第59話「つかの間のオフ」
昨日に北川学園との試合を終え、月曜日の今日は完全オフ。
もちろん授業はある為、あくまで部活動がであるが。
監督の鳥海も今日の授業を終えて、監督室で昨日の試合の振り返りと今後の対策を考えていた。
「予選に関して、実力で負けているチームはなかったから
本選もまずは自分たちのサッカーをすれば大丈夫だな。」
本当にこのチームは選手の質が高くなっている。
だいぶ熱中していたのかそろそろ外が暗くなっていく。
帰宅の準備を始めるとドアをノックする音が聞こえる。
「失礼します」
入ってきたのはマネージャーの長峰だ。
「こんな時間に何の用だ」
素朴な疑問だ。
「暇だったので顔出しちゃいました」
笑顔で悪びれもなく入ってくる。
「少ししたら帰れよ」
なぜかお茶を出す鳥海だった。
「監督に質問したかったんですけど、指導者ライセンスって持ってるんですか?」
「突然だな。今は持ってないぞ。
C級ライセンスまでは持っていたこともあったが、失効してしまったよ」
「なぜ失効しちゃったんですか?」
さらなる質問。
「所持している必要性を感じなかったんだよ。
実際にライセンスがなくてもこうやって指導できているからな。」
高校の部活動で指導者ライセンスが必要ってのもおかしな話だが。
「そうなんですね。
私の親はA級まで持ってるので皆が上を目指しているわけではないんですね。」
さすが名将の娘、普通が普通じゃない。
「もちろんプロを指導する意欲があれば上を目指すべきだが、
俺自身は現状のライセンス制度に懐疑的なんでね」
「どんなところですか?」
「まずライセンスの意義は指導の一貫性だと思っている。」
「確かにそうですね。」
うんうんと頷く長峰。
「ということは、小・中学生に指導する指導者こそ
全員ライセンスを所持しなければならないと考えている。
プレゴールデン・ゴールデンエイジなど科学的に必要なコーディネーションを理解することが大事で、必要なコーチングこそ均一にしなければならない。」
「それにも関わらず、そういった年代はボランティアコーチの間違った指導が横行し、
プロに近づくほどライセンスが必要って矛盾しているだろ。」
「確かに・・・」
長峰もそう感じた。
「まぁ、現場の人間は皆そう感じていると思うけどね。」
「でも鳥海監督なら変えられるんじゃないんですか?」
根拠はないけど長峰の見る目にはそう映る。
「う~ん、まずは南東京高校で全国制覇したら俺の発言に影響力がつくかもな」
その為に頑張っているわけではないが・・・
「じゃあ、大丈夫ですね。
私たちは全国制覇目指していますから」
長峰さんは出来ないことを言うタイプではない。
「そっか。
じゃあ、全国制覇できたなら考えてみようかな。
日本サッカー界の変革へのチャレンジを」
「ぜひお願いします!!」
なんかのせられた放課後のひと時だった。
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