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空に届け

布団の中で悶々と考え事をしていたらいつの間にか月は呆れ果てて沈んで、太陽も呆れた様に日差しを容赦なく叩きつけてくる



「はい、なんでまだダンゴムシなのか百文字以内で説明してください、納得できる様に」

そう妹の呆れた声が天井から聞こえてくるが、反応すらできないほど

「き、筋肉痛……」

そう言ってなんとか手を出す、そうすると無理矢理布団から追い出されて

「ニギャアアアアアア!!」

悲痛な叫び声が辺りに響いたと言う


「全く……我が愛しの兄はいつから布団の住人になったんやら」

………酷くね?こちとら昨日の連戦の影響で全身が張り裂けるって思うくらい全身筋肉痛なんだが、そう言おうとして

「そう言えば昨日言い忘れてたんだけど……私の里を襲った相手の追加情報、聞きたい?」

そう言うことは先に言ってくれよ、興味津々だ

「………全く筋肉痛は何処へやら…」

そう溜息を吐きながら眩暈がするみたいな仕草をしながら一瞬何かを思い出す様に

「……アイツは自分の種族を【ムーントラベラー】って言っていた、名前から…【旅月】ってのがしっくりくるけど何か知ってる?」

ムーントラベラー?何だその種族は?聞いたこともない月詠種というのは聞いたことがあるが……確か月の表面に住んでいる種族?

そんなことを読んだことがあるが、ムーントラベラーなんて言葉聞いたことがない、似たやつとしたら他には【ムーンタッチャー】か?

そこまで考えてふと思う

「なあ、お前はこの世界どうなってると思う?」

全身の筋肉痛をほぐしながら着替え始める、そうすると

「……そうだね、私の見立てだと私達が入ってきたことで時間軸が大幅にずれて、ゲームであれば死んでいるキャラクターも存在しており、尚且つ敵も生き残っている……そこから考えるに

『始まりは小説と同じだけど敵はラスボス並みに強くなっている』って感じかね?」

………一番聞きたくない言葉だわ、つまり?敵や味方は全員生きていて、尚且つ世界自体は九露が死んだ後くらいってことか?

そりゃあ俺の知識が通用するところとしないところが混在しているわけだ、まさか俺が乱入してきたからなんて全く想像もしなかったけど

けど、此処で一番問題になるのは敵の強さである

『傀儡』では最初に出てくるキャラクター自体はそんなに強くないが、後々になってくるとソレなりに厄介な敵がソレなりにいるのである、そう考えると世界の環境だけがずれ込んでるのも中々考えもので………

「……もしかしたら…」

そう呟くと妹は不思議そうに此方を見てくるが今は特に答えられない

もし、もしこの世界が『世界』という環境を動かしただけで人物が変わってないのならば……

「ねえ?今所持金幾ら?」

変なことを聞いている自覚は死ぬほどあるが

「………国を軽く買える程度には」

………非常に突っ込みたい気持ちを抑えながら

「じゃあ、この国の奴隷全員買ってこい、俺の考えが正しければ……この世界の本当の主人公がいる」

そう、この世界が本当に環境だけを動かしただけの世界であれば人は今の所原作通りの配置なっているはずだ、そしてまだクイーンズブレイドに九露がいないことを鑑みると、九露は今の所奴隷になっており今だに買い手がついていない状態である

今回はどう言う特徴であるのかを説明する時間は皆無であるので全員揃えさせて全員養う

勿論、この国の狭い領地を貰うだけでは駄目だとわかっている

が、当てが全くないわけではない

『蒼』か逃げてきた千年戦争地帯という場所はかなりの広さがある場所であるはずだ

そこの戦争を収めればなんとか全員を受け入れる領地をもらえる筈である

そう考えながら少し着替えるのをやめていると

「ソレじゃあ私は行くけど、お兄も早く出なよ、何気に時間押してるしね」

……あり?もしかして無駄話しちゃった?貴重な時間を潰しちまったああああ

久しぶりに清々しいまでの絶叫が街に響いた




「さあ、今回の試合は前日一気に八人抜きを起こした超大型新人の『地龍』と「金」に愛された『黄金戦士』の一騎打ちです!!」

そんな聞き慣れた様な文言を右から左に流して静かに精神統一した

別に精神状態は悪くない、むしろかなり良い、が、興奮しすぎている

今の状態で戦いに臨んだ場合テンションが上がりすぎて最初から全速力で試合を終わらせてしまうので、後のペース配分が一切考慮されない

なので此処で一旦落ち着きを取り戻すことが一番の課題であると言えたが、数を五つ数えた頃に心は凪いだ


そして冷静になった心で昨日の問題点と改善点をシュミレートしながら試合会場に続く一本道の階段を淡々と登って行く

しかし光が大きくなるにつれて歓声が徐々に大きくなるが、死人が出た昨日の戦いを味わった身からすると酷く皮肉的な歓声に聞こえてしまうのは俺だけかもしれない

そんなことを考えながら向こうに向かって歩いて行くと

出口に差し掛かるあたりで眩い光が目に飛び込んできて、一瞬目が眩みかけたが、なんとか目を開け直すと

昨日と違い今回の会場は豪奢な飾り付けがされており一瞬なんだ?と思ったが目の前から出てきた相手の装飾の多さを見れば一瞬でなぜこんなにも装飾が多いのかは理解できる、感性は理解できないが

何せ相手の体正しく『金色』づくめである

そしてソレを象徴する様に鎧も武器も金色の素材から作られており、わざわざフルプレートの全身鎧であるのに顔の部分に差し掛かる鎧だけは悉くなくなっている

相手の顔は、まぁー、なんというか、女性ウケしそうなイケメンではあるが確実に下半身に脳みそがいってそうな雰囲気は出ている

解説は聞き逃したが恐らく夜の繁華街にも足繁く、と言ったところであろう、どきつい香水の匂いが鼻をつく

しかし相手はその自慢の長髪をすくように指を入れながらふぁさっとイラつく仕草で何かやっている

………アイツの本体壊して良いかな?

そう思って行動したいが、まだ試合のゴングは鳴っていない

そして試合のゴングが鳴り響いた

瞬間相手の顔面に向かって拳を振るうと相手は意外にも回避して見せた

すこし驚きはしたが股間の方の防御は薄いらしく大地の攻撃と共に全力砲撃で下のアレをぶっ壊す勢いで能力を発動する

「…………………………」

会場全体があり得ないくらい静寂に包まれる結果となる

俺も少し痛そーとは思いはしたが、別に今はどうでも良いなと考えながら攻撃したが

相手は一生外での遊びを……

「卑劣だぞ!貴様!」

………足ガクガクさせながらいうことではなくない?

そう思いながらもう一回アソコに強烈攻撃を喰らわせて一瞬で撃滅した




「さあ、最終戦!ギルドマスターとの戦いです」

あまりに速すぎたので再戦をしたが、相手は懲りずに下半身の防御を固めておらず普通に下半身に攻撃されてまた撃沈した

周りからはお前は悪魔か何かか?

という風に見られた、が別に今はそこまで重要ではない、今サクッと敵を倒していき、早々にクイーンズブレイドの攻略に時間を使いたいのである

何せグングニル野郎と同じでクイーンズブレイドのたちの攻略には時間も労力もかなり必要になるであるからだ

だからこそ此処で時間を喰うわけにはいかないのだが

「たくっ、強い奴は勘弁しろって……しかもコイツギルマス属性まで持ってるとか終わってるだろう……」

そう呟いて本気で戦うためにペースを崩す準備をする

相手は完全にパワータイプの武装である、何せ自身と同じ長さのあるハンマーを横に控えさせてあるのでハンマーを使って果敢に攻める重戦士タイプだと思われる

しかし、それだけでギルマスになれるのか?と考えたが、あの唯一の情報源には武器種も職業も何も書いていなかったので判断材料があまりに少ないので、今できるのは相手の行動をカウンターで完封するか、先攻も後攻も全部取るか

前者は方がかなり楽ではあるだろうが予想外の一撃を受けてしまった時に思考停止を起こしかねない

後者は普通に俺の実力不足であるが故に実行できない残念な計画ではあるが、まぁ、仕方ないと割り切る

そして何度も聞いた試合開始のゴングが激しく空気を揺るがす中、相手はいきなりハンマーを地面に叩きつけた

最初は衝撃波で此方の足をもつれさせてそこを一気に突くのかと考えられたが違う

勿論ソレの目論見も辛うじてあるだろうが、今回の目的は

「おーーーっと、いきなり土人形が出てきたぞお!」

司会進行(今まで試合が規格外や終わるまで速すぎたのであまりに役に立っていない司会)が叫ぶ

今回に限っては言われなくてもソレくらいはわかる、そして、相手の主戦場が大地であるならば俺のステージである

そう思いながら大地に手を当てて相手の土人形の制御を横から奪い取ろうとすると

「!?!?」

衝撃のあまり一瞬動きがぎこちなくなってしまい、虎の形を模した土人形に突進をかまされてしまう

「………驚いたな」

寸前でなんとか威力を殺しながら空中で体勢を整えながら地面に着地しながら呟く

「どうした?まさか大地は自分の独壇場とでも思ってたか?」

つくづくやりづらい相手だ、まさか地龍以上の大地の操作を可能とする人類がいたなんて想像もしなかった、もし今完全に相手の土人形の制御を行えていると勘違いしたままであったならば今頃俺は虎の餌にでもなっていたであろう

しかし寸前で気づけたおかげで大怪我には至らないが喰らわなくて良い一撃を無意味に受けてしまい多少反省している

しかし本当に意外だ

「お前………何故そこまで大地と深く繋がれる?」

本来大地魔法というのは地龍は一部の魔法使いにしか使えなく、大地と深く深く密接に繋がっている地龍が一番の使い手であると言われていたが

ソレはあくまでも地龍が完全に大地魔法を扱えたとした時の話である

今の俺はソレこそ魔力不全の刻印を施されてしまっていて魔力を扱えずに大地魔法を十二全に操れていない

そう考えると人に大地魔法の性能で負けても或いは仕方がないのかもしれないが………それとコレは別問題である

悔しいものは激しく悔しいし

勝てないと理解していても感情は諦めるなと叫んでいる

全く感情ってのは厄介極まりないね

こんなヤバい状況でも勝てると確信している自分がいるんだから感情ってのは本当にやばいな


とりあえず、なんで俺が奴の大地魔法の綱引き合戦で勝てないのかを理解しないとお話にならない

そう考えて相手との対話に臨むことにした

「なあ、アンタの大地魔法って意外と凄いな、俺の大地魔法でもぎ取れなかった、理由はなんだ?」

此処で敢えて真実を聞くことで相手は此方が何かを狙っていると疑ってくれる、強い奴ほどコレには引っかかりやすい

「簡単なことだ、全体に反魔法を仕掛けて大地魔法でもぎ取れないようにしている」

……………ちょっと待て、俺の聞き間違いかもしれないからな

「………嘘を言おうたって「別に嘘をつく理由なんてないからな、お前弱いし」ブチブチブチ!!」

何だろう、自分で弱いって言うのと、人から見下す様に「弱い」って言われるのは天と地ほど違うんだ、わかるか?

幾ら温厚だからと言っても何でもかんでも許すと思ったら

「大間違いだよ馬鹿野郎!!」

そう叫びながら後方で大地魔法を一斉発動させる、もう相手に遠慮なんていらない、相手に大地魔法で打ち勝ってやる!

すると相手はハンマーを構えながら地面に向かって振り下ろすと後方にあったはずの大地の柱が一気に消え去る

やはり……相手は大地に対して完全な優位性を持っている

一瞬カッとなった頭に冷や水となる事実を叩きつけられて特攻しか考えていなかった脳は完全に冷えてきた

「……………」

相手の大地に対する優位性は即ち俺への優位性へと変化してくる

何せ俺の戦いの基盤には殆ど大地魔法が組み込まれている

何せ地龍は大地で戦ってなんぼの種族である、その大地というアドバンテージを取られて仕舞えば簡単に瓦解してしまうのだ

コレがただの地龍であれば

「なあ?俺から大地を取り上げただけで本当に勝ったつもりでいるのか?」

そう言いながら全身に力を込める、まずは素の速度でどれだけ相手が反応してこれるのかを見る

そして相手がどこまで反応し切れるのかを見切ってから相手を潰しにかかる

そう決め前へと足を踏み出すと相手が此方の行動を先読みしたかの様にハンマーを振りかぶって此方に振り下ろしてくるので一瞬速度を落としながら目の前スレスレを通過するハンマーの柄を握りながら上に振り上げれる反動を使い相手の後ろを取り蹴りを放つ

すると相手はまるで軌道を知ってるかの様に首を横に曲げて躱し、ソレも知っているという顔で此方に重い拳を繰り出してくる

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