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10 「退学してからの出来事」

 カグヤの研究室。授業が終わり、カグヤは寝ようとしたがドアから音が鳴る。


「寝たいのに。仕方ないなー」


 足音で分かる。彼女だろう。ドアを開けてノックした人物を見る。


「やっぱり君か。俺、寝たいんだけど?」


 不機嫌そうに言い放ち、それを聞いて申し訳なさそうな表情をするメビウスがいた。


「ごめんって。疲れてるのは分かるけど、聞きたいことがあるの。いいかしら?」


「いいけど、授業の方はいいの?俺はもう終わったからさ」


「私もないの。今日は二限の授業だけを担当することになってるから」


「じゃ、入っていいよ」


「ありがとう」


 メビウスは研究室に入ってソファに座る。なにか飲み物でも準備しようかと冷蔵庫を開けたが、なにも入っていなかった。


「あちゃー、ごめんよ。冷蔵庫の中にはなにもなかった。飲み物とか用意したかったんだけど……」


「気にしないで。大丈夫よ」


「それならいいや。んで、聞きたいことって?」


 カグヤもソファに座る。


「あなたは退学した後、なにをしてたの?」


「え?あーね。そうだね。パパの手伝いで狩りとか散歩……あとは寝てたかな。うん」


「本当にそれだけ?」 


 真剣な表情をして聞いてくるメビウスに困惑する。()()()()()は話さないように他の出来事を思い出していると一つだけあった。


「そういえば、強盗が来たんだ。あのときは驚いたよ」


「強盗……そうなのね」


 あまり驚かないメビウスを怪しむカグヤ。普通なら心配する出来事だ。


「これは予想なんだけど、あの強盗はメビウスが作ったんじゃないかな?君ならできそうなことだけど」


「そういえば、言ってなかったわね。あの強盗は私が作ったの。驚いたでしょ」


 あっさりと白状し、ドヤ顔のメビウスに呆れるカグヤ。


「普通のこと言うけど、友達の家に強盗を行かせるのはダメなんだよ。俺だからよかったけどさ……待って、なんで強盗を?」


 今更気づく。なぜ、カグヤの家に強盗を行かせたのか。


「カグヤの状況を確認したかったの。退学してから、どこか変わってないか。どこまでダメになってるか」


「それなら、君が直接来ればよかったのに」


 最後の言葉に文句を言おうとしたが、話が進まなくなると思い、我慢する。


「学園長に頼まれたの。だけど、あの日は担当しないといけない教科があって。てきとうに人を作って、てきとうな設定にしてあなたの家に行かせて状況確認って感じ」


「さらっとすごいこと言ってんね。普通の人にはできないことをするなんて」


「あなたに言われたくないわよ。魔法使わずに気配消せるなんてこと…… 」


「暗殺者や忍者とかならできるんじゃないかな」


 メビウスはカグヤに呆れて、カグヤはメビウスを称賛し、自分以外にも魔法を使わずに気配を消せることができる存在をてきとうに言う。


「たしかにそうかもしれないけど……」


「はいはい。もういいかな?寝たいんだ。もう話すことはないよ」


 強い眠気がカグヤを襲ってきていて、うとうとする。メビウスはこれ以上聞くのを諦めて立ち上がる。


「まだ、ありそうだけど……悪かったわ。ゆっくり休んで。おやすみ」 


「おやすみー」


 メビウスが出ていったのを見てため息をする。 


「また聞かれそうだけど、今は睡眠睡眠。だっ!」


 ベットに飛び込んで瞼を閉じる。 



 学園長室ではノスとウェルが会話をしていた。


「骨を数本、折られて気絶。その後、アリス様が治癒魔法を使用し、回復。以上です」


「そうか。カグヤとアリス様には感謝しなくてはいけないな」


 瞼を閉じて安堵するノス。


「カグヤは大丈夫でしょうか?」


「なぜ、カグヤを心配する?大丈夫だろう」


 ウェルの質問に疑問を浮かべるノス。


「それならいいのですが……そうですね。心配する必要はないですね。考えすぎでした」


 ウェルは立ち上がりノスに頭を下げ、学園長室から出る。不安を抱きながら廊下を歩く。


(ユズリハ家に被害がなければいいのだが……フラエイ家はどう動くのか。今回の件でなにかをする可能性がある。カグヤに言ったほうがいいだろうか)


 難しい表情を浮かべながら考えていると、「カグヤ」と書かれている研究室を見つけた。


(一応、言っておくか)


 ドアを開けようとしたが、ドアが開いてカグヤが不機嫌そうな表情をしてウェルを見る。


「なんですか?やっと眠れると思ったのに」


「あ、ああ、すまないな。言っておきたいことがあってな」


「あーっと、ワイド関連のことですか?」


「そうだ。フラエイ家が……」


 カグヤが手のひらをウェルの顔の前に出す。


「分かってます。なにかする可能性があるんですよね?大丈夫ですよ」


「なにが大丈夫なんだ?」


「ウェル先生は心配しすぎです。俺より、生徒達のことを考えないとダメじゃないですか」 


 カグヤは欠伸をしながらドアを閉める。


「ふっ、そうだな。お前より生徒達だな」


 ウェルは自分に呆れる。気に入っている人物の心配より教師としての役割を果たす。ウェルは自分の研究室へと向かった。

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