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それ
空低く、一羽の鳥が鳴いていました。
「時は来た、時は来た」
町の人たちは天候の悪い気持ちになり雨戸を閉めてしまいました。
見知らぬ旅の人が空を見上げています。
「時は来た」
「時とは、その時を指すのかい」
「わたしゃ、しりません」
「どうして」
「雇い主が言いました。時が来たと言えばわかると」
「誰に?」
「さて、わたしゃ、しりません」
「それはあんまりじゃないか、誰に何の時が来たか告げないと、人は勝手に自分の何かしらの時と勘違いしてしまう」
「わたしゃ、依頼主にそこまで聞くこともないと思いますが、難儀なこってす」
「そう、難儀だ。今、私は空腹に飢えている、火元も集まった。そう、時は来た」
その後、旅人は芝生に入るべからずで牢屋に連れていかれました。
鳥はもう飛んでいません。
その年の冬はとても長かったと聞きます。