軽く振り、ため息をし、隠密魔法を解く。男性も同じく隠密魔法を解く。
「終わったー、カグヤ君に報告しないと」
「そうですね」
男性と少女は屋敷から出ていき、男性が遠く離れた場所からムメイを使ってカグヤに報告した。
「終わったよ」
『ご苦労様。あんがとね』