猫は戯れる
相手が呆然としている中そんなのお構いなしに叫ぶ
「来い!」
そう一言叫ぶだけでアイツには何から何まで伝わってしまうのが少々怖いところではあるが今回に限って言えば限りなく心強く思ってしまう自分は馬鹿なのかそうではないのか…まぁ、そんなこととの真偽はどうでも良く
人形は俺がいきなり叫んだことに露骨な警戒心を見せて俺の体を封じ込めることに全力を出してきた
が、俺はソレに抗わずに力の流れる方向へと身を任せる
何でもかんでも力に任せてやれば解決するわけではない
偶にはこうやって敢えて力の本流に身を任せて流れてみることも重要である
しかも…今回に限っては身を何かで覆ってもらわなければ大変な目に遭うからこうしているのである
そうして一瞬待つと
「お前ら?私のお兄に何してるの?」
悪鬼ですら震えて逃げ出す様な声音の妹が全力で腕を振るう
光景は見えないが背後に般若の気配を漂わせた妹が其処にいるのは確実にわかった
できればこのままコイツに抑え込まれてみたくない光景ではあるが…
一応俺が呼んだのだコレで出ていかなかったら最低も良いところであろう
そう考えながら人形を退かそうと少し力を入れた瞬間に
「ぬお!?」
力が入りすぎたのか思わず前転してしまう
しかし前転して周りの光景を見てみると俺が前転してしまった原因がよくわかる
何せ……周りは完全に荒野とかしていたのだ
どうやってやったのかは知らないが被害は王城のアラクネの部屋の中だけに抑えており
ソレ以外は決して外に被害を漏らしていない
被害者はアラクネと表皮だけになってしまった人形
…ったく…俺があんだけ苦労した相手を一撃で葬り去るあたりコイツの規格外さがどれだけかと言うのが凄くよくわかる
そうして相手が倒れ伏しているところに歩いて行こうとした瞬間に
「…ち、地龍さんコレはどう言う状況ですか?」
俺が探していた人物がタイミング悪く此処にきてしまった
そうして一旦部屋を移してアラクネを拘束してから白黒露に事情を説明すると彼は少々信じられないと言う表情をしながら此方に視線を飛ばして来る
俺はソレにため息を吐きつつ
「……まぁ、でも信じられないと気持ちは十分に理解できる、俺だって仲間が裏切ったって言われてもすぐには信じられないからな」
そういって彼の頭を撫でていると
「あれ?もしかして……」
そういって考えた後にアラクネの頬を何回か叩いて奴を起こすと
「…何?」
とすこぶる機嫌を悪くしながら此方を睨んでくるアラクネに
「…お前もしかして白黒露に戦場に出てほしく無かったのか?」
そう言うとアラクネが一瞬顔を伏せる
ビンゴ……と言うかどんだけ不器用なんだよコイツ
まぁ…そうだな大切な人を戦場に連れて行くかもしれない俺をみすみす接触させるわけにはいかないよな
ソレに…コイツが白黒露の外出許可を与えていたクイーンズブレイドの集まりは間違っても戦争には発展しないであろうから
恐らく外出許可を与えたのであろう
そう考えると…あの人形も恐らく彼を守るために用意したものであったのだろう…まぁ妹が完全に砕いてしまったが
けど……原因がわかった今更に不可解な事象がある
何故【ノア】は俺にそのことを黙っていたのか
コレが一番の問題である
何せ…コイツは俺の能力である
本来であれば何でも俺に通告して来るはずなのに最近は伝えたりしないことも増えてきた
どうして?と考える機会が増えたと考えれば前向きに捉えられるが…どうしても心の奥の何かに突っかかる
そうして相手を見つめていると
〈……主が…このまま戦いに明け暮れて死んでしまうのか?と思ってしまうと正直に協力することが出来なってしまいました…すいません…私は能力失格です〉
と不穏な物言いと共に謝罪をしてきた
なるほど…だからアラクネの時も、コイツに共感しちまったから黙り込んでいたのだろう
俺がこのまま何度も無謀な戦いを挑んでいればいつかきっとガタが来て死んでしまう日が来てしまうと考えたから
…まぁ、わからなくもない
何せ俺はクイーンズブレイド戦の時に割とマジで何回も死にかけたり死んだりを繰り返していて
コレから決して死なないといってもコイツは絶対に納得しないだろう
感情と理性の両方で
先刻の発言でしっかりとわかった
コイツは…人格を持っている
人のソレと変わらない
前世の俺の世界ですらAIは人格を持っていなかった
持っていたのは数列による擬似的な人格
話したり何なりが辛うじてできる
自分で考えたり行動したりは決してしない
人に従い人のサポートをする
ソレが向こうの世界の機械の認識である
けど…俺の【ノア】に関して言えば最初からおかしいところはあると言えばあった
能力であるはずなのに流暢すぎる受け答え
最初は武術王とか何とかと言われていた彼女が内部にいたから流暢に受け答えできていたのかと思っていたが
思い違いも甚だしい
何せアイツが抜けても…いや、抜けてから更に人間味が加速した様にすら感じられる
恐らくコイツは人の意識を持っていてる擬似的な魂を持っている
そう考える方が俺がこうやって会話を成り立たせている理由にはしっくり来る
そう考えると俺が戦い傷つくのを快く思わないのも納得できる
コレが殺人鬼とか戦闘狂の魂であれば簡単に俺を見捨てていただろう
しかし…コイツは決して見捨てなかった
全く…お人好しも良いところだよ
そう考えながら心の中で
『なあ…ノア?俺は確かに弱く見えるかもしれないけど…俺はコレからも戦いに身を投じるんだと思う、まぁ、転生者はトラブルに巻き込まれるのが常だしな、だから…といっては何だけど、コレからも俺のサポートをしてくれるとありがたい』
そういって一旦心の接続を切る
すぐに返答が来なくても良い
何せこの答えには時間が必要だ
人間は何でもかんでもすぐに返答を求めるキライがあるけど
考える時間というのも人間にはきっと必要なのである
ゆっくり考えながら自分が一体どうしたいのか
何を為したいのかを考えていけばきっと相手も理解してくれる
そうやって人間はお互い歩み寄って理解し合ってきたのだから
…まぁ、人間は得てして理解し合うのが難しい種族でもあるけど…此処でいうのは少々邪推と言った所であろう
「さねさてさーて、アラクネさん?アンタ少し不器用すぎはしないか?流石にコイツを戦闘に引き摺り込みたくないって理由があったとしても少々強引すぎるわ、相談してれたら普通に戦闘に巻き込まない様に色々配慮はしてやったぞ?」
そういうとアラクネは顔を顰めながら俺に言う
「……お前は所詮人間だ…人間は信頼しない」
あー…コレは完全に嫌われているね
そしてコイツ…妹を押さえつけようとしている俺の腕も恐らく数分で決壊してしまうであろう
「…まぁ確かに、元蜘蛛であるお前からしてみれば俺なんて全然信頼できないだろうな…まぁ、俺龍人だけど…まぁ、ソレは一旦置いといて!けどな?俺だって仲間を大切にするし提言してくれれば配慮もする、結局こんな荒廃した世界の中じゃ信じられるのは仲間だけなんだ、俺は極力仲間と戦いたくない…ついでに敵と言論で勝負でき、尚且つソレで敵と平和的に問題解決が行えるなら喜んでそうするよ
…んで、お前とも話がしたい…お前が俺をどう思って何を考えて攻撃してきたのか…最初は確かに印象が最悪過ぎたかもしれないけど今後ゆっくりとお互いをわかりあえたら良いなって俺は思ってる」
そういうとアラクネは少し悩んでから
「…彼をハクロを今後戦闘に駆り出さないのなら貴方と一緒に戦っても良い」
そういって来るので少し苦笑しながら
「わかった約束する…というか俺は極力キチガイみたいに強い奴以外は戦わせない方針だから…コイツは最初から戦わせる気なんて一ミリも無かったんだよね」
そういうと白黒露は呆然としてアラクネは驚いて目を丸く見開く
だから最初からお互い対話をしていればこんなに面倒くさい戦いをしなくとも分かり合えたのに…そう考えながら
まぁ…感情がソレを許さないかと考えながら相手に施していた拘束をゆっくりと解きながらアラクネを自由の身にする
拘束を解いてもらったというのにいまだに何処かに警戒心を抱いて…
いや、コレ俺に抱いているんじゃなくて妹を警戒してるんだろうな
まぁ恐らく俺の妹は必要ならば老人でも子供でも普通に戦場に引っ張りだす可能性あるからな
妹は俺のいうことは聞くだろうが…けど俺以外に対して基本的に懐かないし命令を聞かないであろう
なんせコイツは恐ろしく頭が切れる上にコイツ自身も相当に強い
そんな奴が命令を発したらきっと誰もコイツに逆らえない
……ある意味で最悪な構図が成り立ちそうで一瞬身震いしそうになってしまった
そうならない様に俺がしっかりと手綱を握れば良い話らまぁ…今後は倫理を説く必要が出てきたので多少めんどくさいことが増えそうではあるが
そう考えると多少溜息を吐いてしまうのは少し許してほしい
そう思っていると妹は
「…大丈夫、お兄は絶対に死なせない」
そういって来るので妹ならその為に無辜の民まで簡単に傷つけて危険から俺を遠ざけそうなので怖く思ってしまう
そうして妹が少し疲れたのか肩を回して休憩している間に
本命の白黒露に俺本来の目的を話す
「え?俺の兄弟が!?」
そう言って驚いて来るので…恐らく二度と会えないとでも思っていたのだろう
まぁ…お互い奴隷に落ちたのならば二度と会える機会もないと思うだろう
再開できるのは奴隷から解放されるか…もしくは同じ奴隷の主人に買い取られるか
解放されても一度奴隷となれば何かしら印が残されてしまう
コイツの場合は印の場所を俺がコイツの意思を確認してから引きちぎって俺の細胞と馴染ませてから再生させたから
恐らく今後誰かに奴隷の印を確認されても難を逃れられるだろう
そしてもう一つの場合は考えられる限りで恐らく一番最悪なパターンであると俺は考えている
同じ奴隷の主人に飼われたとしてもお互いの姿は恐らく過去の記憶とは似ても似つかないものとなっているだろう
更に言えば数年間の間に体や顔が変化して普通に気付けない場合もあるだろう
そう考えるとこうやって他の人に探してもらうのが一番効率的で尚且つ安全に自身の探し人を簡単に発見することができるのでは?と俺は思っている
まぁ、今回に関して言えば俺が全員買ってきてくれという要望のもとにコイツの兄弟を探してきたのだから
コイツが出向かないとそもそもの問題駄目じゃね?という見解に至った
そうして彼を見つめていると
「…そう、良かった…良かった生きてて」
そう言って涙ながらに喜ぶ姿は見れて本当に良かったと思ってる
まぁ、今回はお互いの利害が一致したからこそ探せたのだが
本来なら探さなかった可能性すらも一応はある
確かに仲間の要望は出来うる限り叶えたい
しかし…叶えたいと叶えられるは根底から違う
力が無ければ強者には勝てず
どこに居るか検討がつかなければ半分くらいは運の要素で探し出さなければならない
今回の探し人はどこに居るかというのが大体わかっていた為に探し出せたが
もしわからなければ一生生き別れなんていう事態も普通にあったのだ
全く…この世界の時代にはまだ奴隷は必要だとわかっていても…あまり気分の良いものではない
奴隷もいなくて十分な対価で働ける世界になれば一番良いのに
……………少し気分の悪くなる話をしてしまった
「まあ………そういうことで俺より積もる話とかもあるだろうし行くと良いよ…………まあ一応案内しないといけないけど」
そう言いながら部屋の方向へと歩いて行く
そうして王城の部屋の一室を破壊するという本来平民であれば簡単に切り捨て案件になりそうな事態を少し遠い目をしながら無視している
多分ばれたらマジで説教案件であろうが
今回は妹が色々と修繕してくれた
今回は妹に感謝しかない
まあ………壊した原因コイツではあるが………今回は見逃してやるか助けてもらったし
そう思いながら部屋に向かって歩いていると
中から楽し気な声が聞こえたので一瞬顔を覗かせると
白露が楽しげに此方を見てきた
うん………こいつらどうやって此処まで仲良くなった?と思ったら
白の手元にある猫じゃらしで何となく状況は理解できた
うん、理解できたけど理解できない
お前はそれでいいのか?白露?と思わず声をかけそうになってしまったがコイツは猫の獣人であるために
そういう欲求を押さえつけるのが下手なのか?という結論に至る
そうして少し微妙な気分になりながら白黒露を呼んでみると
彼も少し微妙な顔になっていた
すいません、今回を機に少しお休みを貰います
最短で一週間、最長で二週間
理由としては作者の体調管理の甘さで熱が出てゴールデンウィークが潰れそうという理由からです
続編をお楽しみになられていた方々には本当に申し訳ありませんが今しばらくお待ち頂けると幸いです




