進化 下
「来い幻惑乃王【ファントム・パレード】」
そう一言発すると急に全体の雰囲気が変わる
「この領域内には真実は存在しません、存在するのは嘘のみです、さあ、貴方はどうしますか?」
そう一言告げると白露の姿がゆっくりと霧の様に消える
ソレに困惑するのも束の間目の前から炎を纏う拳が現れる
「ッッ!!」
本来のファブニールであればこの様な奇襲に醜態を晒さずに済んだかもしれない
が、今彼は能力の全てが狂わされている
白露が手に入れた幻惑乃王とは伝説能力であり、そこらの凡百な能力では太刀打ちが出来ないのだ
そもそも能力の等級と言うのは
通常魔法 ↑ 低
特殊魔法
ユニーク魔法
伝説魔法
神代魔法 ↓高
と言う風になっており
其々の特徴として
【通常魔法】火・水・風・土の四大属性とそこから派生した複数の魔法を一般に通常魔法と呼んでいる、主に魔力が少ない人物程魔法の精度が上がる魔法で弱者の魔法と呼ばれる由縁は此処にある
【ユニーク魔法】通常魔法に精神系統や回復魔法が加わった魔法であり、物によっては特殊な職業でしか手に入らない魔法がある
例えば暗殺者の【隠密】の上位交換の【隠匿】が良い例である
元来ユニークは通常魔法の上位交換であるが
更に上をいくのが
【特殊魔法】である
特殊スキルは【ユニーク魔法】の雑多な系統に加えて闇、光、上位の結界を扱える、コレを取得できるのは人類だと極一部に限られる
そして
【伝説魔法】は名の如く伝説級の魔法であり能力は先程まで紹介していた能力の一切を凌駕する能力であり【暴食者】のエネルギー絶対搾取【幻惑乃王】の絶対貫通などが特にわかりやすいだろう
【暴食者】に関しては人を相手取ると地龍が無意識下でロックを掛けており人を食らうことを禁じているが、本来視界入れた瞬間に全てを『喰らう』恐怖の能力である
そして【幻惑乃王】はどれだけ相手の抵抗や耐性が高かろうが無効持ちだろうが幻惑を相手に与えると言う一点に特化することによって絶対貫通と言う能力を得ることに成功しているのだ
さて皆さん不思議にお思いだろう
『神代魔法』とは一体何なのか?
ソレは神そのものと言うしか無い
コレを手に入れた人は人類史を見てもほんの一握りである上に能力の全容が誰にも把握しきれていないのだ故にコレの別名に触れることにしよう
その名は
『神徒』
そして、話は戻り
ファブニールは全ての能力が惑わされ本来の実力の半分も発揮できていないが
白露達はお互いの姿を認識できる上に白露から幻覚や幻聴、幻痛などの幻惑は掛け放題なのだコレは戦いですらなく一方的な蹂躙になると思われた
そう、思われた
しかし次の瞬間
「破!!」
ファブニールから地震の様な同心円状の破壊の波動が放たれて幻覚を含めた全てが蹴散らされる
そして
「ふむ、コレに対応するか」
そうファブニールが感慨深げに呟く先には先程までとは打って変わって窮地に立たされている二人であった
「貴様ら一体何者だ?」
そう独り言を言うファブニールのことをガン無視して
「来い朱雀」
とヴィオが言うと後ろに烈火を纏う紅蓮の鳥が現れる
「!?」
いきなり現れたソレに困惑する白露に
「私が主体になって攻めるアンタはアイツに幻覚かなんかを与えて混乱させてくれ」
と一言言うと体を真紅に染めながら突っ込んでいく
が、
「な、何でお前も来るんだよ!?」
すぐさまヴィオの考えは打ち砕かれる白露が後ろでの支援ではなく一緒に突っ込んで来たのだ、すると
「特殊貸与技術『竜殺し』」
そう言葉を発すると思うと全身武装をした白露が現る
「はあああああああ!!どーなってんだお前?」
ワケがわからんと叫び出すヴィオに向かって
「…………♪」
無言でドヤる白露
しかしながらファブニールからしてみれば
「………」
警戒対象でしかない
そして、動いたのは
「『竜波斬』」
同時であった
本来竜・龍に使えない弱点属性を軽く扱う技量に白露は驚愕しながらフルスロットルで足を回す
回避と攻撃に専念しなければ死ねる自信が彼にはあった
幾ら謎の人物から能力と鎧を与えられたからと言って油断するほど彼は自信家ではなかった
【幻惑乃王】や鎧も含めた全身武装は今の所仮初の力である彼がより能力を理解すれば彼の血肉となり更なる進化の可能性を秘めているだろう
が、彼がソレを知るのはかなり先のことになるのである
白露は自身の切り札の性能をあの一瞬で理解していた
対・竜、対・龍において絶大な力を誇る謎の『鎧』と
絶対貫通に特化した【幻惑乃王】
コレらはそれぞれ何度も使えば抵抗や対策が為されてしまうであろう
故に使いどきを間違えれば此方の首を絞めかねない状況なのだ
が、窮地に立たされているのはファブニールも一緒であった
自身の魔法の殆どが使い物にならず高い抵抗も貫通され弱点となる破竜の力を使いこなす存在
それがファブニールにとってどれだけ脅威であるか
しかし、ソレらを踏まえてなお思考する余裕があると言う事実に自信も呆れ果ててしまう
けれど考えれば考えるほどお粗末な力だと思う
幾ら貫通されようが、幾ら弱点で貫かれようが我が死ぬことはないのだ
そう考えると笑みが自然とこぼれ落ちてしまう
「ふふふふ、あっはっはっはっは!!」
そして再び牙を剥くために今は耐える
「ッッ!!」
狂った様な笑い声を聞きながら一番出遅れてるのは自分だと嫌でも痛感させられる
奴らは自分よりも一歩先のところで戦いを繰り広げているのは理解できる
ファブニールの拳が振り抜かれるたびに暴風が巻き起こり魔法を扱えば天変地異を起こす
正に暴力の化身
けれど今の自分の状態を把握しきれているかと問われるとソレも問題がある
今の私は一時的に擬似進化を果たしていると思う、あくまで思うだ、しかしながら情報が少ない上に此方の状態を鑑みる時間がないのもまた事実
相手の一挙手一投足に視線を外せない
だから自分の状態に目をやる暇もない
最悪な悪循環と言えよう
けれど
「まぁ、考えるよりこっちの方が性に合っているから良いけどね」
そう一言呟いて前に体重を傾けて走り出そうとすると
「焦りすぎだ」
と一言スロモーションで耳の奥へと到達して複数の魔法が此方に到達する
「全く、何なのかと思えば貴方ね私の恩人様の仲間を虐めているのは。」
と見た目はありきたりなドレスに似ているが太ももの付け根あたりから深い切れ目が入っており、下着が見えることを気にしていないのか?と言う服に身を包んみ深い青色のロングヘアで、側頭部あたりに握り拳大の二つの塊があると言う不思議な格好をしているのだ、本来であれば女性がその様な格好をと小言の一つでも貰いそうな格好なのだがソレが頭に過らないほど目の前の女性は美人である
私も美人だとは言われるがコレに関して言えば美しさに向けられるベクトルが違う
私の場合は格好良いの『美人』
彼女の場合は本物の美から向けられる『美人』
羨ましくもあれば妬ましくもある、が
ソレこそ存在するだけで国落としが可能なほどである
が、目の前の美女はソレとは別のナニか触れてはいけない何かを内包しているかの様に感じてしまう
ソレは何でだ?
と考えていると
「ねえ貴方?」
と綺麗な声が耳元で囁かれたと感じた瞬間にゆっくりと、そのホッソリとしながらしなやかで強靭な手が頬に当てられ
「私の恩人様を知らない?」
恩人?誰の事だ?
いきなりのことで事態が飲み込めずにいると
「貴女が言っている"恩人"が地龍ならば教えてあげますよ」
とファブニールと剣を交えながら白露が此方に声を飛ばしてくる、戦っているファブニールは『ほお?私と戦ってるのに随分と余裕があるな?』と言う風に忌々しげに睨んで更に攻勢を強める
「地龍……矢張りそうなのね。」
と何か思い当たる節がある様に顎に指を当てて悩んでいる様でさえ綺麗だと思う
「あの、地龍ならば白髪の男と一緒に消えましたよ?」
と一言告げると
「【覚醒者】が来てるのね、めんどくさい」
と見た目に似合わぬ物言いで面食らってしまった、が、
「じゃあ、私は彼の元へ行きます……何か聞きたいことはありますか?」
と言われるので
「えっと…」
と口篭っていると
「では、お節介で言いますけど貴女の今の状況は簡単に言いますと進化中と言った所ですね進化先が炎霊人なのか炎鬼なのかは知りませんが炎に特化した進化先なのは確かですねスキルの強化に身体がより炎の魔力の性質を帯びているために物理が効きにくくなっていると思いますがアイツは素で妨害の魔力を飛ばしてくるので注意を、では」
と一息で捲し立てて来るので一瞬で理解は及ばなかったが要約すると
・炎霊人か炎鬼に進化しかけている
・炎に特化した魔力になって体が炎に近くなっていて物理に優位性が出来つつある
・ファブニールは素の攻撃で妨害魔力を飛ばしてくるので体の特性が無効化される可能性がある
ざっとこんな所であろう
しかし、彼女は一体何者なんだろう
彼女が現れただけでファブニールが完全に警戒心を剥き出しにしているのだ
すると
「何故ココに来たシンソ?」
と一言投げかける間にも絶え間ない警戒心を剥き出しにしておりソレこそ少し小突けば転倒しそうな程だ
「だから、私の神様を探しに来たんだって♪」
と機嫌良く言う姿は完全に…
「ハッ、彼の存在が“恋する乙女“か_____」
と小馬鹿にしようとしたらファブニールの顔面が
潰れた
比喩抜きで顔面が潰れた
効果音など地平線の彼方に消し飛ばしたのかと言うくらい神速の一撃がファブニールを襲った
そして、放った本人は
「貴様…我が恩人を貶すなど万死に値するぞ?」
とドス黒い声を腹の底から響かせ一瞬今まで一番の混乱が巻き起こりそうになる
美人の怒る顔は迫力があるしめっちゃ怖い
そう言う感想抱きながら無意識に唾をゴクリと呑み込む、汗が顎を伝って足元の石に垂れ落ちる
クイーンズブレイド時代でもここまでの緊張感を抱いことはなかった
そこでようやく
(嗚呼、私が戦って来た相手は表層だったのね)
この世界の深層にいる人物達の【本物】に触れてしまった
恐怖のあまりに震えて息が荒くなる
けれどその中に微かに興奮が有るのはなんで?
口元が僅かに釣り上がるのはなんで?
無意識に拳を握るのは何で?
けれど今はこの感覚が心地良い
うん、悪くない
最初見た時はどこか見劣りする女の子だなと思いっていたけれど能力以上に意志が良い
この状況でも絶え間なく炎が燃え上がっている
だからかな本来進化できない『炎霊人』や『炎鬼』を超える種族の進化の兆しが見えるのは
けど、ソレを言ってしまえば彼女の成長の阻害になるかもしれない人間は障害が多ければ多いほど燃え上がる種族だからね
まぁ今の彼女はコツを掴んで精神的にも物理的にも大炎上しそうだけどね
ああ、この高鳴る感情を何故今まで抱けなかったのだろうか?
考えれば私はいつだって何処か俯瞰していた
けれど、今は心の内側から全てを喰らい尽くせとナニかが叫んでいる
「チリッ」
そう耳に微かに届いたと思うと古龍の血を染み込ませた包帯が炎上し始めている
「んなっ!?」
と慌てて鎮火しようと手を伸ばすが
「へーきだから」
と止められてしまう、心の中で大焦りしていると、炎が体全身を包む猛火になり思わず目を瞑り熱さに耐えようと_______あれ、熱くない?
全身が沸き立つ様な暖かさに包まれたと思うと
体全身が妙に明るいことに気づいて必要以上に怖がりながらそーっと目を開けてみると
「え?」
腕が橙黄色に発光しているのだ
いや、正確には不定形に揺らめいているのだ
えっと、コレは?と問おうとすると
「じゃあ、頑張ってね」
空間に波紋を作りながら別次元に飛んでいってしまう
え?教えてください姐さん!!
と心の中で叫んでいると
「いや、何人外に進化してるんですか?」
と白露にドン引きされるので流石に傷つく
「いや、私だって…いやねぇ、」
と困惑を口にしていると
「あーあ、良かったの?アイツが君達の最強戦力だったのに」
と嫌な笑みを浮かべるので
「死んじゃえ。」
と言って魔力を放出する感覚で腕を軽く一薙する、と、
「「…………」」
えっと、どうしてこんな威力の火焔が出るのかな?
そう、腕を軽く一薙したら辺り一面が炎の花畑になるのかな?
そう考えて一瞬ガラ空きになった胴体に炎を耐えて此方に突っ込んでくるファブニールの一撃を予見してソレを交わしながらカウンター紛いの一撃を与える
そして、炎の呪縛を与えようとすると
「クソっ……どうなってる?」
相手は完全に此方に起こってることが理解できるわけではないらしい
「え、何その進化の仕方ヤッバ…」
顔に困惑の表情を浮かべながら少し体を引くので少し悲しい様な……って何考えてんだ私は?
変なこと考える前にアイツをぶっ飛ばさないと
思ったより強くなってしまった…
え?地龍は何でマーリン持ってるかって?
さあ?何故でしょう?




