旅の人ってこの世で一番信頼ならない文言だよね
「なるほどなぁ、つまり、簡略化すると祓え式ってのは妖術を扱えない人たちが自己防衛の為に扱い始めた術式であり、いつのまにか立場が逆転してたってわけね」
説明を軽くかいつまんでまとめてみるとしっくり来るのでアザトースから拝借した2本の小刀をクルクルと光に反射させながら太陽に向かって翳す
目元に小刀の影が落ちるがソレでも必要以上の光が目に入ってくるために僅かに瞼を動かす
「眩しいなら無理すんな。」
と呆れられた様に声をかけられるので少し意地になって
「眩しくねーし!」
そう言って音山の背中から降りて少し急ぎ足で先の道へと先行する
「さぁ、未知の道へ!」
少し格好つけて言うと
「………駄洒落ならつまんねーぞ」
呆れんな阿呆共が
「はあ、何かないのか?異世界に来たら気分上がるとないのか?お前ら…」
何で異世界の心得を教えなきゃいけないのか全くもって意味がわからない…
まぁ、いいけど
そして異世界はなんたるかをこのまま一時間コースで説教してやろうかと頭の中で画策していると
「…………ゃ…………て!!」
声が聞こえてきた、僅かだったがソレでも確かに助けを求める声だ
そう判断してからは即座に声の方に駆け出そうとして
「何してる?」
音山に首根っこを掴まれた
「おいおい、まさか聞こえなかったのか?」
呆れ半分、冗談半分で問うと
「?」
まぁ、コイツは仕方ないか……問題は
「お前らは聞こえたよな?」
非戦闘員のコイツが小さな声を聞き逃すってのは別段不思議な話じゃない…元々非戦闘員のコイツに戦闘能力を求めるってのも酷な話だ
けど、コイツらは根っからの戦闘員だ……戦場では何が命取りになるかわからない以上全てを把握してどう動いているかを考えなければならない……コイツらがソレをわからないはずがない
そう思い視線を飛ばすと
「………ふぅ…」
白華は完全に気づいてないと言う風に首を傾げていたが鈴山は完全に気づいていたが面倒ごとはゴメンだねと言った顔で完全に無視する方向に決め込んでいたらしい
完全に自分と、その周りにいる人だけ幸せならソレで構わないと言ったタイプの人種だ
別にソレが悪いわけじゃない
周りに寛容すぎる人間はいつか引き際を見失いずるずると引きずっていつか大惨事になる
切り捨てる人間も必要になって来る
「今はまだ抱えてもいい時期だろ?」
そう一言投げかけると
やれやれと言った風に頭を振り、そして楽しそうに笑みを見せると
「じゃあ、行こうか。」
そう言って走り出す
「大丈夫ですか?」
声が聞こえた方に走ること数十秒、何処にいたのか完全に見失い色んな場所を探し回った所でようやく発見出来た
「え、ええ……あ、貴方たちは?」
この状況下では至極当然の質問だが違和感を感じる質問だ、そう思い鈴山に僅かに視線を飛ばすと
「私達は旅の者です……向こうにある闘技場からの帰りでして。」
即座に合わしてくれた、他の二人が変なことを言い出しそうだっのでお口をガッチリ塞ぐ
目の前の人が完全に訝しんでるが
「ああ、彼らが口を開くと少々面倒くさいことになるので気にしないでください」
とフォローなのかディスってるのかわからないことを言っており原因を作った身からすると苦笑を漏らす案件であった
「で、どうして貴方は此処に?」
核心をつく質問だ、此処で変なことを言えば即座に切り捨てる、そんな気配すら見せている鈴山はやはり頼りになる
コイツは何処となく怪しい
まず、こんな樹海地に(俺たちを除く)一人で入る人物は極めて少ないそうだ
闘技場に乱入してきてくれたリュエルが言うにはこの森はファブニールことノースが張った結界がある闘技場があり、そこを中心にして周りに強力な魔物が跋扈する樹海地帯が形成されているらしい
俺は一人だったら完全に木の栄養になってだだろうな
まぁ、リュエルなら分身でも指一本で十分だーって言うんだからこの世界って理不尽だよねえ
けど、コイツはどうだ?
持っている武器は貧相な剣一本下手に振り回せば簡単に折れそうでいてけれど傷ひとつないことから使い手と作り手の技術が伺える
さらにマントを羽織っていて一瞬見ただけでは識別しづらいが体つきが異常だ
上半身は頼りなく下半身もそこまで太くはないと思っていたが一瞬覗いた足元は信じられないくらい引き締まった足が見えた
おそらくは行脚、忍び、伝令係のいずれかの任務を主とした人物であり戦闘能力に関して言えば俺に毛が生えたレベルだろう
え?なんで俺に毛が生えたレベル?
説明しようではないか
元々俺が弱い種族の地龍ということは知っているよな?
地龍というのは大地に密接に繋がって大地から様々な恩恵を受け取って生活する種族の総称のことを地龍と呼ぶんだ
けど、自然つまり大地のエネルギー放出というのは日に日に変動して
変動の仕方は完全に予測不可能なのである
しかも無理に大地からエネルギーを搾取しようとすると大地から奪っちゃいけない方のエネルギーまで搾取してしまい大地に深刻な被害を与えてしまうのだソレはひいては将来の自分の子孫や自身の生命活動に影響を与えてしまうのでなるべくそういうことがない様にエネルギー管理はしっかりしているのだが
俺の場合ソレが出来ない
元々人間だったというのが一番大きいのだろうだ地龍の上位龍人、ハイ・ドラゴニアには一つ欠陥があった、いや、俺だけの欠陥である
ソレは地脈を視認できないと能力を十二全に扱えないのだ
地脈というのは星のエネルギー回路でありコレを刺激されることによって星は様々なエネルギーを放出するのだ
本来このエネルギー回路は異世界人の転生・転移、星の住人の輪廻転生、惑星の保全にエネルギーを使う為にその星の住人には見えない筈であった…が、
大地に密接に繋がる地龍は大地に起こった重大な異変に適応する為に眼を進化させ地脈の視認を可能にしたのだ
ソレからわかったことではあるが
地龍であれば地脈に干渉可能である、と
だが、コレに関しては干渉すればするほど自分の首を絞める結末になるので誰も好き好んでやりはしなかった
さてと、少し話がずれてしまったこの地脈が見えないというのは地龍にとっては重大な問題であるのだ
地龍というのは地脈をみてソレの灯りで他の様々な繋がりを視認するのだ
本来であれば目を瞑っていてさえも眩く輝く太陽の様に輝いているので地龍の『基礎のき』
で、できて当然とまで言われている技術なのだが俺は見えない
まぁ、人間に視認しろと言ってもできないのだから何かコツがいるのかもしれないが……一体なんだろう?
しかも、更なる問題点がアザトースに施された刻印だ
この世界では魔法とスキルは同一視されており
魔法陣を通して魔法を発動するのも
スキルを通して魔法を発動するのも
どちらも同一視されている
けれどこの根幹には多少の差異があり
魔法陣は人の手によって
スキルは神の手によって
神と人の手、どちらを信頼するかは火を見るよりも明らかである
つまり、今時の子供達はスキルを扱うことに完全に人生を捧げている為に魔法陣は衰退の一途を辿っているらしい…
けれど魔法陣にもいい所は勿論ある
魔法陣はスキルとは違い同時展開が可能なのである、幾ら展開しようが展開するだけなら無料なのである
けれどそこから扱うのは自分の技量次第にはなってしまうが、ソレでも有り余るメリットではある
けれどスキルばかりを使う理由はなんなのか?
ソレは魔力消費の少なさである
スキルは神によって簡略化されたパズルだ
例えば500ピースあるパズルを元の形に戻せと言われた時に
魔法陣を扱う人物は完成した画像は与えられるが全部自分でやれと言われているのに対して
スキルを扱う人物は最初から完成したのを額縁に飾るだけで終わりという何という差別であろうか
しかし、コレより酷いのが魔術である
魔法やスキルよりも古典的な技術であり魔力の元である魔素を使うことで扱える
もともと
魔素→魔術
↓
魔力
↓
魔法・スキル
こういう形で魔法形態は成り立っている
この前紹介した魔法の種類の前提条件にあるものであったが、尺の都合上勝手にカットさせていただいた
さて、説明に戻ろう
魔術というのは人類がまだ魔法もスキルも手に入れなかった頃自分達で自衛の術を手に入れようと画策していた頃の馬鹿の産物である
元々『強制解除』や『反魔法』などを警戒する為に面倒くさいほどの複雑化した術式と
魔素を視認できなければ扱うことすら不可能な緻密な魔力操作をしなければいけないという無理ゲーをこなしつつ魔術を放てなど酷い話だ
というか、俺がソレをやらなきゃいけない話になってしまったのだ
先刻の表を思い出して欲しい魔素の下に魔力となっていたであろう
魔力というのは魔素をより洗練させ、そこからスキルや魔法陣に流し込むことで初めて意味をなすものである…のだが
俺はアザトースに
『魔法を封印する刻印』というものをやられて暴食者で喰ったのだが……
それは表面上であった
俺が喰ったのは魔法を扱えなくするという表面上の刻印であり本命は
『魔力を練れなくする刻印』
一体何処からこんな鬼畜な刻印技術を学んだというのか呆れる他ないが俺にとってかなり最悪なのは間違いない
何故か?
地龍というのは元々魔法やスキルを扱うのが苦手で魔術と肉体で戦うスタイルではあるのだが
魔術というのはどうしても魔法やスキルに押し負けてしまうことが多いのだ
どうしてか?
ソレは魔力の洗練されているか否か
魔素はいわば纏まっていない鉄の玉を適当に詰め込んで放り投げる子供
魔力は纏まりのある銃弾が悪意を持って飛んでくる
こう表すことができる、まぁ、此処まで言ったら阿呆でもわかる筈だ
詰んでると
魔力は例え暴食者で吸収しても扱えない上に魔素に分解することは不可能なのだ
まぁ、不幸中の幸いが
闇魔法は体力
暴食者は魔術
ノアに関しては自己補完の範疇でどうこうしてくれる為に問題はないそうだが
あれ?これ完全に俺能力負けしてねーか?
〈はい、してますね〉
ごふうー!!
み、味方からのとんでもない裏切りもとい一撃をモロに受けちまったぜ、たくっ、近くにとんでもないやつが潜んでたぜ
まぁ、冗談はさておき、マジで俺能力負けしてるわ……こりゃあ、味方に頼らんとマジで終わってるくね?
しかも、この調子だと他のスキルとかは全く使えないままだろうし
このまま魔術とかを極めた方がいいのかな?
〈言うほど魔術の才能もありませんがね〉
相変わらずの辛辣さだな
そう悪態をつきながら、目の前の人物に視線を向けることにした
これ以上自分に視線を向けると死んじゃいそうだから
そして相手を絶え間なく観察していると相手の方が先に折れた
「実は私は此処らへんの住人ではありません」
うん、知ってた
そう言うふうに見えるのか頭を抱えながら
ああ、どうしようと言うふうに続きを話す
「私はとある商人……守秘義務がある為に黙らせてもらいますが…敢えて言うとしたら名の知れた大商人でして戦争地帯に武器を売りに行く途中でした」
は?戦争地帯に武器売りに行くって戦争継続させたいの?馬鹿なの?
と言う視線が顔にまで出ていたのか
「勿論本来であれば止めに入るべきでした……けど、私はとあるお方の密偵であり、戦争商材を売っているところを現行犯で逮捕しなければ相手はのらりくらりと言い逃れをして適当な身代わりを作って逃走するのがオチでした」
あー、嫌な方向に知恵が回るタイプねー
ゲェ……と口から漏れたのがいけなかったのか一瞬相手の体が面白いくらい震えたので
「あ、気にしないでどうぞ」
と相手を促すと渋々頷き
「けれど、今回馬車に乗って目的地に着くと少し雲行きがおかしかったのです」
雲行きがおかしい?
「そこは戦争地帯だ天気予報みたいに何がいつ起こるかなんて誰にも想像できんぞ」
まるで、誰に向けて言っているのかわからない様に音山が気遣って言ってくれた言葉を心の中で反芻して
「つまり、戦争の導火線に油を注いだ阿呆がいたってことか」
そう言うと相手は顔を真っ青にしながら
心当たりがあるかの様に頷く
「まぁ、差し詰め金欲しさのあまりに要らぬ噂を流して敵対意欲を掻き立てて戦争道具を沢山売りつけてたんだろうねー、まぁ、ソレで報復行動に出られちゃあ自業自得って話でしょ」
そう一言言ってから
「まぁ、その人のことは確かに残念だったよ?知らないけどね、けど君さどうして此処にいるの?その人が死んだ時そこにいたなら君も本来死んでる筈だよね?」




