11 「ワイドの計画」
ワイドは家の自室で椅子に座り頭を抱えながら、学園で起きたことを思い出す。突然、剣技の担当教師となった人物、カグヤ。学園では目立つ服装でやる気のない雰囲気を出していた。
手合わせのときがワイドにとっては一番の幸せだ。自分よりも弱い人間を叩きのめす。
だが、今日は違った。ワイドがカグヤに木刀で叩きのめされた。木刀を手放したあとは顔面に木刀を叩かれた。身体強化の魔法を使っても骨折一歩手前だった。普通ならそこで終わりだったはずなのだが、ウェルは終わりの合図をしなかった。
身体強化で体は頑丈になっていたが、それでも痛かった。カグヤは魔法を使わずに黙々と木刀で叩いた。魔法が解けた後、骨が折れて意識がなくなるまで叩かれた。
「絶対に許さんっ!」
ワイドの父である、ルア・フラエイの自室へ向かう。ドアをノックし、自分の名前を言うと中から「入れ」と言われて入る。
「父上、お願いがありまして……」
「なんだ?」
本を読みながらルアはワイドの話を聞く。
「今日、学園に来た男、カグヤという人物を調べてほしいのですが」
「なぜだ?家名は?」
「学園での暴力を受けまして。家名は……名乗らなかったので分かりません」
本が閉じる音がする。ルアを見ると険しい表情をしている。
「分かった。従者にカグヤという男を調べさせる。フラエイ家を相手にしたことを後悔させる」
「ありがとうございます。父上」
ワイドはルアの部屋から出て邪悪な笑みを浮かべながら自室へと向かう。
「これであいつは終わりだ」
×××
数分後、一人の男、従者がルアにカグヤの情報を報告した。
「カグヤ・ユズリハ。平民であり、クレイナル学園を退学。それから二年後、教師になる。以上でございます」
「気になる部分はあるが、それだけの情報で十分だ。今夜、ユズリハ家を滅ぼす。頼んだぞ」
「分かりました。それでは」
自室に一人になったルアは腕を組み瞼を閉じる。
(ふっ、カグヤ・ユズリハよ。今日がお前の命日だ)
×××
暗闇の外で従者は不思議に思った。カグヤの情報を探すために屋敷の外に出たら一人の男性がいた。特徴は茶髪で茶色の瞳だ。男性は従者に近づき、カグヤの情報を言った。瞬きをしたら男性はそこにいなかった。
(待っていたかのようだったが……まあ、いい)
従者の近くに三人の男性達が来る。
「報酬が金貨十枚は本当か?」
「ああ、目的を達成したら報酬を渡す」
「それならいい」
三人組のリーダーは二人に視線を向けると二人は頷く。この三人組は冒険者であり、汚れ仕事もしている。
「行くぞ」
暗闇の中、カグヤの家へと向かう従者と三人。人は誰一人いない。不気味なくらいに。違和感を感じて従者は止まり周辺を見渡す。
「どうした?」
「俺達以外、誰もいない。おかしいとは思わないか?」
「たしかに……道中、誰もいなかった。まだ、夜の八時。街灯は光っている」
「俺だけか?同じ所を走っていたような感覚がする。目的地に辿り着くことができない」
その時、足音が聞こえる。四人は足音が聞こえた方に振り向き、身につけていた剣を抜刀して警戒する。足音は聞こえなくなり、四人の前に姿を現した。そこにいたのは従者にカグヤの情報を言った男性だった。
「貴様は!あのときの」
「ははっ!早い再会だね。僕の情報は役に立ったかな?」
男性は嬉しそうな表情をしている。
「お前、何者だ?」
「僕?そうだねー、なんだろう?難しい質問するね……うん?大丈夫かな?」
男性は四人を心配している。四人は気づく。男性に会ってから体が震えている。
「手応えがありそうなのは……いないか。残念だ」
四人を見て肩をすくめる男性。攻撃しようにも体は震えていてまともに剣を振れない。男性は呑気に周りを見渡しているが隙がない。
「言っておいた方がいいかな。君達はカグヤ君の家に行けないよ。空間を創ったからね」
「なにを言っている……空間を創った?そんなことできるわけないだろう!」
男性は難しい表情を浮かべて首を傾げる。
「信じてもらえないかー、そんなに変なことしてる?僕の友達は感心してたよ。あのときは嬉しかった」
思い出に浸っている男性は嬉しそうに笑っている。
「さて、早く終わらせるか。少しは抗ってね」
男性は身につけていた剣を抜刀し、笑顔で四人を見て剣を構える。従者はやけになって男性へ斬りかかる。
「うあああーーーっ!」
「つまんないの」
一人の男性と四人の戦いが始まる。
×××
一人の少女がカグヤの家の近くにある公園のベンチに座っていた。特徴は青い髪、黄色の瞳。誰もいない公園で退屈そうに呟く。
「早く帰って寝たいですねー」