言及したくない敵
そうして妹の能力を聞くが……
うん!全く意味がわからねえのが沢山あったわ
なんせ強すぎる能力がてんこ盛りで正直勝てるビジョンが全く浮かばねえや
そう思うと妹が敵じゃなくて心底良かったわ
下手に敵に回れてたら戦う前に死んでた
と言うか腐蝕って何だよ
腐蝕食らったら【命の源泉】で復活できるか?
〈【命の源泉】はあくまで壊れた細胞を再構築する魔法です、回復魔法とは違う理論なので魂が無事ならば幾らでも生き残れますが……実力を底上げする能力はひとつも備わっていないので貴方が相手に捕まって魂まで腐食されれば生きられる可能性はグッと下がります〉
怖いこと言うな!?もしかして拷問されて魂が腐食されちまえば簡単に死ぬって?
……拷問はされないはず……たぶん?
そうやってずっと沈黙して考えていると
「あれ?どうしたの?恩人様?」
そう言って見覚えのある髪がチラチラと視界の端にチラつくので一瞬絶大な頭痛を抱えながらゆっくりと……振り返ると
「やっほー!王国から抜け出してきたよ!」
王国じゃなくて帝国の間違いな?あと……抜け出したの部分が『滅ぼした』の間違いの気がしてならないんだが?
そこんところしっかりと説明してくれないと俺一生安眠出来ないんだが?
そう思っていると
「まぁ〜、私が国を出るって言ったら腐った脳みその重臣共がピーチクパーチク煩いし少し…本当に軽く撫でてやったよ!」
うん…お前の力なら軽く撫でるでも大分アウトな気がする……
と言うか帝国の女王捨ててまでついてくる様な人間か?俺?
と言うかお前とも初見なんだが?
……………………まぁ、そこらへんもいずれわかるっしょ
「まぁ、良いけど…お前の魔法でユグドラシルに連れていくことってできる?」
とどうせ出来ないだろうなと考えながら無茶振りを振ってみると
「え?できるけど?」
………………………………うん…本当に……コイツは
心の底からコイツはどうして此処にいるんだ?と言いたい
有能が過ぎんだろ!
あ、ソレ言ったら全員パチモンに強いか(俺を除いて)
全く全力でため息をつきたくなる様な衝動に襲われるのは俺が馬鹿だからか?
そう思っていると
「ソレじゃあ行くよ!」
そうして一瞬悩み始めようとすると此方の逡巡の一切合切無視していきなりユグドラシルに行こうとしている輩が居るので驚いて止めようとするが緻密で繊細で尚且つ大胆な術式を行使する彼女の転移を止めることは俺には不可能であった
そうして目にも止まらぬ速度で構築されるソレは一瞬で俺達をユグドラシルへと連行していった
「ココは何処だ」
置いて行かれた人形を後悔する日が来るとも知らずに
一瞬光に包まれたと思った瞬間に目の前に地獄が広がっていた
なんせ目の前の光景を阿鼻叫喚の地獄と表さずに何と表せば良いのか俺は知らん
だって目の前は地獄絵図以外の何物ですらない
だって……見渡す限りの火が土地全体に広がっており
本来荘厳で美しくあろうである世界樹は根本から絶えず炎を撒き散らしている
土地にはあり得ないほどの血が染み込んでおり
素で大地を奴らの血で染め上げろ!をやっている
うん……少し話し合いをすれば簡単に終わると思っていたけど…コレは実力行使をした方がなんか早そうだ
けど……コレを全部相手するのか?
正直妹達の力を借りた方が百倍速く終わりそうだけど
…流石にこりゃあ自分の力でやらないと誰も納得して俺の力になってくれないよな…
全く自分でも呆れる他ないよ
まさかこんな面倒臭い場所を自分の領地にしようとしているんだから驚くよ
そう思って一瞬視線を空に向けると違和感に気づく
「あれ?この世界の空って青いよね?」
異世界に来てから空に違和感を覚えた事はないがソレでも一瞬ここから空を見た瞬間に確かに違和感を感じた
「え?そうだけど…って何であんなに真っ赤なの!?」
そう言うと流石に妹違和感に気づいて驚きの声をあげている
俺だって驚いたけど…
血が燃え上がって血煙みたいになって赤く見えているのかな?と考えていたが…
「いや…アレは」
と一人神妙な面持ちで空を睨んでいる人物がいた
「リュエル?なんか知ってるのか?」
そう自分で言いながら多分コレは厄介案件になりそうだなと自分でも理解する
コイツが神妙な面持ちするって事はそれだけめんどくさい案件だ
こう考えるとマジでコイツって中々良い指標になりそうだ
出来れば面倒ごとに巻き込まれるのは絶対ごめんだけど
そう思って顔を顰めていると
「コレは…神の軍勢が降りてくる時の前兆だよ?」
……オウジーザス?
元々神もどきの軍勢は居るだろうなと予想していたから良かったが
マジもんの神の軍勢が居るってのは全く想定してないぞ?
まぁ……偽物に驚くほど『蒼』は弱くないだろうにとは思ってはいたよ
けど……何で空が赤くなると神の軍勢が降りてくる前兆になるんだ?
「勿論言いたい事はわかる……けどコレにはしっかりとした理由がある、貴方の世界でも黄昏れ時ってあるでしょ?昼でも夜でも朝でもない時間帯……コレはソレを擬似的に神達が作り出した空間になっているんだ……けど一応擬似的だから君たちの世界の様に完全に黄昏れ時を再現する事はできないんだ……けどアレは………………」
最後の方は口元で一瞬僅かに呟かれた程度の独り言であったので自分以外決して聞き取れないタイプの言葉であった
何を言ったのかは気になるところであるがコレもいつかわかるだろ
そう思って一旦無視した
いつかわかることを気にするよりも今は目の前の完全にヤバそうなモンを対処する方が先である
正直此処を制圧するだけならまだ何とかなるけど
勢力を把握しきれない神の軍勢に対処しようとなると
完全に未知数の相手の恐怖に怯えながら戦う羽目になるけど
…けど神の軍勢を引き出せないことには俺は何も出来ないんだよな
そう思って一瞬行き詰まりそうになってしまうが
「何を悩んでるの?神の軍勢をボコボコにするなら!」
そう言って妹が宙空に黒い瘴気を思わせるような手を出現させたかと思うと赤い空をズタズタに引き裂き始めた
うん…やってる事は非常に合理的かもしれないけど……ちょっと神の軍勢が不憫に思えてきた
お前は昔から躊躇ってモンを知らなかったよな
何つー躊躇の無さ……とは毎回呆れたけど
そうして誰にも悟られないように心の中でため息を吐いていると
「「「グギャアアアアア!!」」」
うお!?いきなり何もない場所から悲鳴が!?
そう思って辺りを見回すが悲鳴の主見えない
と言うか黒い手が邪魔すぎて周りの景色が見えない
けど…一つわかる事は妹が何故かユグドラシルの方に黒い腕を伸ばしていると言う事だ
もしユグドラシルを腐らせて仕舞えばコレから防御壁はどうするのか?と思ってリュエルに止めてもらおうと視線を飛ばすが
リュエルはただ宙空に視線を飛ばして睨みつけているだけで何もしてないのだ
いや…彼女自身からは途方もない魔力が放出されているのがわかりはするのだが
けど彼女が妹を止めることはない
彼女が何も言わないのならば一応ソレなりに理由があってのことであろう
そうして一瞬の僅かな隙間の後に誰もが予想だにしてなかった展開が待ち受ける
「んな!?」
と誰が言ったのかすら最早どうでも良い
何せ目の前にいるソレは人でありながら人を超越しているのだ
豪奢な鎧と真紅のマントを羽織りながら決して人には見せない様な厳重な隠匿魔法をかけており
妹が見破ってなければ俺は決して気づいてなかっであろう
つまり…奴は神の軍勢の一員でありながら存在を隠していたのである
全く…強いからしっかりと姿を見せろと言いたくなってしまうが
相手からしてみれば隠れながらこっそりやった方が何かと都合がいいのであろう
まぁ……何かやる時は極論隠れてやってる方がやりやすい
此方はたまったもんではないが
そう考えながら拳を構えようとしていると
「待って…様子がおかしい」
そう言ってリュエルが待ったをかける
本来なら一も二もなく相手をタコ殴りするのが一番効率的だろうが……
確かに一応違和感がなくも無い
何せ『蒼』に聞いた時はアイツは…アイツら『神の軍勢』は決して姿を隠してなかったはずなのだ
ソレなのに今何故奴は姿を隠しながら隠密行動していた?
『蒼』が恐れるほどの軍勢を引き連れこの地の全ての存在を蹂躙しようとしているのならば此処に来た俺達を蹂躙していても決しておかしく無いのである
そう考えると……
今の奴は一人しかいない…もしくは極々少数で行動していると言うことになる
けど……此処の奴らにはそんな力は無いと個人的には考える
何せ神の軍勢を蹂躙できる勢力を擁しているのならば簡単に此処を主戦場に世界大戦が巻き起こっている
ソレが起きてないのであれば此処の戦力はあくまで此処に収まる程度の戦力
内側から破裂すれば簡単に崩壊するような戦力であると言うのが容易に想像がつく
「一体神の軍勢は誰が滅ぼしたんだ?」
そう言って呟くと白が疑惑の目で此方を見つめてくるので一瞬何で此方に視線を飛ばしてくるので一瞬どうして此方に視線を飛ばしてくるのか不思議に思いながら見るが
「……はあ!?俺、ちが、コレはマジで何も知らんぞ!?」
何故か俺がコレをやったのでは無いかと疑われていることがわかった
どうやら俺は今までの行動で極端にお人好しということが白の中で確定してしまったのだろう
中々に嫌な判定を喰らってしまったので普通の評価に戻してもらおうと一瞬考えたが如何にも戻らない気がしてならない
……まぁ、判定はどうでもいいとして
神の軍勢を片手で撚れる様な化け物がこの戦場にいるのか?
そういう恐怖心にもにた懐疑心が心を満たして溢れそうになった瞬間に
「……多分だけど神の軍勢を蹂躙したのは私の知人だけど、恐らく帰ってる…奴は神の総本山に起きたことを起こすために残された伝達者…だから放っておいても問題は無いと思う」
…アグレッシブな知人を持ってるなと思ったが口に出してはいけない気がする
何となく本人が飛んできそうな気がしてならない
うん……此処に居ないってのは本能でわかる
けど…彼女の知人は俺の身知ってる輩全員をひっくるめても勝てないと宣言できるほど簡単にわかる
体の芯から震えている
頭が全力で警鐘を鳴らしている!
本来なら全力で逃げたい所ではあるが……
「……けど考え様によってはチャンスかもな」
そう呟くとリュエルが珍しく呆れた様に視線を飛ばしてくる
何だよ……何で俺が戦闘狂みたいな視線を向けられなきゃいけないんだよ?俺は普通だよ?
そう思って言い訳を口の中で転がそうとしたが面倒臭いし視線をゆっくりと前に向ける
そうして眼下に広がる戦場を眺める
月面観測を扱うことはしない、アレはタイマンでゆっくり俯瞰したい時に使う技であるために此処で使っても特に効果は存在しない
そうして辺りを見回して見るが
「………砂煙で見えねえええ!◯ね!ドフカスが!」
思いっきり悪口を叫んでおいた
全力で叫ぶと少し喉に痛みが走るので全員から馬鹿じゃ無いの?という視線が刺さってくる
い、痛い…
そうして馬鹿をしながら話しながら少し時間が経過した後に
「んじゃ!三手に分かれて其々頭を潰してくれ!あ!殺すなよ!」
そう言って眼下に広がる地面に降り立つために俺は身を踊らせる
今回の標的は
エルフの族長
ゴブリンの族長
オークの族長
の三人だ…実力的に一番強いらしいエルフの族長を俺の妹とリュエルがやるらしい
お互い獲物が被ったので一瞬とんでもない殺気が辺りに立ち込めた時には心臓が間違って停止するんじゃないのかと思ってしまった
まぁ…なんか何方が速く相手を倒せるかと話していたし
と言うか…あの二人が相手なら恐らく誰が相手でも大分厳しいでしょ…
まぁ…今回は出てきてないけど化け物さんなら一人でも簡単に相対できるでしょ
出来れば対面をしたくないランキング一位だよね
全力で溜息を吐き出しながら地面に足から降り立つ衝撃を逃すために地面に柔軟性と伸展性を持たせる
そうして極限まで伸びた地面で飛ばされない様に一瞬気をつけながら地面の性質を通常に戻して
一気に貯めた力を解放する
争っているゴブリン達には軽く足払いを仕掛けながら攻撃を避けつつ突き進んでいく
流石に馬鹿みたいに速い三組が戦場を走り抜けていれば簡単に目立つらしくあちらこちらで他の仲間の特徴を叫んでいる輩を見かける
そうして次に何をすべきかを考えながら足を進めていく
そうして体力のある限り限界まで戦場をかき乱しながらゴブリンの大将を探す
音山達は少しゴブリンに対して苦手意識がまだあるらしく
俺に譲ってきた
アイツら…今度痛い目に遭わしてやる…




