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1986年の夏の思い出

作者: 田波 霞一

※この物語は、ほぼ実話に基づいていますが、登場人物や場所については一部変更を加えており、実在の人物や団体との関係はありません。


※注意:以前の投稿内容に本質は変わりませんが、一部修正を加えました。(4/27)

・冒頭部分を少しアレンジし、キャラクターの心理描写を加えました。

・脱がせる描写を追加し、場面の緊迫感を高めるようにしました。

1986年の夏、僕は高校1年だった。田んぼが広がる田舎町の高校。まだ土曜日にも授業があって、午前中だけで下校するのが日常だった。


その後、友達は部活に急いで行ったり、バイクで帰ったり、みんなそれぞれ忙しそうに校門を出て行った。どこかで誰かが大きな声で名前を呼んでいた気がしたが、僕は部活に入っていたけど、たまたま今日は休みだったので、いつものように自転車通学で、買いたい本があって近くのコンビニまで寄ろうとしたときだった。


夏の陽射しが照りつける中、汗だくになりながらペダルを漕ぎ、コンビニの前に着いたとき、目に入った人影は、タバコを燻らせる姿だった。これは関わりたくないと感じた。


最初は気にも留めなかったが、制服の着こなしと放つオーラに、ただ者ではないと感じた。そう――スケバンと呼ばれた恐れ多い、3年の天城アケミ先輩に、いきなり声をかけられた。


「おいちょっと、顔貸しな」


鋭い目つきに、僕は一瞬ビビったが、思い当たる節もなく、なんで僕なんだろうと戸惑いながらも、ついていった。暴力的なことはなく、口が悪い程度。コンビニを出て、しばらく無言で彼女の後ろに自転車を押しながら歩いた。


真夏の午後、日差しは容赦なく照りつけ、アスファルトからの熱気がむっと立ち上ってきた。じわりと額に汗が滲み、夏のワイシャツの背中にもじっとりとした感触が広がってきた。汗ばむシャツが肌に貼りついて、気持ち悪さと暑さでぼんやりしてくる。田舎道には車も少なく、左右に広がる田んぼの稲が風に揺れ、蝉の声がずっと鳴り響いていた。学校から離れるほどに、周囲の音が遠のいていくようだった。


時折、前を歩く彼女のポニーテールが風に揺れ、その背中のセーラー服が汗で肌に張りついていた。薄い布越しに、よく見るとブラジャーのヒモが透けて見えて、僕はどこへ向かっているのかもわからず、ただその背中を追って歩いた。そして、たどり着いたのは、なんと彼女の家だった。


「おう上がりなよ」


「お・・・お邪魔します」


玄関で靴を脱ぎながら、どこか落ち着かない気分だった。知らない女の子、ましてやあのスケバンの家にあがるなんて、恐れ多いにもほどがある。こんな経験、もちろん初めてだった。廊下はほんのりと涼しくて、外の熱気が嘘のようだった。案内されるまま階段を上がり、彼女の部屋の前で一瞬、彼女が振り返る。


「まぁ、汚いけど気にすんなよ」


その言葉と同時にドアが開かれ、僕は一歩、彼女のプライベートに踏み込んだ。

家の外観は普通だったが、彼女の部屋はちょっと意外だった。


彼女はベッドに座り、少し横を向きながらこちらを見ていた。僕は立ちっぱなしで、部屋の中を無意識に見渡していた。どこか気まずい空気が漂っていて、彼女の態度にも少し遠慮があるように感じた。


部屋の隅にはカレンダーや『仁義なき戦い』のポスターが貼られていて、少女らしさもなければ、趣味らしい趣味も見えなかった。彼女が座っているベッドの上で、僕は無言で立っていた。


「あたいのこと、何者か知ってるか?」


「え、あ・・・えっと・・・・」


突然のことで驚いていたが、どこかで聞いたことのある噂を思い出す。


「三年生の・・・天城アケミ先輩・・・ですよね?」


「ああ、それもそうだが……他にもあるやろ?」


一瞬考え込む。何を言えば正解なのかわからない。

不良少女であることは知っていたが、まさかあの“スケバン”だとは思っていなかった。


「不良の方ですよね。えっと、海城番長と対立してるとか……」


彼女はふっと軽く笑った。


「なんだ、知ってるのか。抜かりねぇな」


意外にも、僕たちは普通に会話をしていた。怖いとか近寄りがたいとか、そんな印象とはまるで違って、人としてきちんと向き合っている感じがした。


「お前さ、耳悪いんだろ」


彼女は少し身を乗り出すようにして、真剣な表情で切り出した。僕は一瞬ドキッとした。

僕の耳は少し難があって、人より聞き取りづらい。そんなこと、なぜ彼女が知ってるのかと不思議だったが、話を聞くと、耳の悪い親戚の子がいて、その子とどう接すればいいのか知りたかったらしい。


「別に、普通に話せばいいんすよ。口をはっきりして声が届けば、あとは伝える気持ちっす」


僕はそう答えた。紙に書いたり、目を見て話したり。紙のやり取りでも十分だと伝えると、彼女はふうんと頷いた。


「なんだ簡単じゃないか」


「そう簡単に見えても意外と難しいですよ。何事も根気よく続けることだね。」


と僕は言いつつ、まだ立っていた。彼女の部屋の空気は妙に静かで、僕の心臓が少し速くなっているのを感じる。背の高い僕は、この距離から彼女のセーラー服のすき間を見てしまった。つい、目がその先に引き寄せられてしまう。ブラジャーの肩ヒモがズレて微かに見える胸の谷間、意識がそこに集中してしまった。

視線を感じ、ふと彼女に目をやると、その鋭い目が僕を見つめていた。その瞬間、僕は自分の顔が真っ赤になっているのを感じた。


「あ、あの…すいません!」


目を逸らすと、少し焦ったような声で言った。


「おい、どこ見てんだよ」


その言葉が耳に入った途端、胸がドキドキと高鳴るのを感じた。思わず、顔を真っ赤にしながら言い訳をしようとするが、言葉が出ない。


「気になるんか? 見たいんか?」


彼女は僕がその場に立っているのを見ると、まるで何かを試すかのようにニヤリと笑った。その笑みに、舐め回すような視線が重なり、僕の心拍は一気に上がった。

どうすればいいのかわからず、ただその場で固まっていた僕を前に、彼女はまるで当然のようにセーラー服の上着サイドにあるチャックに手をかけた。スケバンらしいとでも言うべきか、迷いのない動作だった。挑発的に、しかしどこか寂しげにも見える仕草で、彼女はチャックを下ろし上着を脱ぎ始めた。


その光景に、僕は言葉も出せず、ただ呆然と立ち尽くしていた。最初に彼女がセーラー服の上着を脱いだとき、彼女の腕に手を回し、少し恥じらう様子が見えた。その後、ブラジャーを外し、胸をそっと出す。最初は緊張しているように見えたが、次第にその姿に目が釘付けになっていった。白くやわらかそうな肌に、小ぶりでピンクがかった乳首が映えて、まるで彫刻のようだった。


「ほらよ。どうだ、見たかったんだろ?あたいの自慢なんだよ ……って、自分で言うなって感じやな」


照れ笑いを浮かべたその顔に、不思議な色気があった。小さめながらも、ツンと上を向いたおわん型の形が整っていて、息を呑むほどだった。


「でも、あんまジロジロ見んなよ。……ハズいんで……」


彼女の頬にはほんのり紅葉しているのがわかる。ただ心なしか腕が少し震えていた。

目の前に広がる鍛えられた美しい裸体。それを見た瞬間、何も考えられなくなり、ただその姿に見とれてしまっていた。期待と不安が入り混じり、胸の中で渦巻く感情が僕を圧倒する。


しばらくその姿に目を奪われていたが、我に返った時、思わず彼女に手を伸ばしていた。自分でも驚くほど、無意識のうちに彼女に寄り添うようにしていた。


心臓が高鳴り、手が震えながらも、僕はその手で彼女のスカートにそっと触れた。その瞬間、何もかもが静止したような気がした。


その先のことは、断片的な記憶としてしか残っていなかった。何が起きたのか、どうしていたのか――あとはただぼんやりとした感覚だけが残っている。彼女の吐息、肌の温もり、私たちを包む薄暗い光。


時には彼女から怒鳴られたり、恥ずかしがったり――あのスケバンだよ?と思えないくらい乙女な一面を見せてくれた。


そしてその夜、僕は彼女と、当時では考えられない"禁断の一線"を越えた。


高校では普通あり得ないことだった。田舎の学校では、男女が話してるだけで噂になる。ましてやスケバンの先輩と、そんな関係になるなんて、誰も想像すらしなかった。都会とは違って、男子と女子が一緒にいるのが当たり前ではない世界だった。


あれから一週間ほど経った頃だろうか。あの夜のことが頭から離れず、どうしても彼女に会いたくなっていた。


勇気を振り絞って校舎裏へ――スケバンたちの"聖域"として知られるその場所に足を踏み入れると、周囲の異様な雰囲気が一気に押し寄せてきた。男子禁制とも囁かれるその場所で、目立たぬように歩くうち、仲間たちの視線が僕に集まるのを感じる。


仲間たちの冷たい視線を浴びながら、何とか先輩の元に近づくと、軽く頷いて挨拶を交わす。


「おはようございます、先輩。」


先輩は僕を一瞥(いちべつ)したが、特に気にした様子もなく、僕は少し安心してから、話を切り出す。


「すみません、ちょっと話が…」


周りの視線を感じつつも、思い切って耳元に近づけ、小声で訊いた。


「この前の…先輩も、初めてだったんすか?」


アケミ先輩は一瞬で目を見開き、肩をビシッと突いてきた。


「バカッ! なに言ってんだよ……!」


声が裏返り、頬が赤くなっていた。


「誰にも言ったら、マジで殺すからな……!」


そのとき、彼女が急にそっと僕の耳元で囁いた。


「……ほんと、マジで言うなよ。こいつらに聞かれたら、あたいの立場が……」


その直後、彼女はぱっと距離を取り、周囲を気にするように目を泳がせた。


「な、なんか変なこと言ってないし! ぜんっぜん関係ない話だからなっ!」


それでも仲間たちはこちらを見ながらクスクスと笑っている。


「おう、うちのボスに何したんか?」

「あれぇ、出来てたんですか?」

「もしかしてアレか?」


なんて容赦のないことを言ってくるが、どこか悪意ではなく、茶化すような笑いが混じっていた。


「……もぉ、あんたのせいやろ……」と、唇を尖らせる彼女。


その顔は、怖さなんて微塵もなく、ただの照れてる普通の女の子だった。


頬を赤らめ、可愛く怒るその姿に、僕は少しだけ笑ってしまった。

あの瞬間、彼女はスケバンじゃなく、ただの普通の女の子に見えた。

今でも、あの夏の日のことを思い出すと、胸が少しだけ熱くなる。


時は流れ、2024年の夏の夜。

何気なく開いた地元紙のウェブ版――「おくやみ欄」に、見覚えのある名前を見つけた。

「天城アケミ」ではなく、別の姓。でも、下の名前に確かな記憶が揺れた。


――アケミ(56歳)。


交通事故とだけ書かれていた。

その下に、「竹下工業 社長夫人」とあるのを見て、少しだけ驚いた。

結婚して、家庭を持って、会社を切り盛りする夫を支えていたのだろう。

きっと、忙しくて、時には喧嘩もして、それでも笑って暮らしていたに違いない。


僕も今では家庭があって、子どももいる。

お互い、すっかり大人になって、それぞれの道を選んで、歩んできた。


でも、あの夏の思い出だけは、僕の心に、永遠に焼き付いている。

忘れようとしても、ふとした瞬間に蘇る。

セーラー服にポニーテール、少し不器用で、でもどこか眩しかったスケバンの彼女。


たった一度の、ひと夏の恋。


それは決して"今の幸せ"を揺るがすものじゃないけれど、

心の中では、そっと静かに、今も息づいている。


彼女に出会えて、よかった。

あの夏があったから、今の僕がいる――


そして、こう思う。

あれが、最高の恋だった。


1986年の夏。

この物語は、まだ携帯電話も普及していないアナログな時代の中で繰り広げられる一夏の青春です。前年1985年には、つくば科学万博が開催され、未来のテクノロジーが一大イベントとして話題を呼びました。その頃、日本中が「科学の力」や「未来」の可能性に胸を躍らせていました。そんな中で、僕たちの日常はまだまだデジタル化とは無縁で、どこか懐かしい手触りを持つ時代でした。


万博に行った記憶がある方もいれば、まだ小さかったので、伝え聞いているだけという方もいるかもしれません。しかし、この時代を振り返ると、科学と人間の繋がり、そして手作りの温かさが、今の時代とどうしても比べてしまいます。それもまた、1986年の夏という背景を持った物語の中で描いてみたかったことの一つです。


この物語の中で、若き日々の不確かな愛や冒険が少しでも心に響けば嬉しいです。そして、1986年の夏の記憶を持つ方々には、懐かしさとともに温かな思い出として、そうでない方々には当時の空気を少しでも感じ取っていただければと思います。


今回の修正に関して、描写に関する一部を修正しました。

気になる点がございましたら連絡して頂けると幸いです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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