空に届け
「ゴポッ!!??」
一瞬の僅かな間の後骨まで届く衝撃を体の内部から感じて一瞬膝をしっかり地面へと付きながら口から一気に血液を吐き出す
恐らくコレだ!奴の…能力の真髄は
【ノア】ですら奴の移動速度は認知できなかった
が、別にソレはどうでも良い
どうやら一昨日の俺とアイツらの考察は正解であったらしい
「…なあ?お前の能力は…【時間停止】だろ?恐らくインターバルが必要なタイプ…あまりに長い時間停止していると次の能力発動までのインタバールが条件が厳しくなるんだろう?」
そう言って体を起こすギリギリの所で【命の源泉】が発動して体の再生を始めてくれたのでなんとか立てた
けど……恐ろしい能力だ
時間停止は此方がどれだけ来る!とわかっていても意識を保てないで相手に致命傷を負わされたらゲームおしまい…ハハっ笑いたいくらい理不尽だな
そう考えながら相手に向かって拳を構える
相手は自分の能力がバレたのが原因なのか
一撃で沈められなかった不快感からなのか
物凄い不機嫌オーラがこの会場を包み込む
敵である俺は勿論この会場にいる全員が一瞬思わず恐怖から体を震わせる
そりゃそうだろう…どう言う訳かは知らないがコイツは極端に自分の能力が他人にバレるのを毛嫌いしていた
ソレがポッと出の俺なんかと当たって一撃で沈められない上に自分の能力を暴露されたとなれば機嫌の一つや二つ簡単に悪くなってしまうだろう
そして一番の問題は此処からである
コイツは能力有無以前にシンプルに格闘技が強い
コイツを研究するために女王に用意してもらったコイツの昔の資料の一つに格闘選手とのエキシビションマッチがあった
相手はこの国での王者で十年無敗を貫いていた伝説の選手であったが
コイツは僅か1分でKO勝ちしたのだ
と言うか三秒と言っても過言ではない
最初の57秒はひたすら相手から逃げ回り相手が焦りから思わず無防備に攻勢に転じた瞬間に顎にストレートを入れて一発KO
コレだけ見ても完全に強いのに時間停止なんてクソチートを扱ってくるあたり天は人に二物を与えないとか人はほざくが天才は何をやらせても天才という事実が此処に現れているのだろう
そう思うと気分が沈んでしまうが仕方がない
そうして相手に向き合うと相手の全身からドス黒い…
今現在の相手の心境を表すかの様に天に向かって黒い粒子の魔力が伸びている
おっと…コレはバーサークモードかな?
嫌だわ!!また狂戦士と戦わなきゃいけないの?
と駄々を捏ねようとした瞬間に相手がいきなり前振りもなくいきなり此方に移動して来た
今回は時間停止を使ってのソレではない
今回は純粋な速度
そんな風に考えなら一瞬で胸の前で攻撃を防ぐために腕をクロスさせる
そして一瞬なんとか間に合ったと安心する間も無く此方の体は一瞬の浮遊感ののちに思いっきり吹き飛ばされる
衝撃が腕を走り抜ける死ぬほど痛い!
と思ったのも束の間腰につけた小袋の中に入ってる小瓶を器用に口で掴んで蓋を噛み砕き中身を腕に降り注がせると腕が一瞬で溶けて再生する
「一応妹に言われて持参したけど死ぬほど痛い後にすぐ再生するのは何か人として抵抗が……」
そう言いながら拳に違和感がないかを確かめるために何度か開いたり閉じたりを繰り返すが特に違和感は感じないので相手に向き直る
前回の試合を踏まえて実は妹にこう言われていたのだ
「お兄…今回の試合もそうだけど…貴方は全体的に再生できない攻撃に弱すぎます」
そう前置きされて俺が如何に再生できない攻撃弱いのかを延々と説明されて最後に
「もし再生できない攻撃を喰らったら攻撃箇所を切り落とすか何なりかをして再生しなさい!」
と鬼畜戦法を告げられた
最初は嫌だ!と思ったけど妹の考えることは大抵いつも正しいし【ノア】も非常に合理的と話していたので仕方なく今回は折れたが…
「やっぱり論外鬼畜戦法たと思うんだよね…」
そう液体をかけた腕をマジマジと見つめる
傷や後遺症が残らないから良いが…コレがもし後遺症などが残るなら俺は絶対に反対していた…
まぁ流石に妹も後遺症が残るなら薬剤をかけて再生する戦法を取るなんて鬼畜戦法は取らないであろう
多分……自身はないけど
そんな風に、もし妹に話したのであれば完全に睨まれる案件のことを考えながら相手の方に今一度睨みをきかせていると
相手は再び体を揺らしながら此方に歩いていく
相手の独特の歩法の影響か時々相手の体の輪郭が揺れ目の前に居るはずなのに見失いそうなってしまう
ソレを危惧して今度は此方から攻めに行くと
「んな!?」
俺は確かに奴に対して攻撃をしたはずなのに攻撃をした先は飛び出した岩であって
相手は其処からどうということもなく俺の背中に向かって強烈な蹴りを炸裂させる
もし俺が地龍でなく人類であったら薄い皮膚から背骨に衝撃が伝わって完全に背骨がお釈迦になっていたことであろう
そう考えると体の芯から恐怖を覚えて震え上がっていると
「……コレで倒れないのか…めんどくさい」
そう言って更に足を振り上げて攻撃を繰り出そうとしてくるので腕を短刀で切って横に転がることで何とか難を逃れるが相手の強力な攻撃の余波を喰らい思い切り体が会場の端に飛ばされる
背中には元々多大なダメージがあった影響か一瞬凄まじいダメージで意識を飛ばしそうになったがすんでの所で舌を噛んで意識を保つ
そうして相手から目を離さない様に体を起こしていると
相手はつまらなそうにどこかに視線を飛ばしている
一瞬相手が何を見ているのか気になって視線を相手の視線の先に飛ばしていると
奴は女王に向かって視線を飛ばしていた
あー……確かに邪ソンが女王に心酔しているって言ってたけど試験中に思わず見ちゃうほど心酔してるんなんて…
相当心酔してるんだな
そんな風に考えながら何で今見るんだ?と思いながら相手の方に視線を飛ばしている一瞬相手が至福とでもいうかの様に表情を蕩けさせてすぐに顔を引き締めているのを見て
あ、俺との戦闘は苦痛なんだな
と感じて一瞬イラって来るものがあったが俺は大人なので勿論黙っておいてやる
そう思っていたのだが相手が再び此方の顔を見た瞬間に
「……………」
まるで道路脇に落ちている犬のアレを見るかの様に完全に『嫌だ』と全面に押し出されている顔を見た瞬間にブチッとキレた
口では何も言ってないが顔がソレ以上のことを確実に語っていた
「ほ、ほお?お前良い度胸だな?」
完全に入ってはいけないスイッチのブレーカーを壊しながら押されてしまったので自分でさえも最早感情の制御は不可能である
〈…………〉
【ノア】はそんな俺のことを見て少し溜息を吐くが文句を言われるのが面倒臭いのか何も言わずに静観の姿勢を保つ様である
しかし……どう調理してやろうか?
そうして昨日白から一本拝借させてもらった剣を砕き自身の拳にバフをかけていく
そして相手も特に武器は持たずに魔力を拳に纏わせていく
皮肉なことに俺と奴の戦法は極端に似ているのである
しかし戦い方が似ているからと言って弱点まで同じとは限らない
そうして相手の弱点を探るべく先に出て手数で調べるべきか、ソレとも後に出て着実にカウンター狙いで調べていくか悩む
しかしこの時の俺は完全に頭のスイッチがぶち壊れている状態なので…本来ならば後の先を狙い確実にカウンターを放ちながら弱点を調べていくのが確実ではあるが…最早思考すらままならないほどのバーサーカーと化してしまった俺は…
(一撃で葬り去れば問題なし!)
後から言ってみれば葬り去れば完全に問題大有りだし俺程度の実力者がクインを葬り去ることができれば他の奴らだって簡単に合格出来ているはずなんだよ…と突っ込んでいる所であるが…本来ツッコミ役である人物こと俺が不在のために其処では最初から全力全開で相手をぶん殴ってスッキリするという方針に固まった
そうして相手がどう動こうかと逡巡している隙に…
「!?」
相手が驚いてるのが見なくてもわかる
何せ今の状況は決して自分から動くべきタイミングではないからである
相手は今だに5体満足であり…まだまだ完全余力を残しながら俺と戦おうとしている
けど俺はというと完全に疲弊しきって相手からしてみれば風前の灯火に見えるであろう
…が、俺からしてみれば風前の灯火の人間こそが人生で一番強く…そして最高に光り輝く存在になれると自分では思っている
そうして相手に視線を飛ばすと何かつまらないモノを見つけてしまったかの様に此方に向かって不快感を露わにしながらポッケに手を突っ込みながら敢えて自身の足音を大きくしながら歩いてくるクインに此方も無防備に前に出る
この間だけはお互い決して攻撃しない
何故かそんな不思議な言葉が頭に思い上がって来たが別に良いかと考えてしまった
「「………」」
本来であればお互いに言葉を掛け合いソレから殴り合うのが通例であるのだろうが…
俺から言わせて貰えばそんなの完全に時間の無駄である
どうせ…その後すぐに殴り合いをするのであればすぐさま殴り合いに移行するのがお互いにとって一番楽で簡単に決着がつく方法であるのだろうから
相手は此方のボディに向かってフックで攻撃してくるので左手で攻撃をいなしながら攻撃をいなした衝撃を殺さずに一気に相手に向かって足技を繰り出す
相手は一瞬驚いた様な顔を浮かべるがすぐさま首を傾けて回避さらに此方の無防備になった足に向かって足で攻撃してきたので
此処は回避せずに敢えて横からではなく上から押さえつける様に足を叩き下ろすと相手は僅かに顔を歪ませる
流石に痛みは感じる様であり
俺はもしかしたらコイツ実は痛みを感じないのでは疑惑を完全に解消できて少し気分が良くなった
相手は此方が再び足を上げたことに
「バカだな」とでもいう様な視線を向けてくるのでわかってるわと言う心持ちで上げるモーションをしながら一気に相手の体に突っ込んでいく
まさか片足を上げた状態で突きのモーションに移行するとは考えてはいなかったのか一気に拳も交えて怒涛の攻撃を開始する
最初の時間停止の攻撃も含めて一気に倍返しだあ!!
そんな気概を滲ませながら攻撃をしていくが一瞬体の動きにカクツキを感じた瞬間
全身から血が吹き出て首に大きな裂傷を負っていた
しかし前回と違うのは相手がその場から一歩も動けていないという事実である
恐らく時間停止の攻撃には移れたが体が予想以上に動けずにこの場に留まらされたということであろう
もしくはそう思わせる罠
他の人が聞いたら少し疑心暗鬼すぎないか?と言われそうだが俺からしてみたらコイツは完全に地面に倒れ伏させる瞬間まで決して油断をしてはならない相手であるために絶対に攻撃の手を緩めずに怒涛の攻撃を展開していくのである
そうして相手は徐々に疲労の色を見せながら攻撃を捌けなくなっている
元々はニートまっしぐらな俺であったが今世の俺は身体能力がソレなりに高いので今の所疲労で体が動けなくなるという事態は起きていない
そのことをいいことに一気に攻撃をしていくき
止めの一撃を放とうとすると
「せいや!!」
相手が上手投げの要領で此方を掴んで投げてくる
これには一瞬驚かされた何せ…まさかコイツが上手投げをしてくるとは夢にも思わなかったからである
コイツはもっと特殊技能を扱い此方を攻め立ててくるのだろうと考えていたから…この様な体を活発に動かしながら攻め立ててくるとは考えられなかった
そんな風に考えている奴は自身の小袋から、その小袋のサイズに似合わない長剣を取り出す
コイツ…拳だけじゃなくて剣も扱えるのか
そんな風に考え間合いを一気詰めようとした瞬間
相手がいきなり長剣を投げつけてきたのである
一瞬何をされたのかよく分からずに馬鹿みたいに体を硬直させてしまう
そうして相手は剣を投げつけると同時に此方に向かって走ってきており
ちょうど長剣が突き刺さった場所にスライディングしながら柄を握り一気に振り抜く
此方は辛うじて相手の長剣を腕で防御できたから良かったものの
この剣は他の剣とは違う何かがある
そう思わせる何か不吉なものがある
そう思い一瞬体を後ろに下げようとすると後ろに剣線が走り抜ける
コイツ……俺が後ろに下がるのがわかって!?
行動を読まれたことに驚くのも束の間…相手ゆっくりと此方に歩いてきてこう告げてきた
「お前…俺が時間停止の能力者だって言ったな…大間違いだよ…ソレがわかんない限りお前は決して私に勝つことはできない」
俺や【ノア】そして妹ですら決して想像しきれなかった言葉がいきなり告げられた




