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空に届け

さてと、何とか相手の度肝までとはいかないが辛うじて肝位は抜けたかも知れないと考えながら相手の視線の逸れ方を確認してみる


顔ってのは情報の…………か、たまり


あれ?コイツ顔雷に潰されて表情が読み取れねえ……………あれ?相手の表情読み取り作戦早々に失敗?


そう考えるが、まああくまでも出来たら………位に思っていたことであるからあまり気にしていないと言ったらそこまでの話である


だからこそ今こうして落ち着いて辺りを観察できていているのだが


けど、いろんな人に迷惑をかけてるし


こりゃあ早々に片をつけたほうがよさげだな


そう考えて姿勢を前傾に傾ける


しかしながら相手も馬鹿ではない大剣を前に構えてこちらに構える


「やっぱり思うようにゃあいかないか………………」


そう呟きながら相手に向かい拳を、発火性を極限までに高めた拳を向けてゆっくりと摺り足で近寄る


摺り足は普通の歩行よりも予備動作が読みづらいと何かで聞いたような記憶がある


そして相手は大剣の切っ先を地面につけながらこちらと一定の距離を、そう、斬りかかれるギリギリの距離でこちらの反応を伺っている


全く……やりづらいって言ったらありゃしない


そう考えながら相手の方へ徐々に徐々に迫っていく、が


中々距離を詰めさせてくれない


……………溜息を吐き出しながら気合いを入れなおすために瞬きをする


戦闘で不用意な瞬きは死に直結してしまうのはわりかし常識ではあるが


……そういや、コイツパワー型かと思ってたら攻撃の威力自体は軽いんだけど、手数でソレを補っているんだよね


………なんか嫌な予感がするのは何でだろうねえ?


そう、叶ってほしいことは簡単に叶わず


叶ってほしくないことは簡単には叶わないのが世界の常識ってね


あー、お前?その形で大体予想できたがスピードタイプで一撃一撃がデフォで俺より強いのは反則でしょ?


そう考えながら半分ほど刃こぼれを起こしている短刀を構えながら相手に何とか喰らいつく


どう考えても短刀が大剣に喰らい付いている方がおかしいと思うが


受け流しに全神経を注ぐことで何とか短刀は壊れていないが


今回の戦いは武器の損壊よりも俺の体のリミットの方が問題である


『エンチャント:フレイムロード』は簡単に言うと体の可燃耐性を著しく下げてソレこそ体内の空気の流れだけで発火するほど可燃性を高くすることによって起こる技である


現在は【命の源泉】が発動しているおかげで何とか立ち上がっていられるがもし、コレが数時間続いた場合俺の体は完全に内部から崩壊するだろう


別に地龍は『火』に特別高い耐性を持っているわけではないのだ


ソレを無理矢理使っているのだガタが来るのは当然と言えば当然であろう?


………このまま行ったら確実に死に急ぐことになるが……何処までが許容範囲であるのかを考える


〈恐らく……残りの耐久値から三分が限界でしょう〉


どこぞのカラタイマー種族か?


そう突っ込みたくなる気持ちを必死に押さえつけて何とか前を見据える


恐らく『三分』という数字もあくまで俺がなるべく体の負担を少なくして動いた場合に適応される数字であろう


ソレなのに下手に動いて耐久力を下げて行っては勝てる試合も勝てなくなってしまうものである


そう考えて手に持っていた短刀をツチノコの口の中に……俺が燃えてるのにコイツ頑丈だな……


と少し呆れと戦慄を心に混ぜ込みながらツチノコの口に短刀を突っ込んで拳を構える


此処で下手に武器を消耗したら、ソレこそ骨折り損である


そう考えて空気と接する面を小さくする為に体をボクサーのように小さくしながらまっすぐ足を踏み込んでいると


僅かに上に逸らしていた目にとんでもない行動が映り込んだ


「ガラァァン!」


そんな快音を響かせながら大剣が鯨のように向こう側に飛んでいっていた


……ええと?状況が掴みきれん


俺の考えが正しければ奴は自分から武器を向こう側に投げつけた、と?


……何のために?


マジで意味がわからん、何せ武器が『ある』のと『ない』のとではまるで違うのだ


大剣という距離を伴う武器を持っているだけで素手の相手は接近するのを躊躇い、懐に踏み込めば大剣は鈍器としても使用可能であるためにその使用幅は多岐に渡るものである


その大剣を、恩恵たっぷりの武器を投げ捨てた?


合理性の欠片もない……と呆れていると相手が拳を握り此方に向かって示してくる


あー、何となくわかったぞ……こいつ、俺とのタイマンを所望だ


最初から軽いと思っていたのは自分が完全に有利な大剣を振り回しているのに少し嫌気が……さしていたのはあるだろうが、ソレ以前にスピードタイプってのはあながち間違いでもないのだろう


けど、ソレで大剣を投げ捨てるか?普通?


……まぁ、今戦ってるのは全く『普通』の範疇に入らないイレギュラーもいい所の『異常』であるからな


少しくらいの不備も楽しんでなんぼだろ


と半ば思考を変な方向に飛ばしながら走るのをやめてどちらが示すまでもなくゆっくりとした足取りで、あと寸分で鼻の先が付く……という距離まで詰め寄る


そして一瞬の沈黙の後


「オラァ!!」


「…………!!」


お互い示し合わせたように右ストレートを顔面に放り込む


相手は完全なスピードタイプと思っていたが中々良い角度で決めに来やがる……一瞬意識が飛ぶかと思った……


そうビビりながら相手の鋭い蹴りを頭突きで返す


理由としては一撃入れられてふらついて両手を地面につけていて半ば直感で蹴りを頭突きで返していた


が、すぐさまこの行動を後悔する羽目になる


蹴りは直線的に飛んできたために一切の『減速』がなされていなかった


幾らデコが体が頭の中で一番硬いと言っても速度と威力の乗った蹴りを受ければ下手をすれば脳震盪で気絶、最悪頭部を蹴破られ脳髄ぶちまけておわただ


まぁ、【命の源泉】がある限り大抵の傷は治ってしまうので、そんなグロ現場からムクリと起き上がれはするのだが


その光景でムクリと起き上がる自分を想像してみるとゾッしてしまうのですぐに相手に向き直る


相手の行動は?


拳を低く、足を僅かに後ろに下げて此方を睨めつけるような目で射抜いてくるので


瞬時に腕を交差させて『回避』ではなく『防御』に力を振ることにした


そして次の瞬間


腕が陥没した


比喩ではなく、腕の骨が粘土を押しつぶすように陥没していく


くそ……威力が重すぎて次の行動に転じることもできない


心のなしか腕の治りも遅くなっている……


原因は…


〈原因は相手の雷が細胞に帯電して、『破壊せずに帯電した』結果細胞を修復できずにいます〉


ソレなら暴食者の能力で何とかなりそうだが……今の所そんな器用に能力を発動できない……


そう考えていると


「キュイキューイ!!」


お前の鳴き方はNPCの決まりきったレスポンスか?


そう言おうとして、口から石を吐き出して両腕を切り飛ばした


……うん、コレなら帯電もクソもないから再生もできるけどね?


せめて事前通告というのを覚えようか?あと別の鳴き方も


そう考えながら再生を終えた拳を振り抜くと相手は一瞬で此方の背後に回る


「んな!?」


瞬間移動した気配はない、ソレどころか特殊な技能を使われた形跡もない


素の速度でコレだとしたら……


そう戦慄を抱いたが、すぐにその考えは消える


何故か?目の前に僅かに静電気のような細い電気が走ったかと思うと、目の前から拳が飛んできたからである


そう言えば……この空間は言ってしまえば『雷の檻』、その特性を活かして雷の速度で殴りかかって来ているのだとしたら


この目に見えない速度も頷ける


そして自分と相手のスペックの差に僅かに慄きながら追撃をかけるために両足を地面に固定する


コレで回避しないと言う意を示して、後方からの攻撃をカウンター出来ないと思い込ませる


実はコレはそこまで抜けるのは難しくないのだ


なんせ人の形に近づいたとは言え俺は元々『地龍』なのだ、俺が少し念じれば簡単に地龍の四足歩行形態に戻れるので、四足より太い日本足の穴は簡単に抜けられる


そう思ってあえて足を突っ込んだのだ


そう考えて、一瞬視界の端っこで何かが走ったと思った途端、腹のあたりに衝撃が走り抜ける


アイツ……俺が反応しきれない超速度で駆け回って攻撃を……!?


そこまで考えて俺の考えは浅はかであったと認識せざるを得ない


そう思い


「喰らいつくせ【暴食者】」


そう呟いて周りの邪魔な障害物と雷を喰らい尽くす


コレで倒せるとは思っていない


俺がやるべきは一瞬の隙を作り出し……


「コレでも隙ができないとかメンタルタングステンか?」


そう呟いて後方から迫っているとフェイントをかけている相手に向かって、真正面に向かって拳を振り抜く


そうすると、一瞬僅かに拳に当たった感触があったが、相手からしてみれば僅かに掠った程度の認識であろう


……まったく、奴の速度はどうなってる?


恐らくだが奴には透過能力と分身能力が備わっており、ソレに大分翻弄されてしまっているのかもしれないが


……分身見分けるとかマジで困難すぎるだろ…


唯一救いがあるとすれば分身は『来る』と認識していれば攻撃は当たらないのが救いではあるが


相手の本体は速度がおかしい


多分だが分身と一緒にこの試合会場を走り回っているのだろうが……多分特急列車(暴走機関車)の生まれ変わりだと思う


何せ障害物にあたろうが粉砕!!みたいな感じで突っ込んでいるのだ


此方からしてみると、障害物に当たったら減速しろよ……と呆れ果ててしまう案件である


俺なんて一直線で突っ込んだ日には相手の蜂の巣になって試合なんて一発KOになってしまうのである


だから逆にこう考えている


『搦め手上等、害悪プレイ上等!』


と、しかし相手の場合は


『猪突猛進!!』


これが一番似合いそうな戦い方をしている、俺が一番やりづらいタイプだ


こう言うタイプは何も考えずに突っ込んできていると勘違いされがちだが、本能で何処で何をしたらどうなるのか、と言うのを冷静に判断して意外な一手を指してくることがあるのだ


そう言うのが一番怖いのである


俺も同じ……似たタイプだからこう言う奴は追い詰められるほど、逆境を楽しんで強さを得ている


…さて、ここからどう動く?


「…………………………………………」


長い沈黙が落ちた、俺はすでにエンチャントを切っている


なんせ、もう三分はゆうに超えているので流石に解除しないと火だるまになって倒れ伏しているだろう


ちなみに現在奴は何かを待つようにまた動きを止めている


あれ?俺たち似た行動を繰り返していない?


そう考えて心の中で首を横に振っておく、間違っても此処で首を縦に振ってしまったら完全に負けを認めることになる


うおおおおおお、死んでも認めねーぞ!


そう心の中で叫んでいるのがバレてしまったのか相手が岩を投げつけてくるので暴食者の能力で完全防御を展開する


けど、相手も俺も同じ場所から決して動かない


わかっているのだ、結局この戦いはどれだけ間合いを詰めて、そして一撃で試合を決めきれるかを競っているのだ


下手に攻撃をして隙を晒したら最後、完全に弱みを見せて、敗北するのは決定している


……さて、どうするべきか


完全に引き際を見失ったが……


少なくとも相手は何か奥の手なるものが存在するのだろう


俺には無い、ソレを


俺は奥の手も何もかも出し尽くしてなお膠着状態を作り出すので精一杯であったのに、相手はまだ何かを持っている


全く、世の中そんなうまくいかないもんだね、そう心の中で呟きながら


「おい、お前……お互い長くて面倒い戦いは嫌いだろう?………俺も本気の一撃を放つ…お前も全力で来い!!」


そう言うと相手は何かを探るように警戒しているが


此方はもう隠し事をして戦うのが死ぬほどめんどくさくなったのだ、此処で出し惜しみとかして死んだら元も子もないので


「『阿修羅観音・悟』『Infighting -抜重』」


そう言ってまだ発動もしたことがない能力を発動する


選んだ理由?


そんなん直感だ、直感!


そして、相手も腹を括ったのか


「我が身を喰らえ、我が命を捨て捧げ今此処に全てを滅する力を求まん『荒波』」


雷なのに波?そう思っとのも束の間、変化は突如として訪れた


相手の体はいきなり心臓の直上を起点として波紋が広がっていく、そして同心円上に波紋は広がっていき


元々荒々しかった顔は更に禍々しさと、神のみが放てる神々しさを纏っている


背筋を冷や汗が流れるが、ソレ以外の震えが俺を支配している


ソレの感情は何処から来るのか?


最初は認めたくなかったが


俺はどうやら相手の姿に歓喜しているようだ


この世界に来てから初めて抱けた


『戦闘に対する好奇心』を

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