限界
今回から書き方を大幅に変えてみます
あと、今日は少し忙しいので小話はパスで
「…実は…私の体は限界なんだ」
そういう不人の顔は哀愁が漂っていた
しかし、その言葉は俺がどこか予見していたのと同じであった
なんせ不人は最初から何処か自分が死ぬ前提でいろんなことをやっている気配がしていたのだ
ソレを敢えて見逃していたのは俺だが…
ソレをしっかりと本人の口から聞くのは少々厳しいものがあるな
全く…なんで俺はこんなにお人好しになっちまったんだろうな…
「…………」
鼻の頭に手を当てて天井を仰ぎ見る
思考停止をしている時間は決してない…ノアが今も動いている
ソレを考えれば俺が思考できるのは数秒だけである
「…ど、どうした?」
「……」
本来敵である召喚士までも俺のことを心配し始めるので
一瞬ため息を吐いてから
「…よし、今から不人魔改造計画を始めるか」
そういうと召喚士と不人は一瞬お互いの顔を見合わせてから
口をあんぐり開けてから全力で
「はああああああああ!?!?」
一瞬うるさい声が響いたが今現在は全力で無視する
なんせ俺は決めたことはゴリ押しで決めるタイプの人間だ
「…まず召喚士!」
「は、はい!?」
いきなり変な名前で呼ばれたことに対する驚きからか
変な声で返事をしてきたが今現在に関しては感知しない
「まず!今回の事件はお前が原因なんだからお前が一番活躍しろ!」
「そ、そんなあ…」
泣きべそをかきながら俺の方を見つめてくるが今回は
相手の意見を聞いている暇は全力でない
「…そして不人!」
「?」
不人は召喚士とは違い切腹をする前のサムライの様な面持ちで待っていた
というかヤクザとサムライは何処か似ているか
まぁ、その話は今度にして
「…お前の体を壊す原因を作ったのは俺だからお前を治してやる」
「…いや、治療をしても俺の体は」
俺が何かを言おうとしても何かを言って止めようとしてくるので
一旦不人の言葉を止めて
「勿論お前の懸念もわかる…俺がするのは治療なんて生ぬるいソレとは別次元だ」
「べ、別次元…」
恐怖からか喉を意識せずにごくりと鳴らす不人を見つめながら
一瞬不敵な笑みを浮かべながら
「お前を転生させてやる!」
「「は?」」
同時に二人から疑問の声が届いた
あれ?俺ってそんなに信頼ない?
「……お前、元々頭のネジが外れている様な感じしていたけど本当にはずれていたんだな」
「…なんか見てはいけない場所を見てしまいましたスイマセン」
二人して俺に対して俺のことを憐んでくるので頭を
グツグツと煮えたぎらせながら
「違ーーーーーーーう!!」
音量で家が震えるほど大声を出しながら
「俺の魔法に【年齢操作】があるんだよ!ソレで不人を若い体に転生させるんだよ!」
「…そんな魔法あったのか?」
どうして今まで使わなかったんだ?とでも言う顔をしてくるが
そこは召喚士が引き継いだ
「不人さん…こういう魔法は大抵何か発動条件があります…そして転生の様にメリットが大きい魔法ほどデメリットも大きいのです」
そこまで言われて不人も何か気付いた様にハッとする
そう年齢操作というのは実際中々にしんどい魔法なのである
第一にデフォルトの年齢操作は
①相手の体に五秒間触れる
②操作したい年齢を設定
③年齢操作
コレを踏まえなければいけないので中々発動できないのが現状である
人間相手であれば多少固まって年齢操作をしても大丈だが
モンスターや化け物相手にしている時は五秒間という面倒な時間をかけていると
此方が簡単に微塵切りになってしまうのだ
サイコロステーキとか不名誉な……あ、元々サイコロステーキ寸前でした
じゃねーよ!そう一人でボケとツッコミを演じながらため息を吐いていると
「…つ、つまり今回の作戦は俺に主軸を立てるのか?」
「ま、そういうこと」
そう気軽にいうと不人はいきなり悶々とし始める
別に主軸を置かれること自体は不思議じゃないだろ
実際不人のスペックは高い
俺が何かを命令する前に何をしたいのかを正確に判断して
俺が援護を欲しい時に的確にしてくれる
正直俺がコイツと会って王様にすると決めてなくても
何処からかスカウトが来ててもおかしくない程の実力者である
「…ま、気負わず行こうや」
「…………」
軽めの口調で肩をポンと叩くと
「あ、悪夢だ…」とでもいうかの様に全身からネガティブオーラを出している
全く失礼な奴だな
そう思いながら一瞬その姿にかつての幼馴染を思い出す
昔幼稚園が同じでもう一人の幼馴染とくっつき回っていた奴
小学校に上がるタイミングで分かれて
中学校で一緒になった
ソレからはずっと一緒で、ことあるごとにオーバーリアクションをしていた
しかし、アレがいなくなるだけで何処か寂しさを感じるのは
俺も相当毒されていたのだろう
そして…アイツが小さい頃にくっついてまわっていた幼馴染
アイツとはくっついたのだろうか?
昔も図体は小さいくせに大の大人を簡単に捻るほどの実力を持っており
中学高校は剣道、弓道、薙刀などで4連覇を果たしている
正直言って化け物だと思っている
ちなみにVRはクソ下手で
意識をリンクしているはずなのにホバリングして上空に消えていってるから
初め見た時は笑いすぎてアバターが崩壊するというテロを喰らった
全く…今でも思い出しただけで爆笑が止まらない
「クックックっ……」
喉の奥で笑いを噛み殺していると不人達が不思議そうに視線を向けてくるので一瞬苦笑する
「んで…召喚士くん?君の本当の能力を教えてもらおうか?」
「…な、なんのことでしょうか?」
計画を話した後俺は召喚士を真ん前から見つめていた
先刻戦った時の『解析』の能力は確かに強力であった…
「…お前の能力…『解析』だけで軍勢を蹂躙できるほど強力ってわけじゃないんだよな〜」
そうぼやくと相手は一瞬体を震わせる
俺が資料で読んだ戦績は
常勝無敗の完全超人の姿があった
正直一人で戦ったからコイツを拉致ることができたと思っていたが
「…お前の強さは集団戦において絶大的な力を発揮する…そしてソレは『解析』ではない…本当の能力はなんだ?」
「……そ、ソレは」
相手は僅かに口籠る
恐らく言いたくないだろうな…だってこの世界では能力は秘匿すべきもの
実際俺みたいにオープンにしているのはアザトースなどの一部の強者
ちなみに俺は強いのではなく隠せるほど手数が多いというわけではない
そう考えると俺って少しでも心理戦を仕掛けないと簡単に負けるのだなと簡単にわかってしまう
「……わ、わかりました説明します」
「お、良いのか?」
正直相手がこんなに早く自分から吐いてくれるとは思ってなかった
多分半日くらい持つかな?と考えていたので予想を大幅に超える速度での自白である
「…私の能力は『相手の能力を解析してカードにして戦う』…そして『一定条件を達成すれば相手をカードにする』という能力です」
「おいチートこの野郎」
正直こう言ってしまうのは仕方ないと思ってくれ
先刻俺と戦った時は本気ですらなかったということが
コイツは頑なに『解析の能力を使って戦っていた
正直本気で相手されていたら勝てていたから怪しい
なんせ俺は前世雑魚雑魚のニートだぞ?
いきなり戦いに放り込まれて戦えるわけ……
(ブーメランが回転して脳髄に突き刺さった)
あー!今のは無し!俺いつのまにか死ぬほど戦っていた!
そう心の中で言い訳にならない言い訳をしながら
「…どうして俺の時は使わなかったんだ?」
単純な興味で聞いてみる
正直その能力を使えば俺なんて一撃で仕留められていたに違いない
けれど相手は態々使わなかったんだ
そこを鑑みれば何か理由があると考えるのは自然の摂理である
「…この能力は使っている気分が高揚して自分が自分じゃなくなる様な気がするんです」
「……そりゃあゲームしてたらテンションも上がるだろ」
実際俺もテンションの上がりすぎで妹にドロップキックを喰らったし
妹曰く「私は真の男女平等主義者なので男女平等にドロップキックする!」とか何とか異世界に行ったニート勇者(初級魔法を操りなし崩しに『魔王殺し』を成し遂げたあの人)と同じことを言っていたので少し怖く思った
と言うか……何で俺がドロップキックされなきゃいけないんだ?
今でも思うが多少テンションが上がるくらいなら良いだろ?
そう思うが自分がテンション上がると煽りが入って大声で笑うので五月蝿いと自分でも感じた
「…まぁ、テンションが上がっていつもの自分と違うと感じるのは別に悪いことじゃないぞ?実際俺だってテンションが上がると自分が何をやってるのかわからなくなる時がある」
「え?ソレはまずいんじゃ」
今はお前の相談時間なんだけどな?
そう思いながら相手の顔を見つめると失言をした!
という風な顔をしているので今回は責めないでおく
「…まぁ、お前みたいな奴は居なくはない」
「…は、はあ」
そう言って溜息を吐いてくる相手は何かを悩む様に考えているが
「…考えすぎても人生つまらんぞ?お前の場合は考えなさすぎでもある部分は確かにあるが、しっかりと考えれば自分に何が足りないのか把握することができる」
そういうと相手は天啓を得たり!という顔になるので人助けは楽しいと思った
ソレを横から眺めている不人は溜息を一つ吐いている
先刻からお前俺に対して少し失礼じゃないか?
「それで?お前のカードにする条件って何なの?」
「…あ!ソレは相手の攻撃10分間無傷で凌ぎ切れば良いって…本に書いてありました」
…本ってお前……あ、あはははは
乾いた笑い声を心の中であげていると
「お前の言いたいことはよくわかる…私も此方に来た時は前と違うことが多くて困惑していることが多かった」
いや…わからないことがあるんじゃない前世のルールが違うし
そもそもおかしいのは能力の取説ってなんだよ!!
そんなんあるなら俺にくれよ!俺だって大地魔法に隠された秘密とか知りたいよ!
そう心の中で叫ぶが本が出てくるわけでも無し
しかし、お忘れだろうか?俺の中には
〈何を言っているのですか?とうとう頭のネジが外れ切ってしまいましたか?〉
前から思ってるけどノアって本当に俺の能力なんだよね?
物凄く辛辣なのは何で?
ま、まぁ…ソレは一旦置いといて今重要なのは
(なあ、ノア…俺って俺の中に能力の取説とかってないの?)
そう質問するとノア少し困った様に
〈正直に申しますと、貴方の中には能力の取説というのは存在しません〉
ガーン!!そんな効果音が幻聴で聞こえてしまうほど多少ショックであったが
まぁ…能力の取説はある方が不思議だよな
〈しかし、ソレが何なのかは多少検討が付きます〉
ノアがそんなことを言ってきたのだ
え?本気で言ってるの?お前本気で言ってるの?
〈というよりか…貴方も知っているはずですよ?〉
???……コイツは果たして正気なのだろうか?
俺が気づいてないだけで本当はオーバーヒートしてたりしないのか?
そんな失礼なことを考えているノアから無言の圧が飛んできたので黙る
〈全く…貴方って人は……〉
呆れた様に言われたその言葉に何処か楽しげな雰囲気が混ざってると感じたのは気のせいか?
そんなことを考えながらノアの発言を待っていると
〈あー、そうですね簡単に説明しますと、貴方が言っている取説というのは……異世界特典だと思います〉
異世界特典?何ソレ?なんか似た様な名前をラノベではよく聞くが
〈ええ、ソレと近い感じと思っていただいて相違ありません、簡単にいうと、死んだ人間が異世界に行く時に受け取る異世界での生活補助の道具です〉
キャンプする時のキャンプ用品ってことか?
〈ええ…まぁ、ソレとは規模が違いすぎますけど、なんせ念じるだけで爆発を起こしたり、毒を浄化したり…様々な効力を持った能力ですし
そもそも、貴方が居た様な平和な世界の人間であれば戦争が普通の世界では適応は時間がかかります、それまでの間最低限自分の体を守れる能力……ソレが『異世界特典』です〉
へぇ〜、そんな意味があったんだ…あのイベントと化していたことには
そう思って納得していたら
(はて?俺の異世界特典って何だ?)
ソレを考える前に
「どうした?地龍?」
不人に呼び戻された
一瞬何か大切なことを考えていた気がしたのだが思い出せないのなら
ソレほど重要なことではなかったということ
今はそんなことより化け物大事の作戦を考える方がとてつもなく重要である
そんなことを考えながらゆっくり思考の海へと降りていく
『ど、どこだあ……我が主よ!
私の力の牙は一体どこに向ければ良いのだ!』
生まれてから日も経過しないうちに凍てつく狼と堕天使に討ち取られ
意識体となった存在は踠きながら現在も全てを踏み躙ろうと生きている
踏み躙る者と救う者…決戦の時は近い




