悪寒
その日世界が『揺れた』
揺れる、ソレは世界で常に起きている基礎的な現象
声が伝わるのも、海が動くのも、人の心が動くのも
全ては揺れることが起因している
しかし、今回世界が揺れたのは物体でも、精神でもない
歴史である
地龍は気づいていないが、この世界は『傀儡』とゲームの設定をどちらも持っている
傀儡の中では本来存在していなかった存在
ソレは
「な、なんだ?ソレ、は」
頭を貫かれながらもなんとか痛みを耐え切る、本来なら気絶してもおかしくない痛みが体を遅い意識も一刻を過ぎるごとに薄れていく
しかし、他のものに引き継ぐにしてもアレだけは何かを知っておかなければいけない
「…ふ、気になるよな?」
『か?』ではなく確定の『よな?』を使う辺り世間に浸透していない化け物であると認識できる
しかし…此処でこんな切り札を出してくるとは
恐らくコイツの強さはアザトースと同等かそれ以上
正直勝てるヴィジョンは見えない
けど、気丈に振る舞って相手の隙を貫く
いつだって俺がやってきたことを俺はこなすだけである
「…コイツは、昔々世界の狭間で延々と戦争を繰り返して世界に、銀河に戦乱を齎した最強の七災害の内が一つ【深海のモビーディック】、ソレの複製体だ!
まぁ、今では【伝説怪物】…そんな呼称が付いているが俺には関係ない」
背中に垂れる汗が止まらない
正直このまま脱水で死んだ方が俺はマシな死に方が出来るのではないか?と思っている
なんせ目の前から放たれるその気配は濃密に死の気配を孕んでおり
ひと撫でで俺のことを静かな肉塊に変えるなど造作もないだろう
昔似た様な感覚をVRで感じたことがある
ソレは初めてVRをやったときのこと
初めは死なずに…リスポーンせずにゲームをクリアできていた
しかし、一度死ぬタイミングが…
ソレがとてつもなく怖かった
2Dや3Dとは違う、VRというリアルに限りなく近い環境で死ぬからこそのえもいえぬ恐怖
ソレとコレは似ている
似ているだけで比較にならないほど怖い
根源的な、人間の一番奥深くにある根源的な恐怖をコレは引き出す
コレは本当にいけない、恐らく人の心を持つものが見たら心が簡単に壊れてしまう
じゃあ何故俺は無事なのか?
ソレは【ノア】が俺のことを保護しているからである
奴が出てきた瞬間にノアは即座に俺の人格を奪い奥に押し込めて自分が表層に出ることで俺の人格の破壊を防いだのだ
しかし、ソレは逆を言えばノアが破壊されていることと同義である
本来なら止めるべき行為を俺は止められない
怖いのだ
一瞬奴と目があっただけである
しかし、それだけのはずなのに心には恐怖の感情しか溢れていない
俺は弱い
此処にきて自分の本当の弱さに心が壊れていく思いである
「…お主は弱くない」
俺の心の脆弱さを後ろから響いた声が否定した
「人間誰だってどうしても否定できない弱さがあることは認めよう…」
力強い言葉で
「しかし…ソレでお前の本質を見失うなど…笑い話も甚だしい」
けれど誰にも負けない力強さを孕みながら
「こうやってお前のおかげで一歩を踏み出せた人間がいるのだ」
彼は来た
「個体名 不人、本時刻を持って精神を主人格に変換」
そう言ってノアが俺の精神を表に引っ張ってきた
本来なら此処で不人に憎まれ口の一つでも叩きながら倒すぞとか言えば格好良いのだろうが
「…お前ボロボロだなあ」
煽ることにした
「…ふん、外のやつ最後に自爆をしてな、止めようとした結果こんなことになった」
不人はどうでも良いかの様に事実を淡々と述べる
しかし其処には何処か達成感滲み出ており
「…まぁ、良いや後悔すんなよ?」
「ふっ…今更だな」
そう言ってお互いにお互いの武器を構える
「不人!そっちに触手3本!こっちは5本!」
「了解!」
お互いに武器を構えた瞬間に鯨?はいきなりトランスフォームを行い触手生物にジョブチェンジを行った
正直鯨体系の鈍足形態なら対応できたのに
コイツ…俺より速いじゃないか…
そう思いながら刀で触手を誘引しつつ一つずつ確かに落としていく
けど、今だにコイツの強さが信じられない
なんせコイツの強さはアザトース並なのだ
最初に感じた威圧感はどうやら格だけであって
能力は減衰したコピーだったらしい
けれど気迫だけであそこまで追い詰められたのも事実
コレは放っておくと後々問題になるやつである
そうして鯨の触手を避けながら相手の懐に飛び込んでいく
距離が近づくごとに目に見えない触手が往来するがソレは今やどうでも良い
今だけはソレを感知しないで突撃を敢行する
ある程度の傷ならば簡単に戻る
ソレを理解していれば不死身の人間は最強無欠の前衛となれる
そうして無機質な相手に向かって突撃をかましていくが
まるで巨大な要塞を相手にしているかの様な
ある種の強者のプレッシャーを目の前から感じる
まるで心臓を直接鷲掴みにされるかの様な
心臓が爆発するかの様な
人間の感情は際限など存在しないのだと告げられている様な気分になるが
今だけは無視する
刀を引き抜いて一気に走り抜ける
そして鯨に向かって刀を振り下ろすが思ったより防壁が残っている
ソレを理解して一瞬後ろに視線を外す
そうすると何をして欲しいのか理解した不人が此方に向かって突撃をかましてくるが
正直ちょっと怖い
なんせ不人はソレなりの巨大だ
もし不人の突撃で刀を押し込めなければ俺は職種でぺちゃんこになってしまうという恐怖が待ち侘びているのだ
全く…アイツはなんでこんな危険な奴を
あれ?アイツは何処に行った?今更ながらに気づいてしまったが、この鯨を召喚をした奴がいなくなっている
どうして?と考えるよりも前に納得が来ていた
奴がこの国に来ていたのは恐らく闘争を得るため
死を迎えそうになればなりふり構わず逃走するのが常だろう、と
正直今はコイツを相手にするだけで手一杯なのである
アイツのことは後で対処する他ないだろう
そうして一瞬考え事をしていると後ろから不人の突撃がぶちかまされる
最初は僅かな抵抗を手に感じながらもなんとか前に進む感覚を覚えながら
次の瞬間に一気に内部まで切り進める感覚を確かに覚えていた
そうして次の瞬間
更にレジストされる感覚を味わい
刀が砕けていた
「は?」
正しく今の感情はソレが正しい感情である
どうして?俺が持ってる刀は恐らくこの世界で類を見ないほど協力な刀である
ソレを簡単にレジストするなど俄かには信じがたい
そして奴は刀をくらい自身を強化している
…認めたくないがコレはつまり
「コイツも……『外』から来たのか」
そう呟きながら拳を構える
資料No.4383843737647
過去の論文から一部抜粋
『さて、何から話すべきかな
まずは自己紹介と行こうか
私の名前は◾️◾️◾️(黒で塗りつぶされている)である
皆が知っての通り私は異世界とこの世界を繋ぐパイプについて危険性を説いた人物であるが
実はこの世界は扉が開く前から異界から来たものたちが複数人いる
ソレが俗世で言われている七災害、通常伝説怪物
彼らの目的は何か?
ソレを言われると私も唸るしかないが
長年にわたる私の研究成果を信頼するならば
こういう他にない
〈エネルギーの搾取〉
彼らは常に放浪しているが自分の領域に足を踏み込まれた瞬間に瞬く間に自身の領域に戻る
速いとかそんな次元ではない
正しく瞬間移動である
そして彼らは異界から来る人物を特に好む性質があるらしい
そのおかげで今この世界には異界の人物は殆ど存在しない
まぁ、私としてはソレは良いことなのだが
此処からが不思議なのだ
伝説怪物は月に一度決まった場所で決まった時間に
何かを捧げているのだ
遠くからの原始的な観察であった故に何が捧げられていたのか詳細はよくわからないが
アレは我らが三原神に捧げられている供物ではないかと予測する
あっと、もしかしたら三原神について知り得ない人物が読んでいるかもしれない、此処で一旦話を三原神に付いて移そう
三原神というのは『太陽・月・星』の三柱からなる、この世界の最上位の神々たちのことをいう
まだこの世界に人が入ってきたばかりの頃
この方々は土地を広げ、食力と飲み水を与え
星を使い導き
太陽から炎を与え
月の光で癒した
そうした結果三原神は後に世界三代宗教の中でも一番信仰者を集める大宗教へと改革されていく
しかし、神話や人の心というのは簡単に崩れ去るものである
太陽と星の神が人間に与し過ぎていると他の神々から罰を与えられたのだ
結果二人は未来永劫罰に縛り付けられている
残った月の神は二人を救うために日夜奔走している
とか
呪った神々を蹂躙していると言われている
どれも信憑性が低いが、私は今も何処かで二人を救う計画を立てていると思っている
そして、此処で重要になってくるのは伝説怪物達である
月の神は自分ではエネルギーを回収出来ない為に伝説怪物達を操作して太陽と星の神にエネルギーを与え続けて死なない様に力を与え続けているのではないかと私は思考する
しかし、コレは私の妄想であり全てに確かな確証はありはしない
しかし、その中でも一つ確かなことがある
伝説怪物のうちの一人【深海のモビーディック】
奴はこの世界の住人どころか生物ですらない
言うなれば模倣生物
古い、世界で最も古いと言われている文献の数百、数億倍以上古いと言われている世界の歴史書【泡沫のノア】という世界の真理書に
【十二神王】というのが存在していた
彼らは最強無欠の武闘派集団
神に裏切られ、仲間に裏切られた
しかして、彼らは一人の人間に救われた
名は記せない、記せば彼に要らぬ戦乱を招き全てを助ける為に奔走させてしまう
故に此処には一つだけ記しておこうと思う
『十二神王『全』』最強の人間の王である
彼が破れることは決してない
…という記載があった
個人的には『全』と呼ばれる人物を調べてみたい気持ちがあったのだが私はソレ以外のとある文章に注目した
かつて、この世界以外のとある世界で戦乱があった
天から落とされ記憶を失いソレでも踠き続けた堕ちた天使が
堕ちた龍を救い、世界に光をもたらした
コレだけを読めば何がなんやら?と思うかもしれないが
個人的注目したのは
『堕ちた龍』という文章である
コレを詳しく調べてみれば
十二神王『創』という龍が堕天使と呼ばれていた女性と戦い疲弊していた所を世界の膿ともいうべき暗黒の使者がやってきて体を乗っ取ったらしい
その時は全て倒した、と思われていたらしいが
時間が経過してから一部が此方に来ていたことがわかった
そう、恐るべきことに【深海のモビーディック】はソイツであるのだ
『全』と並び最強の一角に列せられるほどの強者の複製体
あまねく全ての原初でありながら全てを救う神
最強の龍
と書かれているが…その強さは折り紙付きである
コレを読んでいる人物達はイマイチ、その強さを実感出来ていないらしいな
なら此処で一つ強さを実感できる話をしてやろう
今現在世界最強格として恐れられている帝国女王『リュエル』
彼女は昔『全』と接触して敗北している
それだけなら強さを実感できないという人物に更に絶望的な情報を授けよう
彼女は全力で戦ったのにも関わらず『全』は腕の一本で防ぎ切り
最後はまるでゴミでも見るかの様に四肢を切り裂き傷は魂の消滅にまで及びかけたらしい
その後生き残れたのは『全』が見逃したから
治療したからと真偽の程は確かではないが……
コレだけは言える
『全』は怪物である
正直世界の全ての問題を指一本で解決できるほどの力を持ちながら人が人でありながら生きていける様に全てを文字通り救いながら
悪を許さず地獄すら生ぬるい地獄を改心するまで拷問を続ける悪鬼羅刹の如き精神を持ち合わせている
この人物の過去を調べようと同書をめくってみたが
そこはノイズだけがあった
まるで過去から覗かれるのを拒否しているかの様な
異質な光景であった
正直今でもあの光景を信じられない
そして更に信じられないのが
一瞬ノイズが走った女性が現れて
「此処から先を知りたいのならソレなりの代価を支払わなきゃ」
そう言って消えていった
その瞬間感じたのは生命の危機という生ぬるいものではなかった
人間の根源的な恐怖を直接掴まれるかの様な恐怖
恐らく真の強者が発せられる真の恐怖
コレが他の者達が彼らを
『十二人の神々を蹂躙して全てを救う王』
略して十二神王と崇め讃える由縁なのだと
ソレと関係しているかはわからないが実は一つ不思議な事実がある
元々十二神王は確固たる組織ではないのだが最後に入ってきた神王を皮切りに十二神王は決して増減は起きてない
コレは一体なんなのか…私にもわからないが
もし、もし【深海のモビーディック】と遭遇したならばどうかお気をつけて』
さて、今回は一言いうために此処を使います
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