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エンツォールの宝石姫  作者: ゆりあ
〈蒼玉の宝石姫〉ラウレンティア
1/7

前編

大国・シェインジェル王国。


初代国王の第三王子が婿入りされた

王族のひとつ、エンツォール辺境伯家。


エンツォール辺境伯夫妻の元に、美しい

艶やかな黒い長髪にサファイアのような

瞳を持つご息女が誕生いたしました。


〈蒼玉の宝石姫〉ラウレンティア・フォン・

シーテレータ・エンツォール


そう呼ばれている彼女こそ、

このエンツォール辺境伯家の一人娘です。





わたくしは、ラウレンティア。


海の街、国防の要、エンツォール辺境伯家の

一人娘として生まれた者です。


本来ならば、辺境騎士団に入隊して、女騎士

として育てたかったかもしれません。

しかし、両親は、一人娘のわたくしを大切に

大切に箱入り娘として育てて下さいました。


この度、わたくしに国王陛下とお父様の命で

婚約者が出来ました。


お相手は、この王国の王弟殿下だそうです。


そのようなお方を、わたくしの婿として

エンツォール辺境伯家に婿養子として

迎えることとなりました。





「貴女が

ラウレンティアですか?」


「はい、そうでございます。」


「私は、アルディオン・フォン・ラーゼル・

シェインジェルだ。これから、宜しく頼む。」


つまり、このお方、わたくしの婚約者となる

噂の〈黒曜石の君〉アルディオン王弟殿下…!


黒髪に黒曜石のような瞳を持つ、王都騎士団

騎士団長の補佐官だとお聞きしていますが、

噂以上に、美しい瞳の持ち主ですね。


「はい、アルディオン王弟殿下

こちらこそ、宜しくお願い致します。

わたくしは、エンツォール辺境伯家の一人娘

ラウレンティア・フォン・シーテレータ・

エンツォールと申します。」


「実は、ケイリスから聞いています。

〈蒼玉の宝石姫〉という呼び名に相応しい

くらいに美しく、優しい従妹だと。」


「まあ!そうなのですか?

ケイリスお兄様が、そのようなことを?」


ケイリスお兄様は、シーテレータ侯爵家の

嫡男にあたる、わたくしの母方の従兄です。


え、ケイリスお兄様!そのような話をこの

アルディオン王弟殿下にしたのですか?


恥ずかしいのですが………


「そういえば、ケイリースお兄様は、王都の

騎士団所属………! 同僚なのですか?」


「ええ、同僚です。べた褒めでしたよ。

本当に、サファイアだ。噂以上に美しい

瞳の持ち主ですね。」


「あら、アルディオン様も美しい黒曜石の

瞳をお持ちです。先代王妃様に似ています。

とても、綺麗ですわ。」


「貴女は、母上に、会ったことが?」


「はい、先代国王陛下と共に視察に来られ

先代王妃様にご挨拶致しました。」


「なるほど………確かに、貴女は、母上が

お気に入りにしそうなご令嬢のようだね。」


先代国王陛下の妃、セレスティーネ王妃は、

南の島国・国王陛下の異母妹。


目の前にいるアルディオン王弟殿下と同じ

黒曜石のような瞳を持つ〈黒曜の姫君〉だ。


「ラウレンティア

私の妻になってくれますか?」


「はい、わたくしで宜しいのでしたら

どうぞ、宜しくお願い致します。」






「れてぃーな、です。」


「陛下からお聞きしているかと思いますが、

こちらが、私達の養女、レティーナです。」


実は、わたくしには親族から引き取っている

孤児院出身の養女、レティーナがいます。


彼女は、まだ5歳児。

アルバ伯爵家の長女として誕生しましたが、

様々な家庭事情から、3歳頃に、孤児院に

預けられて、親族である私たち辺境伯家に

引き取られることになりました。


そのことを知った上で、

アルディオン様は、エンツォール辺境伯家に

婿入りして下さることになりました。

なんて、お優しいのでしょうか。


「ああ、レティーナ

私は、君の養父(ちち)、お養父様となる男、

アルディオンだ。宜しく頼む。」


「あるでぃおん、おとうさま………?」


「ああ、お養父様だ。」








可愛い養女

レティーナが寝静まった頃です。


私たちは、ゆっくりと話し合いする機会を

増やすことといたしました。


「レティーナは、可愛いな。

あの子の瞳は、まるで、ルビーのようだ。」


「あの子の御生母は、ルーナリーベ王国の

伯爵令嬢で。お母様に似たのでしょう。」


レティーナは、私たちと同じ黒髪ですが、

美しいルビーのように真っ赤な瞳なのです。


ルーナリーベ王国の王族は、赤い瞳が特徴。


どうやら、レティーナのお母様は、お会い

したことはございませんが、かの国の王族の

末裔、だったようですね。


「なるほど、〈蒼玉の宝石姫〉の養女だから

〈紅玉の宝石姫〉というのは、いかがかな?

親子揃って、宝石のような瞳というのは

お揃いで良いものだね?ラウレンティア。」


「まあ!ふふふ。ありがとうございます!」


私たちは、政略結婚をする為の婚約者同士。


会ったばかりのはずですが、不思議と話を

していて、落ち着くような気がします。






婚約者が決まって、数ヶ月後のこと。


ついに、エンツォール辺境伯家の一人娘の

わたくしに、あのアルディオン王弟殿下が

婿入りすることになりました。


と同時に、レティーナが、正式に、私たち

次期辺境伯夫妻の養女となりました。


「ラウレンティア、レティーナ、これからは

夫婦として、親子として、宜しく頼む。」


「はい、アルディオン様と夫婦になれたこと

レティーナの養母になれたこと、この上なく

嬉しく思います。宜しくお願いしますね。」


「あるでぃおんおとうさま、らうれんてぃあ

おかあさま、よろしくおねがいします。」


「ふふふ。可愛い娘が出来て、嬉しいわ。」







アルディオン王弟殿下を

エンツォール辺境伯家の婿として迎えて

レティーナが養女となった日から、早くも

5年の月日が経った頃のことです。


可愛い養女、レティーナは、さらにさらに

美しく育ちまして、10歳になりました。


アルディオン様と私の間には、3歳になる

可愛い息子、リオネールが誕生しました。

私と同じサファイアの瞳を持つ子です。


「あねうえ〜 いっしょに、あそぼ〜?」


「ええ、リオネール、一緒に遊びましょう。

今日は、何をして遊びたいのかしら?」


「うーん……何が良いかな?かくれんぼ!」


レティーナとリオネールの2人は、

すでに、レティーナが養女だということを

知っております。


有り難いことに、本当の姉弟のように

仲良く育ちました。


「ふふふ。見ていて、癒されますね。」


「ああ、そうだね。可愛い娘と

息子をありがとう。ラウレンティア。」


「こちらこそ、ありがとうございます。

アルディオン様。」

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