腐蝕神は腐蝕……神?
ぬおおお!!
書いてたデータが飛んだ!!
………え?
何で、どうして、は?あり得ない、アイツが此処にいることなんてあり得ない、此処は異世界だぞ?死後の世界だぞ?けど、俺の顔を見てソノ言葉を発する相手として第一候補に入ってしまうのは
「光華?」
…………一瞬お互いの沈黙を残した後に
「「…………………」」
お互い目を逸らす、うん気まずいことは目を逸らすに限るね!
邪ソンが『お前何やってんだ?』と言う視線が此方をとても強く射抜いている
だって、まだ生きてると思っていた向こうの妹が何故か摩訶不思議な格好でこっちに来ていて、あと少しで血みどろの決戦を開幕させていたかも何て死んでも信じたくないじゃん?まぁ、一回死んでるけども
「はぁ……お前ら面識あるんだろう?で、別に仲は悪くない……何があったか話してみろよ?」
こう言う時に理知的な大人って便利だよね……なんでかって……こう言う時仲介してくれるからね……
まぁ、個人的には話したいとは思ってはいた
何で此処にいるのか、どうしてそんな風になってるのか……根掘り葉掘り聞かないとなあ!
「あー、そりゃあ……なんかゴメン」
妹の死んだ原因を聞いたら九分九厘俺のせいだわ、コレ
「いや、私も不用意にVR機器に手を伸ばした結果こうなったから仕方ない」
そう言う妹の目には此方を責める怒りの色は見えずに、完全に此方とまた会えたことに安堵している目であった、今でも兄と慕ってくれていることは本当に嬉しいが……
「お前少しくっつきすぎだ……もう少し離れろ………」
そう苦笑しながら妹を離そうとすると般若の形相で此方を睨んできて一瞬で硬直してしまい、離すことができなかった、うんなんか昔からこう言うところあるよね……何か変に懐かれていると言うか…何と言うか、そして邪ソン……お前は哀れみの視線を向けるな………惨めな気持ちになるだろうが!
………さて流石にそろそろ馬鹿なことを考えるのはやめようか……はあ、ため息が出るのが止められない
流石に迂闊であった……まさかVR機器そのものが異世界と通じる門になっており、ソレを通じて妹が異世界に連行されるとは予想だにしなかった……
と言うか俺が頭にクリティカルヒットを喰らった時にVR機器壊れなかったのか?
流石に精密機器のくせして頑丈すぎやしないか?
と考えていると
「うん、私もアレは事故なんかじゃなくて『故意的に起こした事故』だと思ってる」
おう、お前のデフォルトで心を読んでくるのか……まぁ、コイツは素でわかりそうな気配があるけどな………
うん、と言うか前世から素で心読んできたわコイツ
俺は頭悪すぎるから人の顔色を窺うのが得意だが、コイツはコイツでわからなくても良いことを一杯知って苦労しそうだな……
と言うか今一番気になることは……
「あ、コレ?これは私……麒麟族だから角が生えてたけどなんか変装とかの時面倒いから根本からグイッと…」
おいコイツ自分の体の一部の角を折りやがってた、どうりで中途半端の長さの角だな……とは思ったよ、と言うか麒麟の角とかレアドロップ素材じゃね?
「あ、もしかして欲しい?何なら今からでも残った角を……」
オウジーザス思ったより過激な方法でヤバいことをしそうになっているので……
「やめい!別に麒麟の角には興味はあるが人を傷つけてまで欲しい代物でもないし!」
そう言って自身の角を中腹から折りそうになっている手を無理矢理止める、く、コイツどんなステータスと腕力してるんだ?
あれ?なんかコイツ……体に何か巻きついて………
「ぬわあああああ!!」
いきなり触れた今までとは確実に違う感触に驚きながらゴロゴロと転がって行き、そして部屋の角に頭をぶつけて上から物が降ってきた
うん、軽くトラウマ刺激するのやめてもら……ぶべぇ!
「………………痛い…」
そう呟くと
「大丈夫?生きてる?前回は其れで死んじゃったんだよねえ……」
何故か呆れを交えて此方の安子確認をしてくる妹、そうですね、確かにVR機器の事故とはいえ俺が凡ミスしないでいたら二人とも生きていたかもなあ!悪う御座いました!
心の中で謝罪の言葉を思い浮かべながら妹に謝っとく、心の中だけだけど
そんな風に考えていると
『ナニモノダ……』
やけに低い声、尚且つ地面からゆっくりと這って出てきそうな声をした『誰か』が此方に質問を飛ばしてきた
驚いて首がもげるかもという勢いで周りをみわしてみるが何も居ない、邪ソンに視線を飛ばしてもゆっくり首を左右に振るばかりである
え?どう言うこと?と考えながらうーん、うーん、と唸っていると妹の首元から白い蛇が顔をもたげて、また声が発せられる
『ワガムスメニテヲダスナラコロスゾ?』
えーっと、機械的で抑揚のない声だから少しわかりづらいが、意味的には……
『オウテメェ、何私の娘に手ェ出そうとしてるんだ?豚の餌になりたいのか?』
………昔同級生の劇で
『三匹の豚』の替え歌的劇をやっていたクラスがあって
三匹の子豚がレンガの家に行くところまでは一緒なんだけど、大釜の中には狼ではなく三匹の子豚が入っており、その三匹の子豚の肉を狼と母豚がモグモグと美味しそうに食べていると言う、大抵の人がゾッとするような劇をしていて
そこでふと……そもそも豚は肉食うのか?と疑問に思って調べてみたら……
豚は雑食性だから割と気にせず肉を食べるらしいです
……うん、自分で考えて自分で怖くなるってこう言うことなんだね……
「違いますよ、俺は前世(?)でコイツの兄だった者です、貴方が今まで妹を守ってくれたのなら感謝しますが、流石に妹に欲情する兄は居ませんので一応は警戒を解いて頂けるとありがたいです……その生きた心地がしないので…」
俺が現実逃避気味に思考を展開していたのも妹から発せられる濃厚な死の気配から視線を逸らすためである
正直言って今まで何回死にそうって思ったことやら……
そんな風に考えていると
『ソウ……ナノカ?』
俄には信じられないと言う風に妹に疑問を投げかけ……アレ?蛇が質問してるんじゃないのか?アイツ今絶賛気持ち良さそうに体を布団に投げ出して眠りこけてるから……あれ?アナタお化けすか?
「あ、そういえば二人には見えてないんだね……紹介するよ、私の生まれ故郷が壊滅した後一人で放浪することになって死にかけた時に私を助けてくれた『腐蝕神』です」
うん、名前物騒だね……
「妹を助けてくれたことは感謝しますが……名前から推察するに『腐蝕』を司るお方が何故腐蝕とは対極にある死にかけてる人間をお救いしたので?」
流石にこれは聞いておかなければ全く安心できない、確かに妹を助けてくれたことには感謝も恩義を感じている
が、ソレら全てが妹を傀儡にして操ると言う目的の為にやっているだとしたら俺は妹の恩人だろうが何だろうが喰い散らして殺す
……まぁ、どんな目的があるにせよ妹を助けてくれたのは事実だできれば穏便に済ませて体から出て言ってくれたらありがたい
『別に私は【腐蝕神】などと大仰に言われているが別に『腐蝕』を司っているわけではなく……まぁ、ソレに近しい現象を起こしているからそう呼ばれているだけだ……助けた理由に関しては……こう言っては悪いかもだが………あそこで死んでしまっては彼女が…娘があまりにも惨めでな…珍しく助けてしまったのと、意思の力で負けてしまい、半ば強制的に力を扱われてしまったな』
急に流暢に離すなと思ったら妹の背中から黒い靄が出てきて、やがて人型を型取り出して
言い方悪いが巨乳の露出度高めの豪奢なドレスを纏った母性たっぷりの顔をした女性である、あ、もっちのロンで仮面は付けてないよ(コイツらは付けないのが常識らしい、邪ソンは今は外しているが外ではデフォで付けている)
と言うか………うん、
「なんかすんげー懐かれてるな……お前…」
そう苦笑しながらあいも変わらず握られてる手を見ながら妹がべったり腐蝕神と一瞬目をかわすが、同時に苦笑する
やはりコイツの一度気に入ったら絶対離さないと言う鋼の意志は他人から見てもかなり異常らしい……まあ、昔あんなことがあった上に、頭が良すぎる為に気味悪がられて何処か遠くに行かれるか、捨てられるのではないか?と言う不安も混じってはいるのだろう、あくまで予想だが……
「さて、明日からどーするかな……」
妹に手を握られながらふと漏らした言葉は確かに妹の耳に届いてしまった
「明日何かあるの?」
…………しまった、別にコイツを巻き込むつもりはないんだけどな……巻き込むのはヴィオ(クソ馬鹿)一人で十分、あんな脳みそまで筋肉で出来ていそうな人物は四六時中ずっと走り回せておけばいいんだよ、実際何も考えさせないで走らせておくほうが下手に動かすよりよっぽど此方の為になる
まぁ、明日からの戦いは少し、ほんの少し厳しいものになりそうだな
……なんせ俺一番の能力の【ノア】と【命の源泉】の能力を完全に使えないで、どうにかして完封しないといけないんだよなぁ
と考えていると
「明日……何の用事が……ああ、今日朝城門から入った時にやたら『新しいクイーンズブレイド云々カンヌン』って言っていたのはお兄の試験があるから騒いでたのね」
……この人の思考形態はスパコンを超えてるんじゃねーかと時……々
「なあ、お前……一つ聞いていいか?」
そう質問すると、何だ?みたいな感じで首を傾げながら一回深く頷くので
「実はさ俺の能力の一つに……こう……万能補佐型のアナウンスさんみたいな存在がいるんだが…」
そう、コイツの頭なら【ノア】の回復修繕の手伝いをできるのではないか?
「なるほど、ソイツの修復、改善をして欲しいってことね……良いよ、手を出して明日に間に合わせる為に超特急でやるから」
あ、コイツ確か1から10どころか百とか千とか余裕で悟れるタイプの人間だった
しかし、今はとても心強い為、言われるがままに手を差し出すと
「うっわあー、ドン引く位内部構造終わってんね……」
と凄い、今まで見たことないくらい酷い顔でドン引きしているので興味本位で
「どれくらい酷いの?」
と聞いてしまった
「人間なら骨と筋肉がない、車なら左の前輪だけ残っていて運転手が右側に座ってる………けど、コレは優秀だね極力稼働しないのと、壊れた部分を幾つも接続させて擬似的に別の部位の役割を補って何とか今まで凌いでいたけど……どうやったら此処まで酷いことにできるの?逆に……」
そう言われても言葉では説明しづらいけど、コイツらなら伝わるか?
「アザトースと死ぬ気で鬼ごっこした時に色々アドバイス貰った」
そう言うと妹は
『アザトース?誰それ?』
腐蝕神は
『なるほど……彼は中々厄介ですね……』
と正しく理解してそうな顔をしている、ともすればその顔はイタズラが過ぎる子供を呆れている顔のようにも見える
「ねえ、アンタアザトースのこと知ってるの?」
そう気になって聞いてみる、多分だがアザトースはコレから執拗に俺のことを狙ってくる……と思う
コレに関しては勘の部分が大分大きいが…ソレでも大きく外れているわけではないだろう
何せアイツの帰る直前の目は
新しい玩具を見つけた♪
と言う、無邪気な子供の視線であったから……
しかし俺にはアザトースの能力も過去も、人物像も何もかも知らな過ぎる
だからどうするべきか?
簡単である知っている人物から聞き取り調査を行うのである
「そうですね……一応私は彼の過去を……能力を大まかにですが知っています…しかしながらソレは人伝に聞いた話でもしかしたら間違った情報もあるかもしれませんが……構いませんか?」
そう言ってくるので……少し怖く思いながらも一回頷くと
「では……私が知っている話を語りましょう」
そう言って語り始めたことを要約すると
・アザトースは『混沌』の第一配下なる存在の配下であり、その才能を買われて万能錬金の力を与えられた
テメーこのやろう第一配下……会ったらこの世に生まれたことを後悔させてやる!
・アザトースの配下は主に一人で苦労人
……はて?コレはいる情報なのか?確かに苦労人の気配は……めっちゃ感じたな、アザトースアイツ良く放浪してるから…あ、この国にも放浪して幹部たちを困らせてる迷惑人が一人いたわ……下手に考え過ぎると思考読まれておわりそうだわ
・アザトースの奇行は第一配下がいなくなってから、彼の目的はもしかしたら……
……人体錬成とかやめてよね……俺…かの有名な錬金術師の漫画読んでるから一つ言えるとしたら人体錬成の錬金術をするのは馬鹿の極みだと思ってる
最初に想定していた奴とは違うけど、コレはコレでいっかあ




