空に届け3
魔槍グングニル
……言葉だけなら皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
北欧神話、主神オーディンが持つ武器で、敵が何処にいようが確実に当てると言う絶対的な必中性能を誇る槍である
そして、オーディン自体は両肩に情報収集の鳥を乗せており日夜情報を聞いている
とかないとか
が、今問題なのは………あれー?どう考えても総数多過ぎない?
数は1,2,…………….12億…
……うんやば過ぎね?どう考えても最初に出てきて良い技じゃねえ!?
「潰えろ……最早試合の合否など関係ない、ただ貴様を潰す!!」
オウジーザス、俺なんか地雷踏んじまいましたか?
同刻 観客席
「え?はは、ありゃあ少しやばくねーか……」
戦闘職ではない音山が圧巻されている中、戦闘職である鈴山と白も気圧されていた
「………あの数を捌くのは骨が折れる」
冗談ではなく白ですら本当に骨が数本逝く事を覚悟しなければアレは防ぎきれないそうだ、と言うかミスってね?」
奇しくも地龍と同じ事を考える鈴山に声をかけた人物がいた
「アレくらいなら余裕でしょ〜」
そう言いながら何かを虚空に向かって書く様な仕草をしているのは、地龍の前世の『妹』らしい
が、正直に言うと俺はあまり信頼できていない、何せ幾ら前世で仲良かったからと言ってコイツからしてみればおよそ二十五年前の話であるのだ、そんなに前のことを持ち出されてもちょっとなあ……
と言われてもあまり文句は言えない立場なのに、凄くコイツを信頼しているのが此方からしてみると少々危うい気がする
「けど、あの数を捌く……ッッ!!」
話の途中でグングニルが地龍に向かって暴風雨の如く降り注ぎ始める
まさに世界の終末を予感させる様な光景である
もし自分が入っていたら?
………こりゃあ久しぶりに震えてきたな
「全く……君達は今まで何を見てたの?」
そう呆れられてしまった……けど、確かに何か違和感を感じる、ような?
「まず、さ、ウチのお兄は動体視力が異常、コレは理解できる?」
人差し指を立てながらそう言ってくる、あれ?いつの間にか講義が開始って、音山も白も悪ノリして聞き入ってるし……本人が災害に直面しているのに、その本人の講義を始めるって何か可哀想に感じるんだけど………地龍の強さ、確かに興味あるかも
そう考えて真面目に話を聞くことにした
「で、どうして態々そう言うことを言うのかって言うと……彼の動体視力ならワンフレームまでなら反応できる……約0.017秒……まぁ、瞬きの十倍くらい速いわけだけど……彼はソレを反応しきってカウンターできるくらいには動体視力が言い訳だけど……昔普通の攻撃がワンフレーム疑惑がある輩と普通にやり合ってた時があって、途中から相手も本気になって剣速が倍以上になってたけどソレでも楽々よけて浪漫技を発動する余裕があった時は流石にビビったけど……後で本人に聞いてみたら
『あれはテンションがFULL MAXになってないとできないって』言っててね……アレは正直言って人間の出して良い速度ではない気がするんだけどね、両方とも大概頭がおかしいけと……まぁ、何が言いたいのかって言うと……」
そう言いながら試験会場の砂煙が一向におさまる気配がない闘技場に視線を移す、そして口に確かな笑みを刻みながら
「一度は確かにワンフレームの攻撃を避けていたんだ……今更ソレ以下の速度の攻撃で尚且つフェイントも入らない愚直に飛んでくる魔剣やら総数十二億の武器なんて……」
此処で奇跡が起きる、此方の声など全く聞こえてないはずなのに……彼は、地龍は
「フェイントなしで愚直に飛んでくるバカみたいな数の武器……来るタイミングさえわかればそんなガラクタばかりの必殺は」
『簡単に捩じ伏せられるんだよ!!』
そして次のセリフに全員がまた度肝を抜かれる羽目になる
「さあ、終幕と行こうか!!」
そう言って全速力で闘技場を駆け出す
「へえ?どうやってその地べたから私の喉笛を掻っ切るのかね……?」
そうやって此方の真意を調べるべく質問してるが、今回は押し問答をしている暇は皆無なのだ、なんせこの技は模倣技なのと……下手したら俺が自爆する可能性が80%あるからだ
と言うかぶっちゃけ九割九分九厘失敗する
でも、どうしてこの技をやるかって?
………ソレは、
「まぁ…いっか、どうせ此処で倒せば終わりなんだから」
おいおいおい、お前の魔力量はどうなってやがる?先刻奥義みたいなのを放ってたろ?
君、某プレイヤーも言ってたぞ?
リキャストタイムは常備……ぬおおおおお!?
『再行動【グングニル】発動』
あは?君、アザトース並みに理不尽な人類になれるよ?やったね♪
死いいいいいいねえええええええええ!!!!!
奥義をバンバン撃ってくるなあ!!
奥義ってのは此処ぞって時に出すから奥義って言えるんだよ!
そう思いながら再び弾く為に全ての武器の撃ち出される角度とタイミングを測ろう……
「【豪雷深淵】」
うん、君、やっぱり俺に何か恨みあるよねえ!?
気づいた時には縦横無尽に紫電が体を突き抜けていた、コイツは痺れされる為じゃなくて速度では俺を攻撃する為に使われている雷だから……避けれねえ!!
そう考えながら傷つけられた部分を【命の源泉】で回復していく
コレがある限り俺は死なない
と言うかコレノーダメ攻略をしなくても良いんだよね?
なら安心して自爆特攻をかけ、られ
「死んじゃえ……」
うん、悪意増し増しの気配が……あれ?今何か目の前をよぎった様な……
「は?」
そう声をこぼしてしまった俺を責めることは誰にもできないはずである、何せ、今までどんな攻撃をされても必ず再生、否……『復元』できていたのに、何故か攻撃された箇所が再生しない
いや、マジでどう言うこと?
「…………暴食者」
そう呟いて傷を喰らうとすぐに回復するが……あー、もしかして特殊属性持ちの攻撃?
知ってる?必殺技のタメをしている間に普通にスキル発動してくるのって反則って言うんだよ?
え?知らない?じゃあ、仕方ないねえ
…………うおおおおおお!!回れ!足いい!!
もっと魔剣の攻撃受けれなくなった!と言うかコイツ反則だろ!必殺技を貯めてる間に魔剣も出せるとか聞いてないって、隙なさすぎて回避にしか専念できん!
唯一の救いは先刻より魔剣の数が多少なりとも減っているって所だな、まぁ、必殺技を貯めてる間に先刻とおんなじ数を撃ってきたら流石にビビって逃走しているわ
「ふぅ、けど一番の問題は……アレなんだよなあ」
そう言って今も構築されている【グングニル】に視線を飛ばす
正直俺の見立てだと後数十秒あればまた撃って来れる
多分であるが
けど、恐らく俺では防ぎきれない、何せ先刻より数が増えていて、と言うか最早空すら見えなくなり、地面も最初より数キロ陥没している……
うん、すいませんS級冒険者弱くね?とか思ったこと謝りますから!!
せめて俺と地上戦を展開してください、じゃないと寝技しますよ!!(寝技の概念を間違えてる人)
さて、おふざけはコレくらいにして
……正直に言って俺、相当相手を舐め腐っていたと痛感しましたわ
だってこんな必殺技持ってるとか誰が予想できる?
………多分今殴ってもアレは落ちてくるし、そして防がなければ蜂の巣
けど、暴食者で全部喰らおうとしたら多分俺がパンクする
さてさてさーて、詰みましたねえ
「キュイキューイ!!」
ツチノコ、取り敢えず丸揚げになる?そう殺気を飛ばすと
「キュー!!??」
と叫びながら本日二度目の石攻撃を喰らいました
……何だろう、コイツ今の所迷惑にしかなってねーんだけど
………うん、いつかコイツはぶん殴ってやるから覚悟しとけ
……あれ?そういやコイツ
同刻
「あーあ、こりゃあちょっと厳しいね……」
そう言いなが思わずと言ったふうに『妹』さんは一筋の汗を地面に垂らす
けれど俺はもう数十本は下に垂らして、背中は最早最悪すぎて言葉にできない、けど再び言わせてもらおう
「運営さーん!!調整ミスってるって!」
別にこの必殺技自体はそこまで強力ではない
なんせ一時的に必殺技の範囲外に逃げれば纏まった武器の塊は『一つ』の武器となるので、とんでもない数を捌くより対処はまだ可能となる
一回密集攻撃を捌き切った阿呆がいたが
今度はこの調子だと『兆』を超えるであろう武器種を
今度こそダメだろうと思いながら眺めていると
「はっはっは!!!」
と狂乱した様に高尚をあげる地龍に一瞬哀れみを覚えるが
すぐに違和感を覚える
その姿は……いや、その眼は…
「秘策ありって顔だね……」
そう『妹』さんが言う、その顔には信頼と疑惑がないまぜになっており、彼女ですらこの状況からの打破は相当難しいと判断しているようだ
「けど、たぶん……アイツは勝ちますよ」
確証はない、証拠もない、根拠もない、のないない尽くしだが
一つ信頼に足るものがある
「あの諦めの悪い眼はコレから負けるかもしれないって思ってる奴ができる眼じゃない」
そう、そんな馬鹿どもの眼を目の奥に今だに焼き付けている俺が言うんだ
アイツはもう、負けない
「さてさてさーて、一応勝ち筋は完成している……そして……同時に崩れる未来も見えている…」
正直に告白すると、今からやることは足を一度でも減速したら即・敗北の奈落へと落ちる程危険な方法だ
もう少しゆっくり考えればもう少しいい案が【ノア】から弾き出されるそうだが……いかんせん時間が足りない
最早残された猶予は
「「行くぞ」」
瞬き程もねえからな
相手の初手は当然と言うかの如く巨大なグングニルが飛んでくる、勿論オートではなく自分で操るタイプである
最初は脳の演算処理大丈夫?と思ったが…演算処理を補助するタイプの魔剣を創成したら平気か、と思い直す
……たくっ、最初にイメージした通り……これゃあ避けられねーな
なんせ道が全部塞がれてるのとフェイント上等、害悪手上等とでも言いたげな嫌らしい方法で俺を喰らわんとしている
もし俺にコイツがついていなかったら『詰み』であっただろう
だが……コイツごこちら側にいる時点でお前の負けである
「やれ、ツチノコ飯の時間だ」
そう呟くと食い意地の張るツチノコの口が在らん限りに開かれ此方の命を刈り尽くさんとする凶刃を吸い込んでいく
勿論全てを吸収しきるのは不可能である
幾らコイツの胃の容量が異次元だとしても『兆』を超える武器全て吸収して空納にしまい込むのは不可能である
なので、切り札の一つをここで切る
「【暴食者】」
一人であったならば全てを喰らい尽くす前に串刺しにされてお終いであったが
ツチノコが半数を受け持ってくれるのならばこれくらいのは喰い尽くせる
(本当に多分、なんせ【ノア】ですら言葉を濁していたが、計算が一ミリでも狂うと無理ゲーになってしまうとか何とか)
たくっ、勝てるかわからない勝負を此処まで楽しむのはいつぶりだ?
そんな思考を持ちながら武器の嵐を真正面から突っ込んでいく
本来なら一回の跳躍で突っ切ることは不可能だが
先刻の【オーディン】の嵐で随分と武器を破壊させてもらったから、ソレのバフを足に全開にして突っ切っているのである
まぁ、コレに全部注ぎ込んでいるので失敗したらもう一回試験を最初からになってしまうであろう
え?今喰っている武器は吸収したら破壊にはならないのか?
ソレはちょっと違うね
俺の【暴食者】は物体を吸収する際には、物体そのままを吸収して魔素に分解してから自身に還元するのだが
ここで、分解と破壊の境界線が難しいのである
暴食者で分解しても、ソレはゆっくり時間をかけて自然分解させているらしく、【ノア】曰く、俺が破壊したカウントにはならないらしい
難しい、なのでバフにしたけりゃ自分で武器を破壊しろって言うことらしいが
今此処でバフ欲しさに足を緩めたら終わってしまうので此処は敢えてスルーする
ソレにどうやら第二陣の熱烈な歓迎がお待ちしている様だしね
しかも不穏なことに第二陣は相手の周りを浮遊するばかりで一切此方に向かってきてないのだ
恐らく、最後の隠し球があの浮遊している武器にある
そう考えながら
「まぁ、止まる訳にはいかないんだけどね……」
そう考えながらさらに速度を加速させる
そして少し傷つけられれば良いやとでも言うかの如く弱々しい攻撃が此方を貫きそうになるが軽く回避して相手の目前に躍り出ると
「『集まれグングニル』【豪雷深淵】【魔剣創造】」
理不尽って言葉の意味を知っていますか?
あ?知らない……貴女もアザトースも弱者に対してもう少し加減しましょうよ、前世の経験なかったら俺終わってるぞ!?
あれー?こんなに強くする予定なかったのに……




