怖いものからは目を背けよう
………………はてさて俺が先刻まで戦っていた弱そうな見た目のゴブリン君達は何処に消えたんでしょうかね?
あとついでに言うとコレは誰の主導で建設したんだろうね?
…………なんだろう久し振りに全力で現実逃避をしたくなってきた
なんせ恐らく外にいる人外魔境達は俺が戦っていたゴブリン達の進化した姿だと本能的にわかる
【統率者】は恐らく下の者に能力やレベルを無制限で配布するタイプのサポートスキル
此処には魔力の繋がりなど必要なく恐らく必要なのは「魂の繋がり」
目に見えないからこそ絶大な効力を発する
これが他の国の領主だったんならある意味では都合がよかったかもしれない
けどな………けどな
「これ以上縛りプレイはキツイって!」
ただでさえ俺は速度と攻撃力が不足していると感じていたのにソコに更にレベル差が乗っかってくるとなると俺は常に苦戦を強いられていつかは負けてしまうのでは?という恐怖と戦う羽目となる
というか毎回ソレと戦うのが大変なのに此処に他人の世話が乗っかってくるのか?
これ解除とかできない?
〈恐らく一度対象に取られれば二度と魂から離れないでしょう〉
ひどくね?理不尽が過ぎるくない?どんな理不尽ゲーだってもう少し救済があるよ?
「あ、お兄おきたんだ」
「よお妹よ……朝起きたら世界が百八十度大回転しててお兄ちゃんにはもう何が何だか把握し来れないよ」
「まあ………その気持ちはわからなくもないよ」
今回は珍しく妹も何処か困惑気味に話しているのでいつも何手先までも見通して不敵な笑みをたたえている妹にしては珍しいなと感じた
「ねえお兄はどこまで覚えてる?ここに来て長たちと話した後」
「……………そうだな、悪いけど長たちに『格名』を授けてからは一瞬で脳がシャットダウンしたようになって………正直に言うと何も知らない」
「………そう………今回はその覚えてない部分が大事なんだけどね」
「?」
今回は本当に珍しく気苦労の多い顔をしながらため息を吐いている妹を見て
あ………今回は本当に大変な奴だと悟ってしまった
何せ妹が何か面倒案件でため息を吐いていたことなど数回しかなく
そしてそれら全ては例外なく必ず面倒くさい案件になっているからである
「………半分くらい予想はついているんだけど話してくれ…………」
「わかった…………
まず今回お兄が気絶した後に巻き起こったことを最初に簡潔に説明すると『種族進化』
種族進化っていうのは個人の進化で受け止めるには大きすぎる能力で自身をパンクさせないために
薄い魂の繋がりを利用してエネルギーを各地にいる同族の元に送り届けるの
コレをすることによって万年進化できなかった仲間が進化できるってメリットはあるけども
問題は此処から「種族進化」は死ぬほど名付け親からエネルギーを奪う
簡単に言えばジャングルの中にある空洞樹
あれは一本の大木のもとに複数の寄生樹が育つことによって元の大木が完全に消えちゃうことを意味するんだけど
これはその比じゃない
本来ならばその存在ごと消え去っていても何ら不思議のない状態だったのにお兄はピンピンしてるんだから驚きだよ
しかも…………今回問題なのは、種族進化が更に進化を遂げたこと
本来種族進化ってのは「種族全体が一回進化する」というのが定例だったのに
今回お兄はどれだけ絞られても尽きない恐怖の底なしエネルギーを見せつけてくれたので
全員が最終進化形態に入っちゃったんだよね………けど肝心の一番上が本来もっと進化できたはずなのに此処で終わりってのを考えると少し不憫だよね」
「……マジかよ」
最終的に喉の奥から絞り出せたのはその一言だけであったが俺にとっては全ての感情をないまぜにした
「マジかよ」であった
本来ならば此処までレベルを強奪されないという「種族進化」
しかし彼らは異常な進化の力を見せたらしい心当たりがあるかないかで問われると
確実にある恐らくはレベルと【命の源泉】の無限に溢れ出る魂の力のダブルコンボによって
本来は到達しない最終進化段階にまで足を踏み抜いてしまったのだろう
そして今回ほど【命の源泉】という能力を恨んだことはない
まあ……結局は自分で何とかしろって話だよな
「……まあ、今回のこれは事故だったし俺の確認不足も原因だから自業自得だろ」
「まあ…………そうなんだけど、」
「ん?どうした?」
珍しく妹が口籠っているのでキョトンとした顔で小首を傾げていると
「…………お兄のその無限のエネルギーって何処からか来てるの?」
「ん?ああ~…………それは」
「それに前から気になってたんだけどさ、当たり前のように傷を修復してるけどあれも何なの?この世界は魔法とかのルールが凄い緩いって思ってたけど回復魔法だけは信じられないくらいルールが厳しくて一時期私ですら入手を諦めたんだよ!」
あ~なるほど………確かにそれは凄い難しいわ
俺も前世の知識だからって軽く流してたけど回復魔法をこっちで使える人って大分壊れてるんだよね
何せ此方での回復魔法ってのは…簡単に言うと回復魔法ドーン!
じゃなくて体の構造を一々把握してムカつくくらいに繊細に魔法を行使しなければ回復魔法は扱えない
恐らく俺が魔法を使えなくなくなっていなくても回復魔法は確実に使えないだろう
何せ体の構造なんて全く使えないと確信がある
何せ体の構造というのは現代日本においては明瞭に記載されており細胞の数から筋肉のつき方臓器の配置や血管の通り方まで複雑に記されているが
全部を理解することなど不可能なのだ
しかし【命の源泉】はソレら全ての認識を覆して自動的に修復するのだ
原理的には漫画とかでよく表記されている不死や修復の概念に近い
自分で意識せずとも体勝手に再生を始めているという状況である
何せ俺が能力発動している限りフルオートで能力を発動して気付かぬうちに再生しているのだ
これ以上支援スキルで頭おかしいスキルも中々ないだろう
そう考えると俺も中々に壊れているが原理に関しては多少半々くらいのところもあるのであまりわかってないところも多い
「…正直に言うと俺もコレに関してはあまり原理は分かってないんだ…簡単に言うと感覚で扱っている感じ」
「……ソレじゃあわからないけど…ソレ大丈夫なの?」
「え?」
「…私が見た限りソレさ魂の力を無理矢理引き出して再生している様に感じるけど…寿命が縮まったり…」
あーね…確かに魂の力を増幅云々言ってたけどね…
「多分だけど大丈夫だと思う…最初に魂の力を増幅させて再生しているって言ってたけど俺に後遺症は出て来てないし多分大丈夫だと思うんだけども……少し怖いな…今度何処かで治療しにいくか?」
「…なら今度私がツボとお灸を据えてあげる…人生のお灸を据えてあげても良いけど」
…なんか怖い…この子すごい怖いこと言ってる…
「…まあ…でも…此処でそんなことを言っていても仕方ないし少し散歩しようか」
「……へ?」
いきなり可笑しなことを言ってしまい呆けてしまったのは決して可笑しな話ではないはずである
そうして自分の中で少しペースが崩され混乱しながらも気持ちの良い天気であることから外に向かって散歩していると
矢張り外の違和感に気づく
この前戦った時には根本から燃えていた世界樹が既に天蓋に届いているのだ
例え妹がエネルギーをパンパンに送り込んだとしてもこんなに簡単に再生することなど原理上不可能であると頭は言っているが
アレがこうなってるのは当然であると自分の心が騒ぎ立てている
「…ねえ、アレってどうなってるの?」
「…あ、アレはお兄がエネルギーを流し込んで再生させたんでしょ?」
「「…………」」
どうやら俺は俺が把握していないところで滅茶苦茶やっている様だ
「……すまん…少し混乱しているから全部1から説明してくれ…このままだとずっと混乱して頭がパンクしそうだ」
「……わかった…じゃあ少し座って話そうか、話すと少々長くもなるし」
そう深刻げに伝えると妹も何も分かってない状態で全部を説明するのは大変であると分かったのかソレを了承して椅子に座りながら此方に手招きをしてくる
「…ソレじゃあ最初から説明するね…」
そう言って一旦此方に向き直りながら何から話すか少し思案気味にしてから
「…まず、お兄が此処にいる全員に対して「種族進化」を行った話はしたよね?」
「…ああ」
「ソレでその後にもう一つ大きく動いた物があったの」
「…ユグドラシルか」
「そう…あの世界樹後で調べてみたら此処にいる人達がどれだけ世界樹に火を移そうが燃えずに戦争が激しくなっていくほどに燃えていった…って
簡単に言うとアレは此処の平和度を図る指数だったみたいの」
「へえ…そりゃあ便利なこったあ」
「…まぁ、あそこまで燃えていたのは前日に誰かが神の軍勢を指パッチンして弾き飛ばして
『俺が暇つぶしに来てるのに神が戦争に介入してくるところを見せるな見苦しい』って言って立ち去ったらしいよ」
「……指パッチン?」
「言いたいことは凄くわかる…死ぬほど分かっちゃうから問題なんだよね」
「…ソレさ人間超越しすぎじゃね?」
………二人の間に凄まじいほどの沈黙が落ちる
俺が沈黙するのは…まぁよくあることだから仕方がない
けれど俺の妹まで黙りこくるのは確実におかしい
ソレほどまでに相手はおかしかったのだ
今回に限って言えば俺は何も悪くないが何故か微妙な気持ちになる
「……まぁ、この話は一旦置いといて本題に入ろうか」
「…だな…気分暗いままだと色々…ね」
そうして二人とも都合の悪い問題からは全力で視線を外してまだ明るい話題に入ることにした
「…ソレでね種族進化した人達なんだけどゴブリンが妖怪の妖に鬼と書いてキジン…オークが将軍と戦士…等々がいてエルフは原始回帰的なアレをしたらしい…魔法のうまさなら私より上だね」
「…なんか皆人外に進化しているな」
「…まぁ…今回に関して言えばお兄のレベル&ステータスポイント吸収が一番やばいよね」
なんせ…本当に行動不能になるくない?
コレって完全に俺のこと殺しに来てるよね?
ーーーーーーーーー
相手を殴り飛ばした後相手がいきなりムクリと起き上がり凶行化して此方に襲いかかってくる
足を半歩後ろに下げて相手からの攻撃を順々に避けていく
相手の行動を全て把握してしっかり回避していけばコレだけの速度しか出ていない攻撃など取るに足らない
そう思って相手の攻撃を回避していたが
相手の武器を見てソレが一変する
相手が取り出したのは長さが腕の半分にも満たない小太刀である
本来なら主要武器にもならないソレに驚いたのは
(ソレは実装されていないはずだ…!?)
未だに刀や小太刀が実装されていないのはこのVR…世界観がドラゴンスレイヤー系のMMOであるからで
刀などの小さい刃物ではドラゴンの硬い鱗に刃を突き立てることはできないから
しかし相手が握っているのは確かに小太刀である
……此処で下手に武器を抜かずに戦えば逆に怪しまれる可能性すらあると判断して大剣を引き抜く
その間に少し笑い声が混じっているのは何故であろう
しかし…此処で考え事をしていれば簡単に相手にキルされてしまう
此処は戦わなければ
そうして相手が一瞬力を溜めるのを確認してから一気に前に進む
相手は此方がいきなり行動してくるのが驚いたのか体を大きく硬直させている
そして上から叩きつける様に大剣を振り下ろす
流石にコレだけの質量差を持っている武器種で防ぐのは危険であると判断したのか受け止めるのではなく受け流す方向に転換しているが
此処は敢えて流れに乗らずに大剣の腹で叩きつけるが
相手からしてみれば鈍重な大剣で速度を出しているのが意外なのか顔面からくらっている
そして振り抜いた隙を逃すほど相方も無能ではなかったが
俺が鈍重のまま戦うと思っていたのか重量武器を構えながら突撃してくる
ソレを見て一瞬で手に持っている大剣を両手から話して
かわりに拳に切り替える
え?拳は武器じゃない?何言っての?某ハシビロコウが言っていた様にコレも二刀流である
拳を持っているのだ、拳という武器を
拳というのは人生を通して持っている武器である人に最も馴染み、誰も持ちえない唯一無二の専用武器である
ソレを鍛えて鍛えて鍛え上げれば
誰にも負けない最強の武器となる
そして拳に持ち替えたのなら勝負は一瞬で決する
相手の攻撃を回避して顔面を捉える
大剣を所持していなければ一瞬で相手の元に走り抜けるなど最早造作もないことである
とちうか…このゲームモンスター弱いくせに変なところまで作り込んでるから時々驚くよな〜
次のお話しで地龍のステータスとスキルを表示します
お楽しみに!
『お前が確認したいだけだろ』
ギク!




