喧嘩は他所でやれ♪
「ふむ、では頼んだぞ!」
王女が衛兵と思われる人物と親しげに話しているのを俺らは遠巻きに見つめながら
「俺たちさあ、たった1キロしかない場所を半日くらいグルグルしてたんだね」
心の奥底から思ったことを吐露していると
「「…………………………」」
約2名完全に沈黙してしまったあーあー、なんか俺を非難する声が聞こえるけど気のせい気のせいわかんないけどすっごい形相で睨んでる女王なんて知〜らねっと
現実逃避をしすぎるとそろそろ現実に戻れなくなっちゃうしね
(そもそも異世界に来てるだろテメー)
と誰かにまた突っ込まれたのは多分気のせいだ気のせいだ…
そう考えて何も考えない様にしないとなんかそろそろ鬼の形相で女王が襲ってきそうな気配を醸し出してるからね………アレ?もしかして……
「ねぇ、邪ソン?」
絶賛撃沈中の邪神の末裔さんに質問を投げかける
「何ですか?私はナビゲートすらできない役立たずです………」
あー、こりゃあ重症だ……多分俺に馬鹿にされというか普段慣れ親しんでる道を余裕で案内できなかったことを後悔してるのかな?
まぁ、別にソレに関してはそこまで怒ってないんだけどね……
「まぁ、それに関しては特に何も思ってないから……邪ソンってもしかして女王とタメ?」
一応あり得ないと思いつつも気になったことは質問せずにはいられない性質なので質問すると
「いや、俺の方が多少年上だね……そもそも唯一国家の構想は俺がアイツと酒の席でポロリと溢した夢物語だからな……もう随分と時間がたったのに…まだ追いかけてるし…その当時は輪廻転生の方法なんてなかったからマジで見つけてくるなんて思いもしなかったよ……ソレにその後すぐに放浪の旅に出たから俺のことなんてとうの昔にいない人物に認定されていたとしてもおかしくないのにな……今代は偶々あの時の人格が強く出てきたらしくて俺の名前を読んで手を差し伸べられた時は本当にビックリしたよ…」
思い出話というふうにボロボロと出てくる……こいつもコイツでガード緩いな酒の席になったらそりゃあ情報は湯水の如く湧き出てくるだろうな
「ん?お前一体何歳なんだ?」
そう問うと
「いや知らないねだって邪神が死んだ後の肉体に別の魂が宿った……ソレが僕の原型だからね…」
…………ほおほおほお、成程成程コイツはつまりこう言いたいのかな?自分の素性なんてどうでも良いでしょ?と
「テメェ、何でそんな重要なこと言わねぇんだ!オメエ何かの儀式の餌にでもされたいのか!?」
思わずそう叫んでいただって仕方ないだろう、なんせ邪神の子孫と邪神の体に宿った魂では全く価値が違う、そりゃあ他国も入れたくないって思うわけだ!
「あ、ちなみに魂の元は本当に邪神の直系の子孫だからね?」
もっとやばいわ!だってそうなると一歩間違ってたらお前邪神になってたとしても笑えねえ状況だったんだろう?良く生きてたな……どんだけ豪運なんだよ……
と呆れ果ててると
「まぁ言いたいことはわかるけど……彼が彼なら良いじゃん」
アンタはな……たくっ人間は自分の都合が良いとすぐさま思考停止をする……まぁ素直に喜べるってことはいいことなんだろうけどな
お偉方になると泥に塗れた上流貴族やら何やらの力に揉まれて性格がだいぶ変わって何でも自分至上主義になってしまう奴が多いからな、ラノベとかだと
まぁ、結論人間そんなに腐りにくいってこったろう
王女の顔パスで何とか王城に入ると其処は豪奢という言葉一番似合う様な国の技術を寄せ集めた建築やら、最高級の美術品、調度品、家具等々が広がっていた、この中でこの光景に度肝を抜かれているのはただ俺一人であった、しかし不可思議に思い
「なぁ、何でお前は驚かないんだ白?」
と今だにイカ焼きの頭をモムモムしながら歩いている白に呆れを通り越した尊敬の念を抱きつつ問うと
「向こうだとこんな歓待当たり前……天使能力者はそれだけ希少で貴重、尚且つ扱い安い子供がなることが多いから鞭と飴で言うことを聞かせようって言う阿保な輩が多かった。」
何処となく威圧感を放ちながら嫌な記憶を思い出したとでも言う様に軽く舌打ちしてから苛ついてる雰囲気を隠そうともせず豪快にイカ焼きを飲み込んでいき、黄金色の液_____
「だあああああ!!!」
右手持っていたコップを思いっきり弾き飛ばす
「未成年はアルコール摂取駄目!絶対!」
と言いながら暴食者で一滴も残さない様に喰っていると
「いや、お酒って知らなかった」
と白が変なことをほざき始めた
「ほう?あんなエタノール臭いのに気づかないなんて花粉症かね?」
と煽りのつもりで言うとこくりとうなづかれた後に
「花粉症というか、天使能力の反動で味覚と嗅覚の一部に障害をきたしている、ひどい時には何も見えない聞こえない、味がしない、匂いがしない、感触がしない、の嫌なことのオンパレードだから」
オウ、まさかまさかの反動があったとは……匂いがわからないんじゃお酒とはわからないのも仕方ねーか………いやちょっと待て流石に色合いでわかるだろ?
悶々と悩んでいると
「全く『酒』の一つや二つ若いもんが飲んだとして害にな……うぉ!?」
邪ソンに首根っこを掴まれた王女様はテヘッと言う風に舌を出しているがそんなことしたって駄目ですよ?という風に拳骨一発を入れて死体を引き摺る様な様子で迷いなく廊下を……ああヒールに引っかかって下のカーペットがぁ!?
そうヒヤヒヤしながらついて行くととうとう一つの扉の前に到着した
というか長すぎだろ此処まで……何だろう此処までで一年くらいの気力を使い果たした様に感じるのは何でだろう?一週間も経過してないはずなんだけどな
「ふぅ、やっとついた……長かった……」
………主にお前らが道に迷ったのが原因ではないでしょうか?
そう文句を言いたくなったが……口を開くのも憚られる程に疲労してしまったけれど此処で少しでも行動を止めてしまったら寝る!その自信がかつてないほどある!
何の自信だよ…とボケツッコミを自己完結しながら扉を開こうとすると
「動かない……!」
そう言って更に押し込もうとすると出てはいけない音を奏で始めたのだ
「………はい、すいません…」
そう言って後ろに一歩下がってからゆっくりと向こう側に視線を外すと
「あー、今日は空が綺麗だね〜」
全員に殴られた
「まぁ、冗談はさておき……これは私が触れてる状態じゃないと開かない設定になってるんだ……だから開かなくて当然寧ろ破壊行動に出て良くカウンターの対象にならなかったな…」
かうんたー?………カウンターって何物騒なもんつけてんだテメェ!?こえーわ、オメエやっぱこえーわ、扉にカウンター機構を設定するあたり頭おかしいんじゃねぇの!?
そう心の中でギャーギャーワーワー叫んでいると
扉の向こう側から異変があった
「……………!」
「………?」
「…………………!!!」
言い争いってある意味で平和だよね…尚喧嘩に発展してソレを止める人達がいる前提だけど
喧嘩に発展しても周りに止められるくらい余裕のある人達がいるってことだからね
でもね一つおかしいことがあるんだな…
向こうから聞き取れる音が対人に向けるソレじゃない気がするんだよ
強いていうならミサイルを撃墜する勢いのソレに近い気がするんだよね?
ソレにさっきから白が物凄い勢いで転がってるから震源地其処だよね?
と言うか白はいい加減イカ焼きを食うのをやめなさい、地面について汚らしい上に口から三回出てたのを俺はしっかりとこの眼に捉えてたんだからな?
………
「……女王仲裁に入らなくていいのですか?」
と一応無駄足だろうが聞いてみる
「え?だって何か楽しそうじゃん♪」
ああ、やっぱり脳髄まで戦闘狂のお方でしたか……
邪ソンに話を聞いた時から何となく予想はしてたんだよ……だって喧嘩を止めないで煽るって下手したら乱入しかけたことがあるって……確実にそうだろうってなるでしょ?
何だろう一日で何回溜息を吐かせるんだコイツらは?
そう思って頭を振っていると
「まぁ、取り敢えず新人に示しもつかないし入りますか」
と扉を一気に開くと中は……
「おお!ヴィオに白久露と白露も最近振り!」
そう言って手を振り上げながら近寄って行こうとすると
「オラァ死ねぇクソガキィ!」
「ハハッ!年食いのババアの攻撃なんて聞かないわよ!」
…………うん、何だろうな………今ので切れた
「ヴィオ、ステイ」
まずは攻撃力のおかしいこっちを契約の縄で押さえつけて
「クソガキ教育の時間だ」
大地魔法を操り地平線の彼方に弾き飛ばす、取り敢えずうるさい奴らはコレで落ち着いた
ついでに犬の服従の格好でも………
そう悪巧みをしていると
「貴様何者だ?」
オウ、随分貫禄のあるおじさんだな……歴戦の猛者感満載すぎて一瞬完全に硬直して見上げるしか出来なかったのは俺のせいじゃない
だってこの人身長180なんてとうに超えてるよね?ムキムキだしね
「え?あ、ああクイーンズブレイドの試験というものを受けようと来ようとしてましたが……其処のマリさんに一時間くらい道迷われた挙句に王女には思考を操られてめんど臭いことになりかけたし、今現在はヴィオと、クソガキのせいで切れました」
そう屈託のない笑みで誠意を持って伝えると相手は一瞬眉を上げて何かを思案した様子であったが、ソレを一切感じられない流暢な仕草で手を出してきて
「私は王花…一応ダイヤモンドの席に着かせてもらっている、がもし一緒に働くことになれば同僚として色々しなんするやも知れぬからよろしく頼む」
お、先刻の思案を一切感じさせない言動できるなこの人
「ええ、よろしくお願いします」
俺も薄い笑みを貼り付けて握手に応じる
が、互いに懐疑心を抱いているのは確かである
「…………二人と………」
何か余計なことを言い出す気配を感じたのか白がヴィオの上に被さって発言を控えさせた、変なところで察しがいいなお前は
「さてと、コレで新人(仮)が到着したわけだが全員……アクアマリンが欠席だが話の進行に必要な人材は最低限いる為に話を進行する」
というのであのクソガキ、ノワリンとかいう名前なんだな……と考えていたら
「バリィぃぃん!」
と奇怪な音がしたので横を見ると
「お、お速い帰還で?」
と煽る様に言うと
「よし、こ………」
「上等だよ………」
いきなり出現した圧倒的にまで暴力的な気配で俺以外の全員も沈黙を選択せざるを得なかった
「ほう、続きを話したかったら別にどうぞ?」
小学校の頃にいためんど臭い教師の話し方遠慮してもらって良いですか?
何でこんな風に怒られるかわからない……
と考えたが流石に無理があるかと考えて両手を上げて降参の意を示す
「はい、すいません言いすぎました」
と言うと同時にクソガキは能力を発動して此方に牙を向けようとした結果
「死にたいのか?」
ジャガーノートさんの逆鱗に触れてしまった様だ、まぁ主導権は白久露に握られているから普段からホイホイ出てくるなんてことはまずあり得ないだろうがソレでも意識して表に出てこられたらと考えると少しゾッとする
なんせコイツ俺のためだったら何でもしそうだからな
と言うか今更ながらだがジャガーノートも相当の圧があるな……なんせクソガキがビクッてなって完全に萎縮する程度……いや性格の変わり様に驚いてるのか?
まぁどっちでも良いが…
「まぁ諦めることだな俺はヴィオ達は俺の配下だから一応守ってくれる、まぁ俺もある程度自衛はできるけどな……」
此処で本当にある程度なのが悲しい事実…
「さてと、いい加減話を進めないか?君たちのせいで彼のお方の手を煩わせるなど言語道断だぞ?」
それまで沈黙を保っていた一番の危険人物クインが急に口を開き始めたので
「取り敢えず黙っとけ」
とクソガキに耳元で囁いてから
「すいません、いかんせん初めての場所で少しテンションが舞い上がってしまって……お恥ずかしいです……ははは」
冗談を交えながら下手に出ると仮面の奥の目が一瞬剣呑な雰囲気を孕んだと思い失敗に感じられたがすぐに気配は消えて変わりに
「そうか、では今回の話の進行は私くめに」
最初のそうかは此方に、あとは女王に向かって頭を下げてるあたり本当に陶酔の具合が一線を画しているのだろう
そしてもう一つ気づいたことがあった
「すいません女王一つ確認したいことがあります」
そう言って席を立って了承を受け取る前に
「クイン……アンタさっきから何度動いた?」
二人の間には一瞬この空間には似つかわしくないほどの剣呑さと走馬灯を見れるほどの死の気配が高まった
ようやく……ようやく……知らない奴らがなんか出てきてここまで遅くなったけど…ようやく…




