空に届け
そう、アイツは死にたがっていた……あの機械兵装は自分では外せないタイプの厄介な兵装であるが故に無理矢理延命作業をされてしまうので
完全に生き地獄であろう
死にたくても自身より弱い相手では自分を殺すことはできない
弱い相手を逆に殺してしまうので彼は自殺志願者の様に様々なことをやって行ったが死ぬことはできない
そして恐らく戦闘の際には機械が自動的に戦闘を行うので奴は自分から自害することができなくなってしまったのである
そう考えると冒険者をやっていたのももしかしたら死にたいからかも知れないね
そう思うと相手のことが死ぬほど不憫に思えてきてしまう
駄目だ、こりゃあ……………元々試合後という、理由もあったのであろうがテンションがかなり低めであったのが私の考察を聞いて一気にテンションが低くなり、今現在では顔を下に俯けながら黙々と考え事をしている、が今回は仕方ないとすら思えてしまう
何せ、自分が自殺志願者の最後の一歩を踏み出させてしまったのである
そんなことをしてしまい心に傷が付かない人物などこの世に存在しない……………最初は最後まで行けるのでは?と考えていたが、今現在の状態で無理に戦場に出しても不必要な怪我を負わせてしまうだけである
そう考えて口を開く
「今日は一旦帰って明日に備えようか」
そう言って荷物をまとめる、お兄は完全に「え?」みたいな感じで、固まっているが……………まあ仕方ないと言えばそこまでなのかも知れない
けれど
「今回の相手………まさか自分の命の生殺与奪の権を握らせてくる阿呆がいるとは想像出来なかった…………こんな事態の対処法は知らないから時間の解決を期待するしか……………私にはないんだよ………」
そう無力な自分に対して自己嫌悪に陥りながら
「…………………」
妹と解散してから何をしたらいいのか全くわからずに取り敢えず辺りを散策していると邪ソンに出くわす
「おう」
とだけ言ってすぐに立ち去ろうとしたら流石に何かおかしいと判断されたのか腕を掴まれて
「ちょっと話がある」
と無理矢理連行される、邪ソン君………………君、今この絵面だけみると相当えぐいよ?
そしてたどり着いたのは知らない場所であった
当然であろう、元々来てから日が浅いのだ、知ってる場所よりも知らない場所の方が多いが
到着した場所には多種多様な建物があった
洋風チックな建造物が建ち並んでいると思っていたらいつのまにか日本風の家屋が立ち並んでいたり(日本風の家屋はあるのに刀関連は無いとか終わってるだろ)
そして最後には木造の高層建築物……
「ちょっと待て!?」
と思わず叫んでいた、建築に精通しているわけでは無いからよくわからないが、ゆうに百階を超えそうである建築物を木造で作るのは大丈夫なのか?と質問しようとしていると
「あー、これ?最初はお前とおんなじ様に『木造』でこんな高層建築物を作っていいのか!!って言う人も沢山居たらしいよ……けど、この建築物の素材知ったら皆黙ってね」
……なーんか嫌な予感がするのは俺だけ?
そう思って溜息を吐きながら続きを促す
「コレには『世界樹』をふんだんに使っていてね……ソレこそ理外の力が働かない限り倒れないよ」
俺からしてみると魔法は十分理外の力なんだよなあ……
そう思いながらも高層建築物に目を向けてみるが、木材であると言うのにその建物には途轍もない貫禄が備わっており、見た目のソレより遥かに長い間此処に建設されていたと言うことを示している
そこでふと思った
「……お前の目的地何処?」
そう、なあなあでついてきてしまった、結局目的地を一切聞かずに此処まで来てしまった結果相手の目的が判明せずに此処にいる
そう考えて邪ソンに聞いてみるが
「ん〜、歴史の授業参観?」
……コイツ答える気がないなと言うことだけはわかった、取り敢えず『歴史』関連ということがわかっただけでも収穫としよう
そう考えて取り敢えず邪ソンに黙ってついて行くことにした
「そういや……今回の試合は凄い奴らが目白押しだったな!」
そう邪ソンが明るく告げてくるので……苦い記憶を思い出しながら
「今日戦った最初の奴と最後の奴はヤバすぎるって……特に最初の奴はアザトースと戦えるレベルで強かった、もう一人の方は…アザトースと戦ったら簡単にスクラップにされそうだが俺とは違う強さを持っている……たくっ、他のS級と比べてもあの二人が化け物だってことはよくわかる……」
そう溜息を吐きながら疲れが籠った嘆息を止められない、そうしていると邪ソンが少し複雑そうな視線を此方に向けてくるので
「………別に…今回の最後のアレは正直仕方なかった…って思ってる、永劫しねない、相手を殺し続ける…そんな体になってまで生きたいか?って言われると正直絶対なりたくない……しかもアイツは何らかの事故でああいう体になっちまったんだろう、だから……誰かに苦しみを終わらせて欲しかった……人が協力しないと死ねないのは厄介だが…奴も相当の時間を生きて精神が磨耗していて…正確な判断を下せなかったのだとしたら……今回の事故は然程気にすることではない……けど、俺がやったのは立派な自殺幇助のなんのかなー……途中からアイツが死にたがっていたのはわかっていた、だけど自分の気持ちを優先して相手を潰すことに全力をかけていた、何処かでブレキーをかけていればアイツは死ななかったのかもしれない……そういう考えがずっと頭の中を巡って……」
人の死を見るのは別に初めてではない、葬儀にだって出席したこともあるし、骨になる所も見たことがある……
けれど人の死に直接の要因を持たされたことは初めてである
俺は何処かで『異世界だから人が人を殺すなんてあり得ない』みたいな楽観的な考えを持っていたのかもしれない
馬鹿馬鹿しい……お前は何もわかっていなかった…異世界とは言え世界だぞ?人が暮らしていれば犯罪は起きるし殺しも起きてしまう……結局、魔法という理外の力があろうと、どの場所でも『人』は変わらないのである
そう考えると矢張り気が滅入ってしまう
「お前が言いたいこともわかる……俺も仕事で初めて人を殺してしまったときは酷く混乱したもんだ……ソレにお前らみたいな異界から来た人物ともなれば戦闘慣れしてない奴らが『異世界』っていうわけのわからん戦場に放り込まれるんだ……だがな…結局逃げ回っても結果は変わらない…強さを持っている人物は何処に行こうが必ず戦火に呑まれることとなる……その時にどれだけ自分の『理想』を押し貫けるかどうかの『力』を持っているかが大切になってくる、今回お前は一人殺してしまったと投げているが…今回に限りソレは気にしなくて良い…アレはお前の力を利用できると考えたアイツがお前の力を利用して自殺する為に使ったまでだ……お前はただ巻き込まれただけの哀れな……いや、力があったからこそ利用されてしまった被害者だ、気に病むこともない…ソレに何千年と生きているのに俺たちは奴を死なせることができなかった…奴が本気で排除にかからせるには本気で戦わないといけないのだが俺達ではどうしても条件を達成できなかった…何せ中の情報を知ってどうしても手加減を加えてしまうのだ……そう考えるとお前があの場で奴と戦ってくれたのは僥倖であった考えられるな」
そう言ってくれるならありがたいが……ついこの間までずっと平和な世界で暮らしていた人物にとって戦闘も人の死も……心に大きな影を落とすにたる出来事なんだよ…
そう考えながら少し俯きかけると
「フグウ!?」
いきなり両の頬を掴まれて無理矢理笑顔の形にさせられる
「辛い時ほど笑っとけ………………俺たちは別に無敵の人間って訳じゃないんだよ、道踏み外した奴を罰したり、必要に駆られて敵を殺すことだってある…………けど、俺たちはそれでも前を向いて戦わなきゃならない、結局のところ人が一番人を殺すんだ……受け入れろとは言わない、けど、納得できないのであれば、その『死』の意味を見出せるまで考えろ、自分の行いが正しいのかどうかを」
おかしい、俺の目は腐り落ちてるのかもしれない
「邪ソンのくせしてスゲー正論言ってる……!?」
次の瞬間般若の顔をした……あれ?この顔何処かで……………
ああ昔読んだ「金色のガッシュ」の主人公の怒った顔に似てるんだ
そんな感想を抱きながら、死刑を執行される前の人の気持ちが初めてわかったかもしれない
そして数分後ボコボコにされてしまいました……………仕方ない、なんせ今回は割と真面目に心配して元気づけようとしてくれていたのにまさかの煽りが飛んでくるとは思ってもみなかったのであろう
今回は流石にやってしまったなと思い反省の意を示すために敢えて傷をそのままにしてある
そうして邪ソンの気分が落ち着くまで黙っていようとしたら
「どういう状況……これ?」
どうやら招かざる客が到来してしまったようだ
「なるほど、つまり地龍を元気づけようとしたら煽られて邪ソンさんがブチギレたと………地龍に情状酌量の余地なくね?」
鈴山君、君……………もう少し状況を確認しようか?今そんなことを言ってしまえば……
「コ、コロス!!」
……………ああ、処刑の方の道に進んじゃうのね
そう少し落ち込みながら鈴山に対して全力で睨み付けることを敢行する、すると本人はそっぽを向きながら
『我関せず』のスタンスで行くという風に背を向けている、アイツ今度殴る
そんな考え事をしていると不意に邪ソンが嘆息を吐いて般若の面が元の顔に戻る(元々仮面はつけているんだけどね)
そして突然回れ右をして
「行くぞ、お前のせいで無駄な時間を浪費した」
そう告げてくるので服についた汚れを叩き落として、何処かに逃げようとしていた鈴山の襟を掴んで引きずる
その時の顔は俗に言う「死んだ魚の目」であった
そしてしばらく邪ソンについて行っていると、不意に邪ソンが
「そういや、元々お前らがいた世界ってどんな感じの世界だったの?」
そう聞いてきた、一瞬何を探ってきている?
と感じてしまったが別に、異世界のことに興味を持つことは罪ではないから構わないか、そう感じて口を開こうとすると
「そうだな、俺の世界は 『穢れ』という人の負の感情、過去の経験……等々が原因になって生まれた存在と陰陽という存在達が何百年も戦いを繰り広げている世界に生まれてな……俺はそこでラスボス的な立ち位置で戦っていた、まあ主な理由としては自分を見捨てた親に後悔をさせるために戦いを繰り返していたが二人の天使『刑罰』の天使の白と『救済』の天使の音山に計画を悉く邪魔されてな、最終的には俺も協力して『穢れ』が生まれる原因となっていた「王」とやらを打倒した……………まあ俺たちは変な墓石に不用意に動かした結果此方に転送されてきてな……………まあ元の世界に関しては穢れがいなくなってある程度平和になっていたし俺たちがいなくとも普通にやっていけてるだろ」
そういう鈴山には少し儚げな表情が映し出されていた……………
「やっぱり向こうの誰かが惜しい?」
急な別れである、別れを告げたい相手や感謝を伝えたい人物、親しい間柄の人物に何も言えないで此方に来てしまったのである多少の後悔くらいはあるのだろう、そう考えて少し悩んだ結果聞いてみることにした、が返ってきたのは予想の斜め右上の回答であった
「いや、別に……………強いて惜しいというならば姉さん達に別れの機会を与えることが出来なかった、ってところかね……………なんせ異世界に来る原因を作ったのは俺だからね」
そういうので裏事情が多少朧気だが見えてきた、そう多分
「まあわかっているとは思うけど、墓石を動かそうって言ったのは俺なんだよ……………俺が珍しく正義心を出したりしたから二人も巻き込んじゃったから……二人が俺のこと恨んでないか心配なんだよね……昔のことは水に流してはくれているらしいけども……………けど彼らはあの世界で上手くやっていたから別れや感謝を告げたい相手とかもいたかもしれない……その機会すら与えられずにこっちに連れてこられたのを恨まれているんじゃないかと思うと……………怖くなる」
……………確かに、鈴山自身は自業自得の結果で片付けられたとしても他の二人に関しては自分の事故で連れてきてしまった被害者……………と考えるのと、もしかしたら恨まれてるかもしれないと考えられるかもしれない
けど、あんまり恨まれてないんじゃないか?
人の生き死って難しいですよね
『急に哲学だな』




