轟く
「ヴオオオオオオオオオ!!」
喉元が破裂しないのか?と聞いてる此方が不安になってくる大声をあげてくる鯨モドキを見上げる
今ではこんな軽口を考えられる様になったが心の裏側にピッタリと張り付いている恐怖心だけはどうしようもない
そして正直誰かを見捨てでも逃げ出したい
だって本当なら俺は此処の人間と何も関係ないのだ
任務で此処にきただけ
それだけの関係である
そんな人達を見捨てたところでお上は何も言わないし
人助けも生きてなくちゃできない
……本当はそう言いたい
けど…どれだけ御託を並べても…俺は逃げるという選択肢はないと思えた
そうして鯨が攻撃を緩めた瞬間に
「不人!」
そう叫んで呆然事実としている敵を抱えて王城の外へと飛び出す
正直コイツは武器を失って体力もロスして勝てる相手ではない
そう考えて大地魔法をかつてなく強靭に発動する
イメージするのは(癪だけど)アザトースの虚数空間
滑らかで尚且つ矛盾点がありながらソレすらも否定してしまう最強の領域
空間内を一種の無敵領域とすることを極限までイメージする
そうした結果球体をイメージした大地魔法は四角のサイコロ大のソレになってしまったが
今だに威圧は健在である
此処は下手に手を出さずに逃げ出すのが正解であると感じて一瞬で逃げ出す
本来なら此処でお前を殺すとか言ったほうがいいのかもしれないが俺は自分の命が一番なのでこれ以上刺激しないで逃走する
その時ふと頭上の日差しに翳りを感じて上を見上げる
しかし…そこには誰もいなかった
「……?」
「どうした?」
隣の不人が不思議そうに此方を見つめてくるので気のせいだなと自分の中で決めて一瞬の逡巡の後にスラムに向かって走り出す
「ふーーーー!やっぱり拠点が一番落ち着くわ」
「お前の拠点ではないけどな」
そう言われてしまうと何も言えなくなるからやめて欲しいんだけど
「まぁ、小さいことは気になさんな旦那!」
そう言って不人の背中をバンバンと叩きつける
そうすると不人はいきなり体を硬直させるので一瞬不思議に思うがすぐに理由に行き着く
「あ!お前もしかして体に爆弾抱えてるなあ〜?俺の父さんも五十肩だか六十肩だかで最近大変だってぼやいてたよ」
そういうと不人は肩を撫で回しながらため息を吐いて
「…コレは年をとればお前もわかる」
そう言っていっそ諦めた様な顔を浮かべる不人の顔には疲労が溜まっていた
大人って大変なんだな…俺にはわからない苦労が沢山ありそうだ
そう思いながらそばにあったコップをぐいっと呷る
「んで?アレは一体なんなのかな?えーと、召喚士くん?」
名前を知らないので便宜上『召喚士くん』と呼称することにする
あくまでも対等に
俺は別にコイツと敵対はしているが殺したいわけではないし
逆に殺されたいわけでもない
だから適度な距離感を保つのを一番重要にしなければならない
「あ、アレは…」
一瞬口篭りながら言うか言うまいかを悩んでいるのか体を気持ち悪くウネウネしている
全く……コイツは
「あのなあ…お前今の状況わかってる?」
「…じょ、情報を話さなければお前らに殺され…」
と馬鹿なことを言い出したので早めに現実を教えといてやる
「ソレはまだ楽な方だ」
そう言って窓際に申し訳程度についているボロボロで煤だらけの布切れで作られたカーテンを思いっきり開く
「………!?」
「わかったろう?お前のせいでこの国は現在未曾有の危機に立たされている」
そう言って見せたのは現在鯨もどきが王国を襲撃している姿である
一応拘束はしたが
あんなのないのと同義である…正直過去一の領域を作り出せたとは思っているが
アレに対してその程度では数秒結界を持たせられれば上場であろう
そうして再び視界を王城の方へと戻すが
鯨モドキは今も王城で暴れている
本来ならアレだけの巨体を自分の意のままに操るなら開けた平地とかの方がいいのだろうが…
現在奴には動けない理由が二つある
まず最初にわかりやすいのは『主人が此処にいるから』
本来の召喚の形とは大きく違うが
アレでも一応は召喚の判定に入るらしい
そしてソレが原因で召喚された鯨もどきは帰るために主人を殺そうとする
そりゃあそうだ、なんせ自分の都合を全て無視して無理矢理呼び寄せたんだ
そう考えると現在のコレはコイツを目の前に差し出して怒りを鎮めてもらうのが一番楽でありそうではある
目の前の敵は俺が考えたことに勘付いたのか一瞬肩を大きく揺らしながら部屋の隅へといった
「全く…鯨の餌にはしねーから出てこい」
まぁ…こんな状況になったのは俺が原因でもあるけどね
なんせ、俺が結界監視のために分身体を作り出して観察を命じていたが
予想外の出現の速さに間違えて分身体を戻すのを忘れていたので
現在はノアの頭脳バーサス敵の脳みその戦いである
そう考えると分身体の勝ちでいいと思っている
しかし、世の中には世界の理では説明できないほどの絶対な力を誇る敵さんの頭脳はそこまで高そうではないのでこのまま適当にしないでくれれば最後は駆けつけられるってもんだよ
「…わ、わかりました…せ、説明しますので助けてください!」
正直ソレは迷ってる
ただ助けるだけなら別に構わないがコイツはどうやら戦闘狂の気質を感じる
だって俺が今まで戦ってきた奴らと似た匂いを感じる
さて、此処で一つ問いかけをします
戦闘狂のラインってどこからだと思いますか?
「はっはっはっは!全員皆殺しだあ!!」
みたいなことを叫んで戦っている人は確実に戦闘狂だろうけど、個人的にはもう少し下の人も戦闘狂だと思うんですよね
つまり、多少戦いが好きで…けど自分が傷つくのは嫌いという人
ソレも俺のジャッジ的には完全に敵判定なんですよね
全く…コイツを在野に放てば今まで以上の被害が広がりそうで怖いんだよな
……下手に悩む様ならコイツは殺す方針…
いや、ソレも違うな牢獄に入れたところでって話だし最悪の場合リュエルに一任するのも一手だと思う
なんせアイツの実力は俺の実力を軽く超えている
俺のことを『恩人様』とかなんとか言っていたけどどういう意味なんだろ?
まぁ、ソレは今度聞けばいいか
そう思いながら眺めていると再びビクッとしている召喚士を眺めていると
「地龍氏…そんなに怖い目で睨まなくても其奴は反抗などせんよ」
そう言ってくる不人の目にはどこか試合の目がこもっていた
「なぁ…俺が目を離した隙に何があった?お前の顔が聖母のソレに見えて仕方ないのだが?」
「…ふふ、ソレは今度ゆっくりと説明する故……」
そういう不人の目は少し怖い感じに光っていた
え、コレ必要以上に関わったらあかんやつやと気づいた俺は即座に相手のそばを離れて星座で相手の話を聞く体制を整えてから
「頼む…お前だけが希望なんだ」
二つの意味を込めて切願する
頼む、俺の貞操の危機が迫っている気がする
アイツ…なんか変なもんを食ったとしか考えられないほど澄んだ目をしている
戦う前はドロドロの終わってる目をしていたのに!!
あれ?コレって本当はいいことなのになんで俺は嘆いているんだろう?
そんなことを考える隙もなく相手が
「わかりました…では説明します」
そう言って手元に視線を落としながら少しずつ語り始める
「…まずアレは、昔この世界に落ちた異界の最強の生物【七災害】改めて【伝説怪物】」
「伝説怪物?」
聞き慣れないワードに驚いていると
〈検索…ヒット、伝説怪物の情報を開示します
かつてこの世界は複数の世界が融合した超常的な惑星となっていました
けれど、そもそも惑星が融合した原因が神々が増えた人類を罰するために間引いていたのが原因です
ソレが惑星を出ただけでなくなるほど神様方も優しいわけではありません
ソレでかつていた三原神のお一人は
異界から七人の勇者を呼び寄せて其々に名と力を与えました
そうした結果進化に変化を果たして【七災害】は手をつけられない化け物に進化しました〉
「…そして彼らの一番の問題は強さです…彼らの強さは一人で一つの惑星を落とせるといわるほど強大で尚且つ危険です
しかしながれ…我らに対抗する術は持ちません
けれど、三原神のお一人はソレを予期して…とあるルールを用いました
『来る時が来るまで自分から世界の民に牙を向いてはならない』
コレがあるおかげで世界は伝説の怪物の餌食になっていませんが
時々自分の力を試すために伝説怪物のテリトリーに自分から足を踏み入れる馬鹿がいます
もうお分かりだと思いますがソレが私です
私が行ったのは【深海のモビーディック】という七人の中では一番温厚で弱いと目されていた怪物でした
しかし…ソレが私たちの最大の驕りであったと気がつくに時間はかかりませんでした
何故かって?
あったからですよ、目も体も全て掴まれる様な恐怖を私はかつてこの身で感じたのです
確かにルールによって彼らは私たちに手を出すことは出来ません
けれどソレによって彼らの格を消すことは決して不可能です
彼らの強さの奥には本当の強さの裏打ちからくる恐怖があります
ソレを克服しない限り人類が彼らに対して勝利を得るのは不可能でしょう」
…なるほど…
「そして…此処からは私独自の情報ですがよろしくて?」
今回初めて相手が自分から体を寄せて小声で会話をするのを要求した
今回の情報がソレほど重要なのか…もしくは…
「…そして私が行った【深海のモビーディック】で一つの本を私は見つけました」
そう言って開かれる本の中はインクが掠れ正直内容はよくわからない
「…読めない…そう思いますよね?けれど私の『解析』の能力で読み解くとこんな文章が浮かび上がってくるのです」
そう言って彼が浮き出させたのはこんな文章であった
〈コレを読んでいる子孫に送る
私はかつて【深海のモビーディック】に挑んで敗北を喫した馬鹿な冒険者の一人である
正直言い訳を並べれば
いつ牙を剥くかわからない彼らを一人たりとて残したくない
ソレが理由とも言えるが負けてしまってはどんな綺麗事を些事だ
さて、話がずれてしまった
時間がないので簡潔に子孫に伝えようと思う
【深海のモビーディック】は手下である
しかも、神をも超越する力をもつ覚醒者である
彼の姿を見た瞬間私は自分の目を疑った
何故あのお方がこの場におるのか?
本来であれば此処ではなく別の場所でつ………(文章は此処で途切れている)〉
「…なんだかヤバそうな匂いがぷんぷんすんな」
そう呟く俺に同意を示す様に不人も頷くが
「…だが途切れた場所が気になるな…劣化によって途切れたというより人為的に千切れた感じだな」
そこで二人は同時に召喚士を見つめる
何処か可哀想な感じがしてきた召喚士君には悪いかもだけど現在一番怪しいのは先刻まで敵で、尚且つ書類を提出してきたコイツなんだよな
…まぁ、その辺りは今後協議して
「…まぁ、破れたところに何があったかは現在さほど重要ではない…今考えるべきは【深海】モドキだ
…正直威圧がやべーよ、あと単純手数と頭数が足りない
アイツを倒す計画は一応は立てられてる…けど、武器紛失が此処で響くんだよな」
正直あそこで刀がなくなったなのは辛い
俺の攻撃方法は闇・大地、刀、拳
そしてスキルというのだ
しかし、此処で問題になるのはアイツに対しては魔法はほぼ効かない
そして物理も硬すぎて通らない
拳で殴ろうもんなら俺の拳が簡単に砕ける未来が簡単に見える
全く…あんな理不尽どうやったら生まれるんだよ
「……まぁ、でも一応アイツについて調べたほうが良いのか?」
「…そんなことをしていれば王国が沈むぞ?」
俺が呑気なことを言っていると不人が半分呆れた様な声音を出しながら行ってきた
勿論冗談だよ冗談
聞いた限り伝説怪物ってだいぶ前から世界に認知されていたらしいから今から調べれば滅茶苦茶時間がかかるかもしれない
うん、普通に馬鹿なことをしようとしていたと自分でわかってしまった
まぁ…こんな馬鹿な話は一旦置いといて普通にコレからどうしよう
たって…あんな化け物正直全滅を視野に入れて戦ったほうが勝ち目はあると思う
しかもアレで複製体とか馬鹿げたこと言ってんだよ?
正直言って今すぐにでも逃げ出したいが逃げ出さない
だって戦うって決めたから
此処で逃げ出したりしたら多分俺は一生後悔するだろうしない
「全く…なーんで、こんなに首を突っ込みたがるんだろうね〜」
そう独り言を言いながら鯨の観察に勤しんでいると
「…一つ聞いて良いか?」
不人が突然思い詰めた様な顔で質問してきた
「ん〜?何?俺の答えられる範囲でならなんでも答えるよ?」
「感謝する……」
完全に時間切れの人間がする様な顔をしている不人に一瞬嫌な予感がよぎりながら見つめていると
「
この言葉が今日の運命を変えたと言っても過言ではない
次回のちょこっと小話はリュエルさんです!




