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第8話「チームの土台」

A組が選手主導で10mダッシュを始めている。

やらされているわけじゃない。自分たちでやっている。

外から見ていても雰囲気が全然違う。

ひょっとしたらうちの選手はすごいのかもしれない。

そんな気持ちでいっぱいになった。


「じゃあ、そろそろ休憩にしよう」

俺がそう声をかけると、A・B組ともに練習を中断した。


サブ組が休憩に入り、少し離れたレギュラー組の様子を見てみた。


「やはり能力はレギュラー組のほうが高いな。」

素直にそう思う。だからこそ色々もったいない。


「まぁ、サブ組との戦い方で何かをつかんでくれれば、今は十分だ。」

気持ちを切り替える。


10分の休憩から選手が戻ってくる。


A組にまずは感想を聞く。

「どうだ、ダッシュの感覚はつかめたか」

代表して柏木に聞いてみた。


「すぐには難しいですけど、きっかけみたいなのはみんな感じたと思います。

あとは各々自主練していきたいと思います」

手ごたえを感じた顔をして答えてきた。


「わかった。

今後も引き続き継続してやっていくが、今日は次の練習にうつりたいと思う。」


「はい!」

A・B組ともに返事が返ってきた。


「じゃあ、次はパスからのターンを練習しよう」

練習内容を説明し始める。


「パス出しが1名、ボール受け1名、受けの人間は首振りを行いDFの状況を確認、

空いているサイドのほうにターンをして前を向いてくれ。」


「ポイントは首を振って状況を確認してターンしてくれ。

最初はパスは弱くていい。

じゃあ、始めてくれ」


選手たちが練習を始める。

デジャブだが決して上手くはない。

ただ、熱量が伝わってくる。

この練習でも何かをつかみたいという雰囲気が伝わってくる。


実は俺もこの練習で伝えたいことがある。


15分が立ち、そろそろいいだろう。


「じゃあ、集合」

選手が集まってくる。


「今回は、前を向くためにどうするのかを感じて欲しかった。

そのためには、首振りが必要で前を向くのにはどうやってボールを止めるのかが重要になる。」


宮本が発言してくる。

「監督、なんとなくどこにボールを止めたらやりやすいか、

わかったような気がします。

さっきのパス連でも今回のシチュエーションを想定してトラップ練習してみます。」


さすが理解が早い。

俺が伝えたい50%は伝わったようだ。


「じゃあ、次は後ろのDFはFWにプレッシャーに行く前に、

パス出しにどちら側から寄せるか手で合図をしてくれ。

パス出しはそれを見て、受け手にどんなパスを出したらよいか考えてパスを出そう。」


「はい!」

早速練習が始まる。


ここで俺が伝えたいもう50%の解答は、誰が答えてくれるだろうか


やはりアイツだった。


「左側から来るか。じゃあ左足にパスを出そう。

次は右側か、そしたらさっきとは逆だ。」

まるでそう考えているように正確にパスを出している。


プレーしているのは、佐藤だ。

持ち前の技術力に頭を使ったプレーでひと際質が高い。


俺が言うまで技術力を間違った方向で認識していたのに、

もう考えたプレーに自分の技術を生かし始めている。


「さすがだ」

おもわず声が漏れてしまった。


15分がたち、練習を止めてフィードバックを行う。


「今回の練習で伝えたかったことは、佐藤がプレーで答えてくれた。

佐藤、見本を見せてくれないか」


佐藤は手ごたえを感じているのか躊躇なく前へ出てくる。

そして、先ほど同様に質の高いプレーを行った。


「みんな、この練習で伝えたかったことは何かわかるか?」


一同考えている。


宮本がまた答えた。

「一秒でも早くパスを受け手に渡してターンをしやすくすることですか?」


あながち間違えではない。

ただ、ギリギリの及第点って感じだな。


「佐藤、どう思う?」


「細かいことを言えば、DFが寄ってきた方向と遠い足にパスを出すことを意識しましたし、

宮本が言う通りパスのスピードも意識しました。

ただ、受け手が困らないようにということではなくて、

後ろのDFがどういったアプローチで来ているのかをメッセージとして伝えようと心がけました。

左足に出したら右側からDFが来ているとわかってもらえるように。」


満点の解答だった。


「正解だ。

この練習では、パスに思いをこめて欲しかった。

そのパスにどんな意味があるのかを考えてだして欲しいと俺は考えている。」


「これからパス練をするときは、トラップの際はどんなシチュエーションなのかを

意識して止め方を変えること。

パスを出す際は、どんなメッセージをこめるのか。

これからはこの2点を意識してほしい。

いいか?」


「はい!」

しっかりと伝わったようだ。


この意識を持つことは俺のチーム作りではかなり重要になる。

これができないと選択肢が増えないからだ。


チーム作りの土台、一歩前進だ。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!

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